幼少期 プールの星
華蝶はプールの授業は嫌いらしかった。
「だっておっぱいは好きな人にしか見せちゃいけないんだよ。だから、風彦ちゃんにしか見たらだめなの」
そう言って、先生達や大人を困らせた。
華蝶はいつもプールは見学だった。だからだろうか。元々色白の華蝶の肌がぼんやりと空気が抜けるような白さで、それがクラスの中でも際立って美しかった。
でも、俺は華蝶とプールに入りたかったんだ。
ある暑い夏の夜の事。俺は華蝶を連れて真夜中の学校のプールに忍び込んだ。外とプールを隔てているフェンスを越える時に華蝶が迷っているのを、俺が先に登って手を貸して引っ張りあげた。
「華蝶、二人っきりのプールだ。我慢しなくて良い」
「そうなの?」
「嗚呼、そうだよ」
華蝶が水着に着替えてきて、夜のプールで二人で遊んだ。華蝶は泳げなかったから、潜ったり、手を貸してばた足の練習をする位だったけれど。
「華蝶、プールは気持ち良いだろう」
「うん。気持ち良いし、凄く綺麗。水が夜空の色をしてるよ。あれ、なに?」
「ん?嗚呼、昼に皆が遊んだおはじきの残りが沈んでるんだな」
「プールって凄いね。水にも空にもきらきらしたのが沢山ある」
確かに、プールの上には星空が瞬いていた。俺は改めて夜空を見上げるのは初めてだった。
華蝶の目には、いつもこんな世界が広がっているのだろうか。
華蝶が水の中に潜って、おはじきを拾ってきた。
「お星様を捕まえたよ」
華蝶は、笑っていた。
俺も笑っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます