苦労

勝利だギューちゃん

第1話

「行ってきます」


そう言って、家を出た。

といっても、誰もいない。


1人暮らした。


アパートではない。

実家。


両親は、海外へ転勤した。

少しの間だったが、このご時世なので、帰国が出来ないらしい。


「家の事は、よろしくメカドック」

親父が言うが・・・


今の若い子は知らない。


妹と弟がいるが、ふたりとも全寮制の高校にいる。

報告はよこさんが、「死んだ」という連絡がこないので、生きていると思う。


出来の悪い弟や妹を持つと、兄や姉の苦労は絶えない。

おかげで、若白髪が生えている。


まだ、今日で18歳の男子なのに・・・


内輪話はさておき・・・


「さてと、今日は何を食べよう」


両親が、いなくなってから、最初は外食をしていたが、それでは栄養が偏る。

なので、自炊をすることにした。


これが、意外と楽しい。

すっかり、上手くなった。


でも、旨くはない。

まあ、俺しか食べないからいいが・・・


漫画やゲームだと、幼馴染の女の子が世話をやいてくれるが、現実は甘くない。


適当に買いだめして帰る。

今日は、お鍋だ。

楽でいい。


「えーと、ここの肉300グラム」

「兄ちゃん、いつも大変だね」

すっかり、馴染みになった店主さんと、挨拶する。


「もう、慣れました」

「妹さんは元気かい?」

「多分生きています」

「弟くんは、元気かい?」

「多分、くたばっていません」


このような会話も楽しい。

主婦の気持ちが、わかる。


主婦というのはとても、大変な仕事です。

どこぞの漫画の、「主婦は楽」という言葉に、騙されないでください。


誰に言ってるんだ・・・俺・・・


野菜とウィンナーを買う。

そう、ウィンナー。


俺は、鍋のウィンナーが大好きだ。


で、家に帰ると、灯りがついている。


「消し忘れたか?」

そう思うと、鍵が開いている。


ドアを開けると、クラッカーが鳴る。


「お誕生日、おめでとう。お兄ちゃん」

そこには、妹と弟がいた。


「驚いた?」

二人は言う。


「何だ、二人とも生きていたのか?」

「失礼だよ。お兄ちゃん」

怒ってる。


「で、どうした?」

「今日は、お兄ちゃんの誕生日でしょ?だから、一日だけ帰ってきたんだよ」

ふたりの声がはまる。


ちなみに、妹と弟は双子だ。


「でもなんで?」


妹と弟は、目を合わせて、口を揃える。

その言葉がはもる。


「出来の悪い兄を持つと、弟や妹の苦労は絶えない」

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苦労 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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