第21話:無能力と姫

「奴のことどう思った?」



「奴って?」



僕と師匠は運営議会を出て、帰り道でとある話になった。



「劉禅師の事だよ、いい奴だと思ったか?」



「いい人、というかなんか不思議な人だなって、色んな意味で底が知れないというか....」



特に戦闘力とか....




「あいつな、前言ってた異能力者至上主義のメンバーだぞ、あいつと言うよりはあいつの家がだがな、また会うことになるかもしれん」



「えぇ?!」



異能力者至上主義の人たちってもっとなんかこう、僕みたいな人を見下してるのかと思った。




「これも前言ったが奴らは実力主義でもある、だから表立って批判したり、お前を邪険にしたりはしない、だからさっきも自分の部下を使ってお前の実力をは計っていたんだよ」



「なるほど、でもなんでまた会うんですか」




またさっきみたいな腕試しさせられ....




「奴らの中にも過激派ってのが居てな、そいつらは基本的にフェスタ的にもウィザード育成期間も、あまり表に出したくない存在だ」



「こんなに世界中が熱狂してるのに、そんなのが知られてしまったら異能力者自体が危険視されてしまいますもんね、そうしたらフェスタもできなくなるってことですね....」



だから僕の存在を認めたり、無能力者にも配慮しているのか




「奴はその一員かもしれないって事だけ頭に入れておけ、可能性は低いが、ゼロじゃない」



「あんな真面目そうな人が....」




これからフェスタやその関係者にあたる人との交流もあるだろうし、気をつけよう。




「まぁ、お前はあんまり気にすんな!今は真っ直ぐ前だけむいて刀振り回しとけ!」



「振り回すって....」




言い方は少しアレかもしれないけど、やっぱり師匠は師匠だ、頼りになる。




「とりあえず、対抗戦、勝てよ?」



「もちろんですっ!」



澪音さんとのこともあるし、今は目の前の対抗戦に集中しよう




「ありがとうございます、師匠」



「あぁ、つかさ。」




それからの夏季休暇はもちろん師匠との修行の毎日、たまに蓮二や夜咲さんたちも加わって辛いだけではなかった。




「おはよ、蓮二!」



そして二学期になり、再び学園での毎日が始まろうとしていた。




「よっ!司!」



「そういえば理事長に始業式の後は気をつけろって言われたんだけど何か知ってる?」



気をつけろってなんのことだろう。




「なんだ?それ、何か心当たりは?」



「それが何もないんだ」



何かした覚えもないのに、一体なんなんだ




「ていうか、なんか聞こえねーか?」




「ん?あっ、本当だ何の音?」



音、というか地鳴り?のような....




「来たみたいね」



「夜咲さん、何か知ってるの?」




ていうかこの音だんだん近づいてるような....




「早乙女くーんっつ!!!!」



誰?!ていうかなんだあの人数?!




「貴方は選抜戦で見事勝ち抜いたいわゆる学園の人気者になってしまったのよ」



「い、いや、それなら夜咲さんだって!」




あんな人数、とても逃げきれない....




「貴方は無能力者、おまけにあの絢辻会長を倒してしまったのだもの、助かるといいわね」




「他人事?!」




とにかく逃げないと、好意を持ってくれるのは嬉しいけどあの人数は流石に....




「蓮二後は頼んだ!」




「待ってー!!早乙女くーんっ!!!」




待ちませんっ!!!




「どうしよう!どこに逃げれば!」




そうだ、屋上!あそこなら!




「ガチャッ!」



ここなら....誰も来ない。




「あら、早乙女君、久しぶり」




「絢辻会長?どうしてここに」



絢辻会長が立ち入り禁止の屋上にいるだなんて




「なぜか女子生徒に追いかけられちゃってさ、早乙女君との一戦で負けた私もまた人気になっちゃったみたい」



「それはもう元々人気なんじゃ....」



僕が入学する前まではずっと勝ってたみたいだし。




「どうだろー?早乙女君のせいかな?」



「え?僕のせいですか?!」



僕が勝ったから?いやでも仕方ないし....




「責任とってよ、司くん?」



「えっ、ちょっちょっと、会長?!急にどうしたんですか?そ、それに少し近いです....」




こんな近くで喋られたら....




「あっははっ、もう早乙女君は可愛いな?この勢いで良かったら司くんって呼んでいい?」




「もう冗談よしてくださいよ〜、呼び方なら好きにしてください、綾辻会長」




心臓が飛び出すかと思った....




「じゃー、司くんに良いこと教えてあげるっ!私が将来をあげても良いなって思う人の特徴」



「結婚ってことですか?」




絢辻会長は見た目もいいし、どんな人なんだろう。




「私より強い人....これは冗談じゃないよ?」




「そ、そうですか....」




そ、そんな表情でそんなこと言われたら。




「そういえば司くん私に勝ったよね?」




「は、はい....」



この空気....ダメだ....!




「か、会長!お話の途中ですが、し、失礼しますー!!また今度〜!!!」



「あー!逃げるなー!!」



そんなこと会長に言われてたら身が持ちませんっ!!



「早乙女くーんっ!!!」



あの子たちもまだ追ってくるのか?!




「もうやめてください!話なら1人づつ聞きますからー!追いかけないで〜!!」



「待ってー!早乙女くーんっ!!」



ダメだ、もう話を聞いてくれそうにない....このまま逃げ続けるしかないのかっ




「よっとっ!途中で逃げちゃダメでしょ?」



「か、会長....」



もう追いついてきたのか、さすが絢辻会長....




「あっ!会長も一緒よ!みんな追いかけて!」



「ごめんねー!みんな!司くんは私が貰っていきますっ!ばいばーいっ!!」



貰っていく?!




「か、会長!お姫様抱っこなんてやめて下さい!」



僕が男の子なのに....




「つかさ姫、もう離さないぞ〜」



今日の会長、会長らしくない、なんなんだこれ!

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