第34話 勇者パーティーの功績
「それではより具体的な話に移ろうかの」
現在はヴィナトとニーナの使用している部屋にて話をする事になった。
「まずは王国の現状じゃの。軍事的な動きなどじゃの」
「……王国は勇者たちに見切りをつけ始めています。アルトさんは部屋に籠りきり、かと思えばただ狂ったかのうに剣を奮っているという有様。勇者というには希望を見出せない状況です」
まあ、あれだけ無能っぷりを発揮してしまってはな。
無能と蔑み、邪魔だからと追い出した回復術師にいたぶられて死にかけてれば、自暴自棄にもなるだろう。
「そこで王国は兵力を集めています。各地の村や街の男たちを集めて、恐らくは王国のみの力で幹部の城を落とそうとしているのでないかと」
幹部の城を落として魔界への道が出来れば魔王討伐のチャンスができる。
「だが、それはないんじゃないか?それができて、そこまでの見通しができたならそもそも勇者なんて要らないだろ?」
「勇者の誕生前は村の人口や兵士の死亡率が高く、非常に不安定な国情でした。しかし、私たち勇者パーティーの功績により、救われた命がたくさんあるのです。今を生きる人々、そして、未来を生きる子供たち。そこで勇者の敗戦……」
確かに考えてみれば商人の街、アルニーテを襲ったモンスターパレードを勇者パーティーのみでの撃破は、国やアルニーテの被害はゼロだったわけだ。
その他の功績も考えると、勇者パーティーが与えたのは束の間の平和と国力の増加だったのだろう。
「しかしそうすれば王国に住まう多くの者が亡き者になってしまうのは明らか。それに、私は聞いてしまったのです……」
「なにを?」
俯いていて自分の拳を痛いほど握りしめるアスミナ。
「勇者強制強化計画。生贄を捧げ、勇者に闇の力を与える儀式です」
「血炎術式かの?」
「はい……」
「人類の希望の勇者に闇の力、ね」
「王国の王がそのような犠牲をなんの躊躇いもなくする。それだけ、今のグラルバニア王国は堕ちているのです……」
なにもできない王女の自分、それがもどかしいのだろう。
美しいね。民を思う気持ち。
とても美しいよ。
まあ、僕の村や家族は殺されたからどうでもいいけどね。むしろ同じようにみんなみんな殺してもいいと思っている。
「私からの提案、というかお願いは王国の王族とそれに連なる貴族を抹殺する事です。そして、魔族も人間も共に共存して生きていける国。それを実現したいのです」
「無理だな。腐った上を消したところで、また同じような奴らがどこからともなく生えてくる。魔族だって、人間とこれからよろしく、なんて握手を愉快にできるわけがない」
現に僕はリーヤに襲いかかられたわけだ。
たとえ上通しが和解したとしても、和解できたとしてもだ、火種はいつまでも消えない。
「うむ……上を殺し、民を生かす。悪くない提案ではある。共存がどこまで現実性を帯びるかはともかくな。じゃが、1つ、そしてもっとも大きな問題があるのじゃ……」
ヴィナトはそう言って話を続けた。
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