第13話 喜ぶ七虹さん

「おはようございます! カイさん」


 翌朝、家をでると七虹さんがもう既に掃除をしていた。

 今日は、七虹さんがいる可能性も考えて、ちゃんと髪をセットして服もすこし気を遣ったつもりだ。


 七虹さんは今日は俺の家の手すりまで磨いていた。

 本当にきれい好きだ。


「カイさん。昨日の……その、ありがとうございました。私、甘い物好きだから嬉しいです」


 七虹さんは飼い主を見つけて喜んでしっぽをふる犬のように俺のところにかけてきた。

 近い。

 すごくいい匂いがする。

 だけれど、今日の七虹さんの服装はインナーがハイネックのアンサンブルニットなので、残念ながらブラジャーの肩紐すらチラリとも見えない。

 安心な反面、ちょっと残念だ。


 ただ、おっぱいは昨日のワンピースの時より大きく見える。

 ニットがいい感じのびて、好きな絵師さんが描く巨乳のお姉さんの胸のあたりそのものな皺ができている。

 すごく、えっちだ。


「いえ、お口にあえばいいんですが。七虹さんの美味しい料理にはかないません」


 俺は格好をつけて言うけれど、七虹さんのおっぱいから目を離すことができなかった。


「でも、すごく嬉しかったです」


 実は昨日、タッパーを返すとき、俺はお返しとしてちょっとしたお菓子をタッパーに入れておいた。

 手作りといっても材料費もかかるし、もらうだけじゃ申し訳ないと思ったから、スーパーに寄ったときに女性が喜びそうな量はすごく少ないけれど、すごくお洒落そうなお菓子を買ったのだった。タッパーに入れる都合、小さい方が収まりがよい。


 どうしてこんな田舎のスーパーにこんなにお洒落なものが売っているのかは分からなかったけれど、仕入担当の気まぐれか、案外、田舎のほうがこういう商品が売れるのかもしれない。そりゃあ、米とか野菜を自分で育てたりもらったりすれば、そんなに食費にお金がかからないし、その分を嗜好品にかけることができるのかもしれない。


 ただ、スーパーで買っただけのお菓子にこんなに喜んでもらえるのは嬉しい。


 クリスマスの頃とかで、女性にハートのネックレスをプレゼントしたら、子供っぽくてつけられないとディスられたとかいう記事を呼んだけれど、あんなのはきっとフィクションだろう。


 だって、目の前にいる七虹さんは女神のように優しいし、お菓子一つでこんなに喜んでくれる。

 いくら高級といっても、ネックレスと比べたら、何百分の一の値段だ。

 こんなささやかなもので喜んでくれる女性とつきあうことができたら、きっと毎日が幸せにつつまれるのだろうな。

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