夢枕に
ごつごつとした地面に身体を預け、大きく背伸びする。
空には満天の星……じゃないが、星鉱が外の星の灯りを受けているからか、とにかくきらめくような明るさだ。
「おとうたん、今日ここでねるの?」と、寝冷え防止の毛布にくるまったチビが怪訝そうに聞いてきた。
「一緒に寝るって言ったのはお前だろ?」
そう、ここは例の祠の奥、純粋な星鉱が取れる場所だ。
とはいえまだ俺が手にすることができた分はほんの少し。ジジイが言うには矢尻程度の量しかないんだとか。
どうも俺自身の心の目で見ないと採ることすらままならねえって話だが……気ばかり焦る一方だ。
オマケにジールと一緒に温泉に入ったのはいいが……うかつだった。
以前スーレイで身体を無理やりキレイにされた時だったか、帰宅した直後に風邪引いたのを忘れてたんだ。
案の定、翌日は鼻水とくしゃみが止まらなくなって、汚ねえからって俺は離れの小屋にぶち込まれた。イーグのやつが一日寝てりゃ治るだろって。
チビとも離されてひとり、俺はホコリ臭い小屋の中で熱で火照った身体を横たえていた。
そんな中だった……いわゆる夢枕ってやつだろうか。死んだ人が枕元にオバケとなって出てくる、俺もそれに出会ったんだ。
そうだ。親方に。
酒樽みたいな太った身体とはち切れんばかりの腕。まだまだ元気だった頃の姿で俺の前に現れたんだ。
顔を合わすなりいきなり「なにやってんだ、こんなとこで」ってな。
「悪い親方……風邪ひいた」
「くだらねえこと言うンじゃねえボケが。俺もそうだがバカは風邪なんて引かねえんだぞ」
本当なら鉄塊のようなゲンコツが降ってくるはず……なんだが、親方はぶっ倒れた俺の目の前であぐらかいたまま、特に何をするわけでもなかった。
俺はオバケなんか全然信じないタチだったし。けどなんて言ったらいいのか……前置きもなく突然現れてくれた親方に対して驚くわけでもなかった、ただ今までのことを話したかった。
親方が死んでからいろいろ大変な毎日のことを。
ーかわいいガキ拾ってきたんだな。お前と同じ傭兵にでも育てるのか?
ーずいぶんと仲間が増えたもんだな。シャウズのトカゲ族といやあ伝説の戦士だぞ。お前も好かれたなあ。
ートガリが大臣になったのか。人は見かけによらねえモンだな。
だが肝心なジャノやガンデ二世のことに関してはなにも答えちゃくれなかった……まあそうかも知れないな。親方にとってはある意味隠し子みたいな存在だったんだし。
「で、お前はこれからどうすンだ?」
「……え?」
「え? じゃねえよボケナス。子供は出来ちまったし共に仕事任せられる仲間も増えた。そっからどうするンだと聞いてるんだ」
「そこ……から?」
「じっくり急いで考えてみろ。宿題だ」
……………………
………………
…………
目が覚めた。いや、なんだったんださっきのは。俺ずっと起きてたんじゃなかったっけか? あれ、親方がいたのって、夢?
寝汗びっしょり状態な身体を起こすと、もう熱もふわふわしただるい感覚も全部どこかへ消えちまっていた。
だが唯一覚えていたのは、親方が俺に言ってくれたこと。
「これからどうするんだ」って。
「そうだな、新しく武器をこしらえてもらって、そっから……」
……あ!!!
そして俺は、またこの祠へと戻ってきたってわけだ。
チビも付いてきちまったのはちょっと誤算だったかも。けどこいつは基本的に俺が隣にいないとすぐ泣きそうになるからな……しょうがねえ。
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