第8話
く~~きゅるるる~~っ
室内で響き渡るお腹の虫が成った。
俺は顔を真っ赤にして「エヘヘ」と可愛く言ってみた
「ほっ、ほっ、ほっ、お腹の声が聞こえましたな、ほっ、ほっ、ほっ」
(ほっ、ほっ、ほっ、ってこの医師じいさん癖なのか?)
「ウィル様が病に臥しておりまして、食しておりませんでしたな」
話しを聞くとウィルは食が細く余り食べて居なかったみたいで、寝たきりの時はスープを飲んでいたと聞いた。
「ウィル様、今日の御食事は胃に優しいスープと果物が宜しいかと思いますので、まだお身体が弱っております。少しずつ食事の量を増やされると宜しいでしょう」
「今、御用意いたします。」
メイドと名乗っていた女性が部屋を出た後
「さて、私も失礼致しますので何か御座いましたらお呼び下さい」
医師じいさんが部屋を出ると、部屋の中ではウィルの俺とシェル王子二人と成った。
しーーーん……
「……」
気まずい……今この部屋ではシェル王子と俺二人っきりとなり、俺が黙り込んでいるとシェル王子がベッドの側へと近づいていた。
「ウィル、私も一度部屋を出るよ、私はウィルの容体を父上に報告しなくてはいけないからね、何かあったら近くに騎士が居るから彼等に声を掛けると良いからね」
ニコッと微笑むシェル王子は俺の頭を撫でた……
(この人頭を撫でるの好きだな……)
「ウィル、身体を起こして上げるよ、食事をするからね私が起こすのを手伝って上げるよ」
「えっ?!あ、はい、お願いします……」
俺はシェル王子から身体を起こして貰いベッドの上に座る事が出来た。
まるで慣れているかのように手際よく手伝ってくれて、ウィルが言っていたように「王子様なのに僕の世話を良くしてくれる兄様だよ」と言っていた事を思い出し、本当何だなとベッドの乱れた掛け布団を俺の膝に乗せせっせと作業をするシェル王子を(メイドみたいな人だな)と声には出しては言えない事を心の中で呟いた。
「ウィル、何か用がある時は部屋の外にいる騎士に声を掛けるんだよ」
シェル王子は俺に話し終えると部屋を出た後俺は「騎士?!」と思わず声に出し驚いていた。
騎士ってヨーロッパのような感じの鎧に剣を持っている騎士の事何だよな……テレビで洋画で見た事があるけど実際に見るとなるとなんか怖いようなでも見てみたい好奇心はある。
用が無いときに呼んだら怒られるかな……俺はベッドに座りウィルの細い腕と小さな手を眺めていた。
「ウィルあんまりご飯食べてなかったんだな…お前のお腹ぐーぐーと鳴りお腹すいているから食べたいと思う気持ちは在るのにな」
俺はシェル王子がせっかく整えてくれた掛け布団を捲り着ているパジャマに驚いた。
「ワンピースか?これ……」
膝下まであるズボンが無いパジャマを見て、シェル王子もこのワンピースみたいなパジャマを着ているのだろうか……と怖い事を想像しながら俺はウィルの身体である足を動かしていた。
「細いけど歩け無い事はないな、何かに掴まって歩く練習をすれば大丈夫だろう」
俺はウィルの足をモミモミとほぐすように触り、「
そういえば俺ウィルの生の顔まだ見ていなかったな」
あの真っ白い空間で会ったウィルを見ただけで、実際はまだウィルの顔を見た事が無い、後でご飯を食べた後に鏡で見たいな……俺は豪華な部屋の中をベッドの上で見回し、王子様一人にしては広い部屋でなんて贅沢何だろう……俺の六畳の部屋とは比べ物には成らないな、いや、俺の部屋と比べてどうすんだ?
「はぁ」と息を吐き俺はシャンデリアのような天井にぶら下がるのを見て、「春人の俺はどうなった?」
と考えていた。
やっぱあの時部屋で倒れそのまま俺は死んでしまったのか?いや、風邪だったはずだが……
「はぁ、今さら色々考えてもどうにも成んないし、今ここにいる事を現実として受け入れる事なんだと思うけど……ウィル、本当に死んでしまって居たんだな…生きているお前に会いたかった」
俺はウィルの手をギュッと握り締めていた。
ぐ~~きゅるるる~~っ!
「俺、お前の身体の中に入って今まで生きてきたウィルの性格を俺が壊してしまいそうで怖いな……」
ぐ~~きゅるるる~~っ……
悩んで居ても腹は減るんだな
俺はご飯を持って来てくれるメイドを待った。
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