エピローグ6
一週間かけて、俺たちは無事リオネングに戻ってきた。
ズパさんが言ってたっけか。大地に染みついたダジュレイの穢れた血の瘴気を完全に取り除くには、だいたい半月はかかるかもって。
それまでは俺たちが確保してきた食糧でどうにかなるとはいえ、やっぱり不安は隠せなかった。
王のもとへとすぐさま報告に向かったトガリたちを差し置いて、俺が向かったのは……そう、まずは親方の墓。
もしかして初めてなんじゃないか? 親方の墓参りで雨が降らないなんて。
たしか死んだ日もそうだった気がする。しかも大雨とかじゃなくて、しとしと降りとか霧雨とか。なんか毛がじめっとするいやな雨。
だから……と言ってはなんだが、墓石に引っ付いた落ち葉とか掃除するのがとにかく面倒くさかった。
だから、だんだんと墓参りするのも面倒になってきちまって、夢の中でどれほど親方に怒鳴られたことか。
「ここに、俺のおっ父が眠ってるの?」俺の隣には……そう。親方の本当の娘であるジャノが、手にした花を墓に備えていた。
なるほど、こいつ人の死とかあまり知らなそうだから、墓の意味も分からなかったのかもな。
「なんて書かれてるんだこれ? 読んでくれる?」
ああ、そうだな……これからはこいつと一緒に勉強もしなきゃな。
まるでちょっと前の俺みたいだ。
「偉大なる傭兵ギルドの長 ここに眠るって書いてあるんだ」
「よーへーぎるど?」やっぱりな。全然知らないのはしょうがない。
「親方……いや、お前の親父さんはな、ここでたくさん腕の立つ戦士を集めて、この国の軍からの依頼を受けて……えっと」
ダメだ、俺もどうやって説明したら分からねえし!
「つまり、おっ父はここじゃすごくえらい人だったってこと?」
まあそういう事だな。と適当に濁しておいた。
「ンでもってラッシュの兄貴は、おっ父にいっぱいしごかれてたって事?」
俺はそうだとうなづいた。いや、それしか思い出がなかったしな。
さて、どうする……これから?
この世間知らずのバカ娘を預かったにしても、あいにく俺には傭兵稼業しかやることがない。
こいつを同じ道をたどらせるのか? フィンやパチャですら人を殺したことなんかなかったっていうのに。
正直これからはまた戦いの仕事が増えてくると思う。マシャンヴァルの動向が不明確な以上、準備はしておかないとならないしな。
俺は……こいつらに血を教えなければならないのか。
「ねえラッシュの兄貴……おっ父のこと、いっぱい教えてくれないかな?」
「いいけど……修業でしごかれた思い出しかねえぞ?」
「構わないよ。だって俺、おっ父がどんな人だったのかも全然知らなかったんだし」
そういやそうだったな、こいつにとって親方の思い出はゼロに等しいんだし。
「ンじゃ、どっから話すりゃいいかな」
「そりゃもちろん最初っからじゃね?」
「そうだな……親方はな、口より先にいつもゲンコツが出て……」
ゆっくり考えるとするか。な?
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