第27話 魔王軍の幹部たち

「幹部の者たち、そしてそれに準ずる皆の者、よく集まってくれた」


それぞれの幹部たちが一同に集まった今回の幹部会議。


相応の覇気を出している者もいる。

1人目の幹部、血爪のリザードマン、リーリル。そしてリーヤ。

2人目の幹部、不屈のアンデッド、キャンベル・スクワート。

3人目の幹部、黒影の魔人、レナード。


そしてヴィナト。


「ヴィナト、クロムの紹介をしてやってくれ」

「皆の者、ごきげんよう。妾の眷属を紹介しよう。クロム」


ヴィナトの合図で僕は席を立った。

睨みつけるように見られている。

半分は人間、嗅覚の鋭い奴はとくに怪訝な顔をしている。

リーヤはどこか気まずそうだった。


「妾の眷属、クロムじゃ」

「ハーフ吸血鬼だ。元勇者パーティーの回復術師だが、よろしく」


何人かは驚いた顔をしている。

リーヤと同じように勇者パーティーに恨みを持っている奴は他にも居るだろう。


「クロムはかなりの実力者だ。幹部の実力と大差ない。昨日もリーヤが食ってかかって半殺しにされている。皆の気持ちも分からなくはないが、死にたくなれけば喧嘩を売らないようにして貰いたい」


サタンのフォローで少しは空気がマシになった。

じゃないとこの場で全員殺さないといけないところだった。


「クロム君は我がレナード城での勇者パーティーとの戦闘で勇者たちを半殺しにしている。骨を折り、内臓を破壊し、復讐を楽しんでいた程だ。心強い味方だ」


魔人レナードもフォロー、というか貶してないか?復讐が楽しいわけないだろ。


「あんなにイカれた人間を見たのは初めてだった。聖騎士の髪を引きずって勇者を回復させようとするところは恐怖を感じたほどだ」

「よしレナード、後で来い。とりあえず手足折ってから二度とその口を聞けないように歯を抜いてから饒舌な舌を引きちぎってやる」


まあまあ、と宥めるヴィナトとサタン。


「あと、別に僕は君たちの味方という訳では無い。人間は辞めたし、人も殺すが、復讐する為でしかない。お前らが弱くて死にそうになってようが助けたりはしない。勘違いはしないでもらいたい」


僕はあくまで復讐できるだけの力を得るためにヴィナトと契約しただけ。


魔王軍の愉快な仲間たちの一員なんて真っ平ごめんだ。


「ちなみに言っておくが、物理戦闘では魔王である儂と同等、あるいはそれ以上だ。怒らせるなよ、面倒じゃ」


さてと、と話を進めるサタン。

まあ確かに、下っ端通しの喧嘩くらいなら城が壊れる事はないだろうが、幹部同士となると困るだろう。

魔王って言っても大変なんだろうな。

可哀想に。


それからは各自の報告やレナード城の修復や部下の補充などについて話し合いが進んだ。


「それでは幹部諸君、引き続き魔界結晶の死守を頼む。以上、解散」


一同は部屋を出た。

ちらっとリーヤがこちらを見たが、そんなにまだ僕と殺りたいのだろうか?

非常に鬱陶しい。やっぱり昨日殺しておけばよかったか。


「ヴィナト、魔界結晶ってなんだ?」


最後に言っていた魔界結晶。あれが不意に気になった。


「魔界結晶は人間界と魔界を繋ぐ結晶石じゃ。妾たち幹部はこの魔界結晶を守るためにおる」

「そうなのか」

「知らんかったのか?」

「僕ら勇者パーティーは、魔王幹部を全員倒すと魔界にいる魔王を倒しに行くことができる、としか聞いていない」

「女神エリアも割といい性格をしておるのぅ」


そう考えると、勇者側も情報はほとんどないと言っていい。

本当に女神エリアは勇者たちに魔王を殺させたいのか疑いたい程だ。


「ヴィナト、そして眷属のクロム、先ほどはどうも。魔王軍幹部の1人、キャンベル・スクワートです。少し、お話したい事がございまして」


廊下を歩いていて声を掛けてきたのは不屈のアンデッドだった。


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