第2話
《要》
はじめてカノジョができた時、たしか中二の春に、友達に「同情したのか」と聞かれた。
昇降口でみんながいる中で、告白をしてくれたカノジョは、冷やかしの声に赤面していたから。
でも俺、同情なんかで付き合えるほど、器用じゃないと思うんだ。
好きを真っ赤になってまで伝えてくれたカノジョが、とても愛しく思えたから、付き合おうって俺から言ったんだ。
あれから三年経った今も、あのときのカノジョは愛しく感じるし、別れるまでの間、一度だって、同情してるなんて感じたことはない。
それは、どのカノジョだって同じ。
たとえ短くても、誰かと付き合うことに同情も、後悔も、感じたことはないんだ。
だって、誰かに好きだと言えることを、その感情を、俺は凄いと思うから。
自転車置き場で男女交えて話をして、自然に会話が途切れたところで帰路につく。
毎週水曜、部活がない日のお決まりコース。
いつも通り、俺は友達を見送って、自転車のキックスタンドを蹴り上げた。
「帰らないの?」
俺の横でなにかを待つようにして立っていた女子は、大きく深呼吸をして胸に手をおいた。
「カノジョと別れたって聞いたよ」
「うん。よく知ってるね」
「みんな知ってるよ」
そう言って、女子は小さく笑った。そして口を閉ざした。
何か言いたげに見えて、俺は静かに待った。
何度かお別れを経験しているけど、俺とカノジョのお別れはいつも、誰かの耳に入る。
それを、俺はいつも他の女子から知らされた。今回みたいに。
ふいに、女子が俺を見る。
「付き合ってよ」
真剣な眼差し、少し火照った頬、震える唇。
何度、目にしたか分からない表情。
こういう時の俺の答えは、いつも、決まっていた。
「良いよ」
付き合うのは、同情なんかでも、カノジョを切らせたくないからでもない。
中学ニ年の春、初めての彼女ができたあのときから、三年。
俺の気持ちは変わらない。
「好きだ」と言えることは凄いと、やっぱり、そう思うから。
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