雪月花の時、最も君を想う

江戸崎えご

前書きにかえて

 これは小説と言って良いものだろうか。

 俺はたった一人の掛け替えの無い友にしてとんでもない馬鹿野郎に対しての手紙のつもりでこれを書く。

 思えば彼奴とはお互い切磋琢磨していた様な、俺がぶん回されていただけの様な、俺が面倒を見てやらないと死んでしまいそうな、そんな気がしたものだ。

 彼奴は本当に死んでしまった。

 令和と言う新時代を見る事無く、昭和終わりの物心つく前からの付き合いで、一緒に平成を駆けた男に捧ぐ。

 天の国か、地の底か、あれが何処に居るのかは分からないが、「俺は生きているぞ」と手紙を送る。

 あれは恐らく、「お前は本当に律儀な阿呆だ。僕なんかに手紙を送っても読む筈が無い」と笑うだろう。笑いながらもきっちりと読んで「お前の文章は詰まらない」とまたぞろ喧嘩するのだろう。

 俺があの世に行ったら、そんな話を彼奴としたい。何十年後になるか分からないが、俺は彼奴を覚えているし、半生涯を共にした友である事は間違いない。きっと死後はあれと酒でも飲んで、この手紙や現代の文壇や昭和初期の文豪の話でもするのであろう。

 その時の話のネタにするつもりで、櫻月華蝶に令和初めての小説にして手紙を送る。


 朧谷風彦

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