第25話 クロムの召喚獣
徐々に光が収束すると、僕の肩に居たのはハリネズミだった。
「おおぉ!可愛いではないか!ハリネズミではないか。うむ。たしかにツンツンなところなどクロムによく似ておる」
「お目目がクリクリで可愛いですっ!」
「名はどうするのじゃ?!」
「可愛いお名前がいいです絶対!」
「名前か……」
考えていなかった。
ハリネズミを手に乗せてじっと考える。
名前を付けるセンスはあまり自信がない。
子供がいるわけでもないし、あまり名付けをした事がない。
「ピィ」
ハリネズミが小さく鳴いた。
「ちーさん」
「ピィ」
「よし、お前の名前はちーさんだ」
「ピィピィッ」
なんとなくだが、嬉しそうだ。
「ちーちゃんでもよかったのでは?」
「なぜちーさんか聞いてもよいか?」
なぜ、と言われても困る。
「直感だ。後は尊敬の念を込めて」
小さな体にこんなにも己を護る針を纏っているのだ。
ここまでいくとかっこいい。
「ふふっ。そうか。それはよかったのぅ、ちーさんや」
ヴィナトが微笑ましそうに僕を見ている。
オカンじゃないんだから、その目はやめてほしい。
「召喚獣は感覚を共有しておる。しばらくは色々と遊んでやるとよい。召喚獣の能力は自ずとわかるじゃろう」
「そうか。よろしくな、ちーさん」
「ピィ」
せっかくなので肩に乗せた。
なんというフィット感。
☆☆☆
ちーさんとのご対面を終えてダンジョン、もといヴィナトの部屋を出て僕とヴィナトは会議室に向かっていた。
「幹部会議なんてなんで開くんだ?」
今回は魔王サタンが幹部を集めて会議を開くというものだった。
幹部はわかるが、なぜ僕まで呼ばれているのかわからない。
「まあ、1つは魔人レナードの城の件じゃの。あとはクロムを皆に紹介せねばならん」
「紹介する必要あるのか?」
ただの眷属の1人、というだけだろうに。
「クロムは元勇者パーティーの人間じゃし、リーヤを半殺しにもしておる。きちんと仲間であると説明せねばならんからのぅ。場合によっては第二第三のリーヤが沸いてしまうのじゃ」
おお。それは大変だ。
面倒な絡みが増えるとか勘弁してくれ。
いちいち殺してたらキリがない。
勇者たちの動向も知りたいし、今後の話もおちおちできない。
「あっ」
右の通路から赤い髪の女が僕を見て目を逸らした。
目元や首元に鱗がある。
スタイルのいい体つきに鋭い目付き。
後ろには尻尾が生えており、腰に剣を携えていた。
誰だコイツ?
いかにも僕を知っているような反応だが、僕には見覚えがない。
「ク、クロム殿、その、昨日はその、かたじけない」
なぜか知らない女に謝られられ、頬を赤くする謎の女。
「誰だお前」
昨日って言っても、リザードマンのリーヤを半殺しにした記憶しかない。
「クロムよ、こやつはリーヤじゃ」
「そうなのか?ちゃんと治したはずだが」
「リザードマンの進化した姿は基本このように人に近いのじゃ。クロムが戦った時は竜化した姿じゃったからのぅ」
「ていうかお前、女だったのか」
「やっぱり死ねぇクロム殿ぉ!」
「まあまあ良いではないかぁ」
ヴィナトが止めに入る。
よかったなリザードマン、命拾いしたぞ。
「……なんでこんな男を……きに……」
真っ赤な顔でなんかブツブツ言っているが、呪文だろうか?まだやるか?
「リ、リーヤよ、お主も幹部会議に呼ばれておったのじゃろ?体調はまだ良くはないだろうが、とりあえず向かうぞ」
尻尾をフリフリしているリーヤをヴィナトが無理矢理連れて僕は会議室に向かった。
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