ゆめのはな さいた

せりりん

ゆめのはな さいた

「ゆめのはながさいてるよ!!」

今日、となりののんちゃんが僕に教えてくれました。

「こっちだよ!こっちだよ!!」

のんちゃんはいきなり僕の手を取って走り出しました。

「はやくはやくっ!!」

のんちゃんはとってもうれしそうな笑顔で僕の手を引っ張ります。

「のんちゃん、そんなに急いだら僕、のんちゃんに追いつけないよ」

でも、のんちゃん、僕の言うことなんか聞いてくれません。

「ほらっ!!ゆめのはな!!」

のんちゃんが指さした先には・・膨らみ始めた白梅のつぼみから、ほんのちょっとだけ、花が咲き始めていました。

のんちゃん、まだちっちゃいから「うめのはな」って言えないんです。

 「ゆめのはなさいたからもうはるだね」

のんちゃんが僕ににっこり微笑んでくれると、僕も釣られて

にっこりと・・ふと心に春が来たような気がしました。

 そう、この花はのんちゃんが言うように「ゆめのはな」なんだって・・「ゆめのはな」が咲いたんだって・・僕はそのときはっきりわかりました。

 ふと、頭上でかさり、と音がしました。見上げてみると、木の枝で真っ白な猫さんがきもちよさそうにお昼寝してました。

この花はゆめの花だから、ねこさんとっても気持ちのいいゆめ見てるのかな・・でも落っこっちゃわないかちょっと心配になっちゃいました。


そんなちょっとだけ早い、春の日のお話。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る