『普通』であることが『幸せ』であるという信条を持つ主人公は、ひと夏の間、叔父さんの家に預けられます。作家の叔父さんは独身のはずなのに、自分の左手を『妻だ』と紹介します――どこにも居場所がないと感じる主人公。人間の叔父さんと怪異の奥さんはそんな彼女を温かく受け入れてくれます。でも怪異と人間は相入れません。自分が彼らに比べれば『普通』であることに安堵し、でも『幸せ』でない現実を見た主人公。彼女の背負った業と罪の意識。主人公が選び取った結末に、幸福とはなんなのか、考えずにはいられません。