第12話 小説の書き方本のすばらしい言葉を集めてみたよ

小説の書き方本のすばらしい言葉を集めてみたよ


 自分用の覚え書きなので、漢字やひらがな、送りがな等は正確ではありません


□書くことについて スティーヴン・キング 小学館文庫 2013年


怪物も、時と場合によっては、怪物でなくなる。人々はそこに美を見出し、ストーリーに恋するようになる。千ページ読んだあとでも、読者は作者がつくりだした世界を去りがたく、そこに生きる架空の人物と別れがたくなる。それが二千ページの本なら、二千ページを読み終えても、まだそこから立ち去る気にはなれない


「その日、アニーは自殺しかねないくらい落ち込んでいた」「その日、アニーはとりわけ上機嫌に見えた」と書いたら私の負け


乱れた髪に櫛を入れることもなく、ケーキやキャンディーを憑かれたように貪り食うシーンの描写によって、アニーは鬱状態にあると読者が判断してくれたら私の勝ち


アニーの視点からの世界の描写をまじえ、その狂気を理解する手掛りを示すことができたら、読者は彼女に同情を覚え、場合によってはそこに自分自身の姿を投影するようになる

愉快な場面を描くときも(『スタンド・バイ・ミー』のパイ食い競争や『グリーン・マイル』の処刑のリハーサルシーンなど)、「理想の読者」ならきっとここで笑うだろうなと考えているはずだ。タビーは大笑いするとき、まいったというように両手をあげ、大粒の涙をぽろぽろこぼす。私はそれを愛している。心の底から愛している


私が書くのは悦びのためだ。純粋に楽しいからだ。楽しみですることは、永遠に続けることができる


ものを書くのは、読む者の人生を豊かにし、同時に書く者の人生も豊かにするためだ。立ち上がり、力をつけ、乗り越えるためだ。幸せになるためだ。おわかりいただけるだろうか。幸せになるためなのだ


あなたは書けるし、書くべきである。最初の一歩を踏み出す勇気があれば、書いていける。書くということは魔法であり、すべての創造的な芸術と同様、命の水である。その水に値札はついていない。飲み放題だ。

腹いっぱい飲めばいい


□職業としての小説家 村上春樹 新潮文庫 2017年


小説家という種族は頭のあまり良くない男の側に属しています。実際に自分の足を使って頂上まで登ってみなければ、富士山がどんなものか理解できないタイプです。それどころか、何度登ってみてもまだよくわからない、あるいは登れば登るほどますますわからなくなっていく、というのが小説家のネイチャーなのかもしれません


君の能力と才能を絞りきってものを書け。そして弁明をしたり、自己正当化したりするのはよせ。不満を言うな。言い訳をするな

レイモンド・カーヴァー 書くことについて


小説家の基本は物語を語ることです。そして物語を語るというのは、言い換えれば、意識の下部に自ら下っていくことです。心の闇の底に下降していくことです。大きな物語を語ろうとすればするほど、作家はより深いところまで降りていかなくてはなりません。

作家は、その地下の暗闇のなかから自分に必要なものを――つまり小説にとって必要な養分です――見つけ、それを手に意識の上部領域に戻ってきます


「何をどのように書いたところで、結局はどこかで悪く言われるんだ」


重要なのは、交換不可能であるべきは、僕とその人が繋がっているという事実です。どこでどんな具合につながっているのか、細かいことまではわかりません。ただずっと下の方の、暗いところで僕の根っことその人の根っこが繋がっているという感触があります。それはあまりに深くて暗いところなので、ちょっとそこまで様子を見に行くということもできません。でも物語というシステムを通して、僕らはそれが繋がっていると感じ取ることができます。養分が行き来している実感があります


物語というのはつまり人の魂の奥底にあるものです。人の魂の奥底にあるべきものです。魂のいちばん深いところにあるからこそ、それは人と人とを根元でつなぎ合わせることができるんです


□ベストセラー小説の書き方 ディーン・R・クーンツ 朝日文庫 1996年


作家は能力のゆるすかぎり多くの読者を得ようと努力すべきであり、一作ごとに自分の力を伸ばそうと試みるべきである


主人公につらくあたれ


小説が成功するか否かは、プロットと登場人物の性格描写にかかっている

作品を最大限おもしろくするには、著者はアクションと性格描写を結びつけるべき

作家に売り込めるものといえば、作品を通して映し出される作家自身の声であり、視点であり、個性そのものなのだ


作家が売るものは文体。すべての物語は語りつくされていて、新しいプロットはない。ディケンズの言


小説に新鮮味を盛り付ける唯一のものは、ユニークな視点とユニークな語り口、個性的文体をもった新しい作家たちである


□プロの小説家になる作家養成塾 若桜木虔 KKベストセラーズ 2004年


売れるエンターテイメントの構成


1 作品の冒頭に読者を惹きつける事件が存在しているか

2 起承転結を、それぞれ明確に設定しているか

3 見せ場はどこなのか。起承転結に対応する四つの山がきちんと存在し、それぞれが似通ったりしていないか(同一パターンの反復になっていないか)

4 主要な登場人物全員が、作品の冒頭から全体の四分の一までの部分に登場しているか

5 事件が何も起こらない平坦な描写が長々と続く箇所がないか

6 この作品のセールスポイントは何か。人気作品のあと追いになっていないか

7 主人公の魅力はなにか。よくあるステレオタイプの人間像になっていないか

8 人間関係は適当か。どうでもよい余分な人間が出てきていないか


きちんと起承転結を盛り込んで、あとはスリル・スピード・サスペンスの三要素の意外性を持たせなさい


読者の要望


A 読者の期待どおりに物語が展開していき、安心して読める

B 読者の知らない情報が多く盛り込まれており、知的探究心を満足させる


主人公の思考や感覚を、言葉を選んで緻密な織物を織り上げるかのように書き尽くしてこそ、小説の世界が完成していく


編集者からダメ出しされたら、書き手は全体をじっくり見直し、指摘された部分の五倍も十倍もの箇所を直さなければならないはずだが、あなたはプロットや原稿の修正を小手先の細工で終えてはいないだろうか?


小説家になるのに、才能は必要ではない。必要なのは「自分は必ず小説家になれる」と堅く信じて疑わず、いかなる困難・障害・挫折が前途に立ち塞がろうとも、生涯をかけて、ひたすら書いて書いて書き続ける精神力である


□まだ見ぬ書き手へ 丸山健二 朝日新聞社 1994年


他者に対する底なしの優しさを持ち、同時に底なしの非情さを併せ持っていて、その両端を交流電気のように行き来しているタイプが書き手になれる


才能の有無は、他人の作品を理解できるかではなく、自分の作品をどこまで正しく評価できるかどうか


自分の作品を読んで自己嫌悪が正解


小説はあなたが想像している十倍くらいの時間を必要とする


ストーリー作りの楽しさが消えたあとどこまで深く掘り込めるか


書き手にとっての唯一の存在証明は、作品のみ


あなたはあなたの現在の実力に従ってゆっくりと書きつづけ、少しずつでも確実に腕を上げていかなくてはならない


□あらゆる小説は模倣である。 清水良典 幻冬社新書 2012年


ある事件について友人相手にしゃべる考えや意見が、気づかないうちにじつはテレビでニュースキャスターがしゃべっていた意見の受け売りだったり、新聞記事の借用だったりすることがある。

 思っているよりも私たちは、過去に接して刻み込まれた記憶の影に覆われているものだ


あなたの創る物語や場面のすべてとはいわないが、かなりの割合は、そういう忘却された「影」かもしれない恐れがある


自分を特別なオンリーワンだなどと思い込んではいけない。同じように、自分のアイデアを天から降りてきた唯一無二の独創などと信じてはいけない


あらゆる小説は、部分や無自覚も含めて、多かれ少なかれ何ものかからの模倣あるいはパクリなのである


密猟するべき最終的な猟場は、書物の奥の森にある。手付かずの沃野がまだ眠っている。そこに分け入って、どんどん盗んでほしいのだ。

旧世代もネット世代も、もっと大胆不敵に、小説という大いなる言語の生命活動に連なってほしい


引用した作者の名前を明記する

「無断引用」をしない


□ミステリーの書き方 アメリカ探偵作家クラブ 講談社 1984年


熱狂状態を持続せよ。自分自身が面白いと思うもの、怒りを覚えるもの、興奮するものについて書け。そうすれば作品は常に新鮮なものとなる。自分が熱くならなければ、読者を熱くさせることはむずかしい


□ボーイズラブ小説の書き方 花丸編集部編 白泉社 2004年


ボーイズラブ小説でもっとも大切なこと

書き手であるあなたの萌えを、読み手へきちんと伝えること


パッションにあふれた萌えと、構成を冷静に考えて文章を練ることができる能力――ボーイズラブ小説のプロをめざすなら、この両方を兼ね備えてください


ストーリーは一見、問題の解決を中心に進行していく。

が、ラブストーリーである以上、本筋はあくまでも恋愛である。問題の解決過程でふたりが互いの魅力に気づき、思いが通じるかまたは行き違いを解消して、最終的にハッピーエンドとなるのが理想的なパターン。恋愛の山場と問題解決の山場がイコールとなるのがベスト


Hシーンとは、ふたりの男性のあいだにあるのが友情なのか愛情なのかを明確に分ける、まさに1本のラインなのです


我々編集者の最終的な目標は、読者を感動させる本を作ること

心を揺さぶられるような作品に出会いたい


□一億三千万人のための小説教室 高橋源一郎 岩波新書 2002年


知識をぜんぶ、いったん、忘れてしまうこと


感受性をとぎすまし、こうやって、暗闇のなかで目を見開き、沈黙のなかで耳をすまさなければ、小説をつかまえることができないからです


あることを徹底して考えてみる。考えて、考えて、どうしようもなくなったら、まったく別の角度で考えてみる


世界を、まったくちがうように見る。あるいは、世界が、まったくちがうように見えるまで、待つ


なにかをもっと知りたいと思うとき、いちばんいいやり方は、それをまねすることだ


あなたは、もちろん、追いかけるべきです。

美しいもの、優しいもの、いとしいもの、愛らしいもの、儚いもの、繊細なもの、心豊かなもの、たましいを揺るがすもの、力強いもの、を。

ただ、わたしがいいたいのは、見失いそうになるもの、見ないようにしたいもの、そういうものの存在を忘れないように、ということなのです


たましいのことは大事だけれど、たましいのフリークス(奇形)がいること、をわたしたちは忘れてはならない。そして、その、たましいのフリークスの呟きを聞くことができる耳を持たなくてはならない


小説はいう、生きろ、と


自分のことを書きなさい、ただし、ほんの少しだけ、楽しいウソをついて

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