第15話:合宿

「なーつやーすみっ....のはずだったのに...」



選抜戦を終えた僕達は夏季合宿に来ていた、選抜戦のそれぞれのブロックで優勝した生徒はもちろん、成績の良かった生徒たちも含めた合宿だ。



「蓮二、しょうがないよ、それにこの合宿に呼ばれるってことは光栄なことなんだからさ」



「一夏の淡い思い出が....」



日程は一週間で、すごく厳しいらしい....



「よし、集まったな、今日からお前らの特別強化合宿コーチを任された七草だ、宜しく」



「師匠?!」



留守番してるはずじゃ....



「え〜っと、さゆりちゃん、理事長からは主に体力強化を任されているからお前ら死ぬなよ」



「せ、先生、異能が使える僕達に体力強化は別にいらないんじゃないですかー?」



バカッ、蓮二のやつ何を....



「じゃあ、お前は戦闘中に魔力を消費し異能が使えなくなったらどうするんだ?そんな基本も知らんガキが....お前はいいと言うまで奔ってろ!止まったら殺してやるからな....」



ほら....



「気を取り直してだが、まず君たちにはこの砂浜で組み手をしてもらう、ルールは簡単だとにかく相手を投げろ、よしやれ。」



久しぶりにこの緊張感だ、みんな大丈夫かな...



「早乙女君、私と組みなさい、あの授業の時の借りを返す時が来たようだわ」



「借りって....まぁいいよ、やろう」



そう言えばそんなこともあったっけ....



「ハァッ!」



この間とは違う、ちゃんと全身を使って組んでる、さすが夜咲さんだ。



「よっと!」



「えぇっ?!」



でもまだ少し隙が多すぎるかな



「また負けたわ....」



「あはは、また勝ったみたいだね」



このトレーニングの本質はただ単に異能を使えなくなった時のためのものではない、たとえ異能であっても身体を鍛えれば速度や威力は格段に上がる、それにこの砂浜で足場が悪いし、下半身を鍛えるにはもってつけかな



「おーい!早乙女くんっ!!」



「あっ、絢辻会長!」



そういえば選抜戦以来話してなかったっけ。



「一本付き合ってもらえる?」



「もちろんです!」



絢辻会長は異能を使わないとどれくらい強いんだろう、いい機会だ。



「ハッ!!」



「おっと、危ない」



夜咲さんよりも組むことに慣れてる、身体の使い方も上手いし油断できないな




「ハァッ!!」



「それじゃ返されますよ!絢辻会長!」



僕もこの技で何回も師匠に投げられたっけ....




「イッタタタ....やっぱ強いな〜早乙女くん」



「そんなことありませんよ、会長」



なんだろう、背中に鋭い刺すような視線を感じるのは....




「ヒィッ!」



「どうしたの?早乙女くん」



我妻さん、そりゃ来てるよな....



「い、いや、なんでもないですよ」



まだ師匠がいるから何もしてこないけど、夜になったら僕はどうなるんだ....




「よしっ、お前らもういいぞー、休憩だ」



とりあえず午前中はこれで終わりだと思うけど、みんな虫の息じゃないか....




「司、お前よく立ってられるな....」



「あ、うん、僕は慣れてるから」



蓮二はずっと走ってたみたいだしね




「よーし、休憩終わり、これから走るぞ〜、せっかく夏なんだから走らなきゃ損だろ」



「えー....」



そうなるよね....




「さぁ!いけ!お前ら!」



僕達はその後、走り続け、ひとまず強化合宿1日目が終了した。




「し、死ぬ...司、助けて....」



「蓮二、もう少しで旅館につくみたいだから」



みんなもう限界に来てる、やっぱりこれじゃ続かないんじゃ....



「着いたぞ〜!」



「おぉー!!」



すごい立派な旅館だ、みんなもグッタリしてたけど少し元気出たみたいだし



「ようこそ、黒城学園の皆さま、疲れてるでしょう、どうぞごゆっくりして下さいませ。」



綺麗な女将さんだ




「私はこの旅館の女将を務めさせていただいております、伊織いおりと申します。」



学園側から借りるってことはここは異能者系の施設なのか?従業員が異能力者とか。



「部屋は決まってる、各自自由にすごせ、それと明日の朝にとある発表があるから用意しとけ、飯と風呂を済ませたら早く寝るんだぞ〜」



発表?なんだろう。




「おい司!俺達部屋同じだぜ!」



「えっ、ほんと!」



僕達は部屋に行き、夕食を済ませた、部屋では蓮二の他に合宿に参加した3名の生徒が同室だった。



「はぁーっ、腹いっぱい!しかし夕飯も部屋で食べるだなんて意外と豪華だなー!」



「そうだね、料理も美味しかったし」




さすがフェスタ出場を目指す生徒を育てる学園って感じだ、それだけフェスタの需要がおおきいんだろうな。



「諸君!飯も済ませた!だがここはむさい男部屋だ!なら!やる事は1つだよな?」



「やる事?え?なに?」



枕投げとか?




「女湯覗くに決まってんだろ?!お前は山育ちだから知らないだろ〜がな?女の子の体っていうのはもうそれはそれは....」




「蓮二は見たことあるの?」



それにトラブルになりそうだし....



「うるせぇ!見た事なかろうがあろうが行くんだよ!じゃなきゃこんな地獄みたいな合宿やってられるか!俺らは先行くからな!」



「あぁ、うん」



暇になってしまった....




「もう男子ってなんであんなにうるさいのかしら、疲れてるんだから静かにしてほしいわ」



この声は?!



「寧々は別にいいけど〜?ていうかもしかして部屋、隣なんじゃない?」



やっぱり、夜咲さんと我妻さんたちだ....




「あり得ないわよ、間違いが起きたら学園はどう責任をとるの?まったく不潔ね」



「あれー?るなちゃんはどんな間違いを想像してるのかな?それに寧々は早乙女くんだったら別に....」



まずい、女湯の件はまず、一緒に行かなければいい、でもこれは間違えなく蓮二たちに言ったら、このふすまを開けて....



「寧々!何言ってるのまったく、それよりはやく浴衣に着替えなさいよ」



「めんどくさいよ〜、着替えさせて」



えっ....

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