前話の字数がかさんだのでここでバランスを。
今日は天気も良く、普段よりも気温が高いので寒がりの俺にとっては非常に嬉しい。コートは着ているがマフラーや手袋は必要ない程度だ。
学校前のバス停には早めに部活動が終わった他の生徒たちの姿があり、単語帳を開く者、携帯をいじる者、友達と談笑する者、妹からのリアルな意見に号泣する者など、それぞれの時間の過ごし方でバスを待っている。
「おい二宮、そんな落ち込むなよ」
「そ、そうだよ。周りに生徒もいるからもう泣かないで。ね?」
「うぅ……生きる希望が……うぅ……」
下を向く二宮。
彼の心は深く傷ついてしまったようだ。
こうなったら仕方ない。あの手を使うしかないな……。
更科に耳打ちする。
「え? これで元気出るの?」
「間違いない。俺を信じろ」
「で、でも、ちょっと恥ずかしいっていうか……」
更科は体をもじもじさせる。
「二宮の元気を取り戻すのはこれしかないんだ!」
「そ、そうなの!?……じゃ、じゃあやってみるね」
更科は二宮の肩を叩いて、
「あ、あのね…………やっぱりちょっと待って、心の準備が……」
もふもふとした白のロングコートに身を包み、フードを頭まですっぽりとかぶった碧眼の女子高生は、袖で口元を隠して恥じらっている。
その様子に周りのバスを待っている生徒も視線を奪われている。
『あの子、めっちゃ可愛くね!?』
『顔も完璧で、スタイルも完璧、おまけに声まで可愛いとか最強だな』
『更科さんだろ? 2年の間じゃ有名だぜ? お前と同じ1年だ』
俺たちはバス停の一番前で待っているので更科は気付いていないかもしれないが、おそらく後ろにいる男子全員が興味なさげに涼しい顔してこちらをガン見しているだろう。
確かに、更科ってナチュラルに可愛い仕草とかグッとくる表情をするタイプなんだよな。なんかこう、作り込んでないっていう感じ。
これなら男受けは最強だろう。性格も良さげなので女子から一方的に嫌われてるとかもなさそう。スクールカーストの頂点に位置するタイプだな。
「なんだ更科、オレはもう──」
「落ち込まないで……リクおにーちゃん!」
「──も、ももう一回! 今なんて言った!? なあ! お金払うからもう一回! 録音させてくれよ!」
おそらくリアルでおにーちゃんって呼ばれたの初めてだったんだろうなあ……。
わざわざ、お兄ちゃんじゃなくておにーちゃんと呼ぶようにと更科に言った甲斐もあってか、もう目の色が違う。
「すぐに元気になったね……」
「こいつはまじで単純だから」
「一回だけ、な! 一回だけでいいから! 頼む!」
財布から札を出して女の子に懇願する二宮。
傍から見ればアヤシイ交際の申し出ているヤバい奴しか見えない。こんなの誰かに見られたら──
『いいなあ……』
『羨ましすぎる』
『今から親に妹が欲しいってねだろうかな』
『それは止めとけ』
ああ、周りも全員ヤバい奴だからしっかりカモフラできてるわ。
やっぱ頭いい奴って大概頭おかしいんだな。
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