腐敗

話せば寝てしまうくらい長くなる。要はこういうことだ。

この前の隠密作戦……‬あれで部隊をほぼ壊滅させたのは、どうやら俺が裏でゲイルと組んでいたかららしい。

こっそり裏で俺はオコニド、いやもうマシャンヴァルと結託してたってことだ。

「ザルもいいとこだなぁオイ」騎士どもが帰った後、陰で一部始終聞いてたラザトがあきれ顔で愚痴っていた。もちろん酒を飲みながらだ。

「分かるかおいバカ犬!? ゲイルとかいう野郎の接触が念頭にあるとは言え、逆に返り討ちにあったことで責任を全部お前に押し付けるっていうのは無理がありすぎるぜ。それにこの手の作戦は雇われなんて使わねえしな」

うーん確かにラザトの言う通りだ。しかも追って処分を言い渡すとはいえ、結果ギルド権利剥奪だけって言うのも軽いような……‬

いやこれ、めちゃくちゃ重いじゃねえか!

「つーか俺、これからどうすりゃいいんだ……‬」なんか剥奪っていきなり言われてもピンとこない。

だってそうじゃねえか、オコニドとの戦争が一応終わってからと言うものの、以降もらえた仕事は掃除と今回の作戦のみだった。しかも今回のやつは結果報酬ゼロだって言い切りやがったし。

親方からもらった宝石の蓄えがあるとはいえ、これは大っぴらには出来ないカネだしな。もちろんこれは俺とトガリだけしか知らない秘密だ。

今の稼ぎの中心は、近所や隣町から来る畑仕事や家の修繕くらいなもんだし。だからギルド権利失くしたとは言っても全然ピンとこないってワケなんだ。

「お前の馬糞しか詰まってねえ頭じゃ理解できないかもしれないがな。こりゃあ……‬裏になんかあるぞ」

そう言われて思い出した、ジールもそんなこと言ってたっけ。

「さっき言ってたなアスティって。そいつは今どこにいる?」

「あ、えっと……‬昨日、川に浮いてたんだ」「はあ⁉︎」ラザトが驚きの目で俺に言い放った。

とりあえず俺はこれまでの経緯を簡単に言っておいた。っていうか言うのを忘れてた。

「バカも極まってるなあオイ……‬そういうのをハメられたっていうんだ」

それとアスティ。ラザトはその名前に心当たりがあるみたいだ。どうやら亡き友人の息子の名前もそれだったってことで。

「俺が前にいた時はもっといいところだったのによ……‬くそっ、いつの間にか中までドロドロに腐ってやがったとはな」

なにからなにまでラザトの言ってることが分からねえ……‬なんか取り残されちまったみたいだ。

そんなこんなで頭の中がもう混乱気味の俺に対し、ラザトは一言告げた。

「暗くなったら、ちょっと俺に付き合え」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る