老人、子供たちに会いに行く

@naohira123

老人、子供たちに会いに行く

静かにドアを開け、それは静かに部屋に侵入する。閑散とした部屋の角にはベッドが置かれており、男が寝息を立てている。


ベッドに近づくと男の顔を覗き込む。男は侵入者に気づくことなく眠りについており、目がさめる気配はない。


 そして男の顔に向かって、口を開いた。




コケーー!!




「ああ、うるさい!おきた、おきたから」




 耳元で響くけたたましい鳴き声に飛び起きる。慌てて犯人を抱えあげると、犯人はつぶらな瞳でこちらを見つめてくる。


 そして、こちらの額をコツコツと小突いてくる。




「ああ、ああ。わかったヘルメス。朝ごはんが欲しいんじゃな。」




態々小屋に入ってきて、朝食を催促する同居人を抱えて竃に向かう。多いときは四人分の食事を作っていたが、老人一人暮らしとなった今では無駄に広いだけだ。




「さて朝ごはんは麦粥にしようかのう。そういえば、ジャックさんが大きな猪が獲れたと言って、肉を分けてくれたのう。まあ、晩御飯でも良いか」




そう言いながら、食材を置いている籠を漁っていると、ヘルメスが脛を小突いてくる。




「痛いぞヘルメス!なんじゃお前は肉が食いたいのか?」




 そう問いかけるとその通りだと言うようにさらに脛を小突いている。仕方なく、猪肉を小さく切り取ると彼の口元に近づける。彼は肉片を奪い取ると美味しそうに咀嚼する。物足りなかったのか、さらに寄越せとでも言うようにこちらを突いてくる。




「こらこら、あまり肉ばかり食っていると体調を崩すぞ?あとは野菜と穀物にしなさい」




 そういって、頭を撫でると彼は不服そうに喉を鳴らすが、諦めたのか食卓の方へヒョコヒョコと歩いて行った。娘がいた時はヘルメスを甘やかしていたが、その娘が巣立って以降、甘やかすだけなのもどうかと思い、厳しく接することにしている。




「良い子だ。さて、早く朝食を済ませることにしよう」




 朝食が済むと、歯を磨き、杖を持って小屋を出る。空はよく晴れており、春を謳歌している色とりどりの花達が目を楽しませる。


暫くすると、村の集会所にたどり着く。そこには村の子供達と暇な老人達、そして教会の神父がいる。




「あ、おじいちゃんおはよ〜」




「こら、おはようございますだろ!」




「せんせ〜きょうはなにをおしえてくれるの?」




老人達は、立つこともできない幼児達の世話をしており、話すことができるようになった子供達は神父と私が簡単な読み書きや計算、歴史などを教えている。




「やあ、遅れてすまんのう。さてさて今日は何を教えようかの」




子供達への教育は午前中だけだ。午後から彼らは親の仕事の手伝いや幼い兄弟の子守などを行う。


子供達を見送り神父と談笑した後、周辺を散策する。山の中腹を拓くように作られた村はあまり大きくなく、暫く歩けば獣除けの柵にぶつかる。


外に見えるのは、芽が生えたばかりの畑と未開の森、そして麓へと続く一本道だけだ。暫く眺めていると、一本道を進んでくる男が目に入った。使い込まれた皮鎧に、弓を背負った男。子供のお使いから戦争での戦いまで、様々な仕事を請け負う冒険者ギルドの人間だった。




「ああ、カインベルトさん。今日もここで待っていたのですか?」




「まあ、そろそろじゃと思っとったからのう。暇な老人の道楽じゃと思うてくれ」




「まあ、俺からすれば探す手間が省けて楽ですが。ヘルメスも元気そうだね」




そう言って、馴染みの冒険者は懐から干し肉の欠けらを取り出すとヘルメスに差し出す。ヘルメスは嬉しそうに鳴くと干し肉を受け取り咀嚼している。




「ああ、すいません。こちら息子さん達からです」




そう言って、彼は懐から三通の封筒を取り出す。三月に一回、独り立ちした子供達から手紙が届く。彼らからの手紙が一人暮らしの老人の数少ない楽しみとなっていた。




「おお、ありがとう。それじゃあいつも通りにこれを頼むよ」




そう言って、三ヶ月前の手紙の返事と、配達の依頼料を彼に渡す。彼は受け取り懐にしまうと、さらなる干し肉を催促しているヘルメスのトサカを優しく撫でる。




「ああ、そうそう。もしかしたらこの依頼は最後になるかもしれん」




「ええ!カインさん、どこか悪いんですか?」




そう告げると、彼は驚いたようにこちらを見てくる。どうやら寿命が来ると勘違いさせてしまったようで、慌てて否定する。




「違う違う!驚かせてすまんのう。実はその手紙に書いているが、一度息子達の様子を見に行こうと思ってのう。場合によっては暫く逗留しようと思っとるから、次の手紙配達の仕事は先になろう」




 そうは言ったものの、すぐに旅立てるわけではない。村長に旅立つことを伝え、別れを拒み泣き叫ぶ子供達を慰め、神父にこれからの子供達の教育と残される小屋の管理についてお願いし、自分を訪ねて村の外から来た客人用に立て看板を残して村を出る。その間に一ヶ月の時が過ぎ、ヘルメスは別れを惜しむ村人達からの選別で夏前だと言うのに冬篭りの準備を済ませてしまった。




「ヘルメス、お前はこの旅で痩せないとのぉ」




そう言ってヘルメスをトサカを撫でると、心外だと言うように喉を鳴らす。




「はっはっは。ヘルメスも美味しそうになっちまって。気をつけないとスラムの人間に連れ去られてローストチキンにされちまうぞ。痛っ!こら、脛をつつくんじゃない!巧妙に脛当てを避けやがって!」




麓の町に降りた後、冒険者ギルドに護衛の依頼を出した。いつも手紙を届けてくれる冒険者が、息子達がいる王都に向かうところだったらしく、今はヘルメスの十八番の脛突きの餌食になっている。




「そういえば、じいさん。息子さんたちが出て行って何年だっけ?」




「人聞きの悪い言い方をするんじゃない。息子達は独り立ちしただけじゃ!彼らは15歳になった4年前に旅立って行った」




 4年前のことは昨日のことの様に覚えている。自分の持つ知識、経験を彼らに惜しみなく伝え、一人前になった所で外の世界へと送り出した。娘は駄々をこねていたが、何度も話をし納得してもらった。




「何、息子さん達三つ子だったの?そういえば爺さん何歳だっけ?」




そういって、こちらを訝しげに見てくる。彼との付き合いは、息子達が手紙を送る様になってからなので、面識はない。若者の父親がこんなジジイと聞いて不思議に思ったのだろう。確かにここ数十年、髪も髭も伸ばしっぱなしのままだ。子供達はこの白い髭を気に入っており、息子達も幼い頃は髭や引っ張って遊んでいたものだった。




「わしの年か?さて、200から先は数えとらんのう。シュバールが滅んだ時に18歳だったか?息子達は養子でのう。いろいろな事情が重なってわしが育てることになったんじゃ」




彼らと出会った頃のことを思い出す。いろいろなことに疲れて隠遁しようと旅をしていた時、偶然に偶然が重なって三児の父となってしまった。




「ははは、人間なんて50年も生きればジジイと呼ばれるのに、爺さんは随分長いこと爺さんをしているんだな!シュバールなんて国、聞いたこともないぜ」




 こちらの答えを冗談と受け取ったのか、彼は笑いながら歩き続ける。


冗談じゃないだがのう、と言うつぶやきはヘルメスにも聞かれることはなかった。その後も特に問題が起きることはなく、一ヶ月の旅路が終わり、無事に王都に到着した。


だが、この後は順調とはいかなかった。




「ふう、まさか誰にも会えんとはのう」




そう言って、ため息をつきながらヘルメスのトサカを撫でる。ヘルメスは励ますように喉を鳴らすが、今のところこの王都の仲間は彼一匹だけだ。




長男のヴァイスは冒険者ギルドに所属する冒険者だったが、彼は依頼に出ており不在だと言われた。伝言は残したが、戻ってくるのはいつかわからないと言われた。その後ギルドにいた若者達と友好を温めた後、次男の勤めている魔術師協会に足を向けた。


しかし次男のシュバルツも不在だと言うことだった。ヴァイスの時同様伝言を残した後、シュバルツの同僚だと言う魔術師達と軽く雑談し、老婆心からいくつか助言をした後に協会を後にした。


 末っ子のエヴァに至っては伝言も残せたか怪しい。なんの冗談か、田舎から出てきたあの子は王城に勤めていると手紙に書いてあった。守秘義務があるとかで仕事の内容は書かれていなかったが、メイドか何かだろう。村で一番のお転婆娘がお淑やかになったものだ。


 だが、王城に勤めている娘については、どこにいるのかすら教えてもらえなかった。おそらく父だと信じられていないだろう。門番は浮浪者を見るような目だった。息子達と会った後に娘を呼んでもらうのが早いのだろうが、彼らが帰ってくるのは何時になることやら。




「取り敢えず、浮浪者に見間違えられないようにすることから始めるかのう」




そう思い手始めに床屋を探し始める。数十年の付き合い長髪と髭を剃り、今来ている数十年ものの麻の服を小綺麗な物に着替えれば、浮浪者と間違えられることはないだろう。思えば、冒険者ギルドや魔術師協会の受付もこちらを訝しげに見ていた気がする。




「まあ、後は近くの森から冒険者達が帰ってこないとギルドの若者達が騒いでおったのう。まあ、暇じゃし後で様子を見に行こうかの」




 しかし王都のつくりは複雑で、目当ての店を見つけるのに一日掛けてしまった。


次の日、数十年ぶりに髭を剃り、庶民の流行だと言う服一式を着込んで王都を出る。そして問題の森へと向かったのだが、近くと言っても徒歩で数日かかる距離だった。


 そして実際に赴くと、見たこともない大きな蛇がいた。


 胴の太さは自分の2倍ほどはあり、ヘルメルはもちろん人間も一口で飲み込まれるだろう。事実、蛇の周辺には行方不明の冒険者のものだろうか、鎧の残骸や剣が落ちている。


そして蛇の前には数名の若者達が立ちふさがっている。しかし彼らは満身創痍で、自らの足で立てなくなったものもいる。




「おお、お主達。数日ぶりじゃのう」




 そして若者達には見覚えがあった。昨日冒険者ギルドで交流を深めた見所のある若者達だ。




「あ、ああ?誰だお前は?」




「なんじゃなんじゃ。この前ギルドで会ったじゃろう?つれないのう。髭を剃っただけでわからんくなるとは」




「昨日?まさかヴァイスの親父を自称していたジジイか!?全然ジジイじゃないじゃないか!?」




「自称じゃないぞ、それにジジイなのも本当じゃ」




相手はこちらの顔を見て驚いているようだ。そういえば、随分前に不老の呪いを受け、見た目が変わらないのを隠すために髭を伸ばしていたのをすっかり忘れていた。まあ、中身が大体200歳の老人なのは変わらない。


 身なりを整えてもう一度立ち寄った冒険者ギルドの面々も驚いた。


 まあ、息子達も父親の見た目が若い方がうれしいだろうから良しとしよう。




「ところで仕事中だったかの。手伝った方が良いか?」




「杖一本しかもってないジジイと鶏に何ができるってんだ!足腰が丈夫なら街から助けを呼んできてくれ」




そう言って、若者達は大蛇に目を戻す。何故ここまで長話ができたかといえば、件の蛇は突然の闖入者に不思議な目を向け、特にヘルメスに熱い目線を向けている。鎧を着ている人間よりも剥き身のヘルメスの方が美味しそうなのかも知れない。


次の瞬間、大蛇は若者達を弾き飛ばし、ヘルメスに向かって突進した。そして彼を丸呑みにしようと大きく口を開ける。


 吹き飛ばされた若者達は、次の瞬間ヘルメスが丸呑みにされると疑わなかった。




コケーー!!




しかしヘルメスも負けていない。彼は大蛇に向かって大きく鳴くと、口から火を噴いた。




「は?」




キシャー




大蛇は鼻先を炙られ、悲鳴をあげながら逃げ惑う。ヘルメスは追撃と言わんばかりに逃げ惑う大蛇に火を噴き掛けている。




「ヘルメス、あまり張り切って火事にならんようにな」




 そう言いつつ、杖で地面を軽く叩く。杖が光に包まれ、次の瞬間そこには剥き身の剣が握られていた。




「さて、お主に恨みはないんじゃが、このままじゃと前途有望な若者が犠牲になってしまうからのう。すまんが殺らせてもらう」




そう言ってヘルメスの炎から逃げ惑う大蛇の近くに走り寄り、その首めがけて剣を一閃した。大きな抵抗なく剣は振り抜かれ、次の瞬間には大蛇の首はずり落ちた。




「ふむ、こんなもんか。すまんのう若者達。獲物を横取りしてしもうた」




 剣の切っ先で地面をつくと、次の瞬間には剣は杖に戻っていた。唖然とした顔でこちらを見ている若者達の治療をしようと彼らに近づくが、彼らはピクリともしない。




「あんた、いったい何者だ?」




そのうちの一人がこちらに恐る恐ると言った風に聞いてくる。その後ろではヘルメスが燃えている植物を口から水を噴き出して鎮火させている。鎮火が間に合いそうになければ後で手伝うことにしよう。




「数日前にも言っただろう?ただのヴァイスの父親じゃよ」




一方その頃、冒険者ギルドのテーブル席に、3人の男女が座って睨み合っている。一人の男は使い古された金属鎧を着込み、頑丈そうな剣を腰に差している。その装備はまさに質実剛健を表したような作りをしており、その顔にも彼の誠実さが表れている。


 もう一人の男はローブを纏い、指には様々な指輪を身につけている。感情が表に出ないと評判の顔には、珍しく苛立ちが浮かんでいる。


 もう一人は銀色に輝く金属鎧に身を包み、二本の細剣を背中に差している。整った顔には苛立ちを浮かべ、貧乏ゆすりを繰り返している。




「……数日前、私の父を名乗る老人がギルドを訪れ、私の所在を聞いたそうだ。職員は彼の連絡先を聞くことなく、そしてギルドの若い衆に絡まれる彼を助けることもしなかったそうだ」




もっとも、その老人は彼らを蹴散らしてギルドをあとにしたそうだが。


そう呟いて縮こまりながらこちらを伺う職員を睨みつける冒険者の男ヴァイス。若くして上級冒険者となり、ギルドからの信頼も篤い男は心を落ち着かせるように深呼吸し、ローブを着た男に目を向ける。




「こちらも数日前に協会事務所にカインベルトを語る老人が現れ、私がいるかどうかを聞いたそうです。その後、私を目の敵にしている阿呆どもに絡まれ、いくつか議論した後に出て行ったそうです。阿呆どもは論破されたショックでいまだに寝込んでいるそうです。全くプライドだけで知識も経験も足りない阿呆はこれだから」




 そう言いつつ首を横に振る、魔術師協会でも屈指の実力を誇り、若き天才と呼ばれる男シュバイツ。彼の頭の中には、協会の受付と、父親に絡んだ阿呆どもへの報復プランが練られていた。




「……さっき門番にごうも、じゃ無かった。質問したら答えてくれたわ。私に会いに来た、鶏連れの浮浪者がいたから、追い返したって」




正直に言ったから半殺しで勘弁してあげたわ。とイライラを隠すこともなく床にぶつけている少女、エヴァ。彼女は色々あってこの国の王女と出会い、さらに色々あって彼女を護衛する騎士に任命された。兄弟の中でも一番出世したのが彼女とも言える。




「……正直、お前の依頼がなければ、俺かシュバイツが父さんに会うことができたんだがな、エヴァ」




「何よ、しょうがないでしょ。西の国境に現れた竜の討伐に姫さまが任命されたんだから、信頼できて腕も立つ兄さん達を連れて行くしか無いでしょ」




カインが王都に着いた時、ヴァイス、シュバイツ、エヴァは同じ依頼で王都を出ていた。エヴァの雇い主であるこの国の王女が竜の討伐を命じられ、その手助けとして兄達に助けを求めたのだった。


因みに兄弟で仕事をするのは初めてではなく、エヴァの同僚達の間では、危険な任務には彼女に兄達が着いてくるという認識でいる。




「その竜もヘルメスほど可愛く無かったし」




「まあ、ヘルメスの方が竜の標準から外れているんですがね。彼も来ているようですから会ったら存分に可愛がればいいでしょう」




見た目は鶏そっくりなヘルメスだが、その実竜の一種だった。種名はそのまま鶏竜といい、大きさは竜の中でも最小だが他の竜同様に様々なブレスを噴くこともでき、食物連鎖の上位に存在する。




「まあ、過ぎたことはどうでもいい。これからに着いて話そう。父さんがここに来たということは、俺たちの提案に乗るということだろう」




そうヴァイスが言うと、シュバイツとエヴァも頷く。王都に来て3年たつ頃には、彼らは全員一端の地位を確立していた。そして彼らはその後送る手紙にて「一緒に住まないか」という提案をし続けていた。


 そしてこの前来た手紙にて「会いに行く」と言う返事が来た。つまりはこちらに移住すると言うことだろう。返事が来て以来、彼らは議論を重ねてきた。そしていまだに決着していない。


つまりは




「俺は何処かに家を買ってまた4人で住むのがいいと思う。父さんもきっと家族みんなで住みたいと思うはずだ」




「しかし、兄さんは冒険者ギルド、エヴァは王城、私は魔術師ギルドと職場が近いわけではありません。やはり今のままそれぞれの住居を持って、父さんにはそのどれかに住んでもらった方が良いと思います。そして兄さんは依頼で家を開けることも多く、エヴァも騎士の寮に父親を住ますことはできません。やはり私の住居兼工房に住んでもらうのが一番合理的だと思います」




「誰が父親と同居するか」と言う問題だった。長男のヴァイスは昔の様に4人で暮らすことを提案し、シュバイツは理論的に最も全員の負担が少ない(尚且つ自分が最も得をする)案を出していた。




 そしてエヴァといえば




「いやよ、パパは私と住むの。だってパパは私と結婚するんだから。お兄ちゃん達は私達の愛の巣に入ってこないでよ」




「……エヴァ、何回も言っているが、流石にそれはどうかと思うぞ。お前に求婚して言う奴も多いんだから、その中で俺に勝てる男を選べ」




「……そうですよエヴァ。確かに父さんは私たちとの血の繋がりはなく、不老の呪いで見た目も若い。しかし流石に年の差200歳はどうかと思います。後、あなたを“お義母さん”というのはちょっと。大人しく君にアプローチを掛けている男達の中で、私の全力に耐えられる男と結婚しなさい」




兄二人がドン引きするが、妹はそれをみて怒り出す。




「なによ!なによ!パパだって私と結婚してくれるって言ったもん!愛さえあれば年の差なんて関係ないんだから!」




「それ俺たちが10歳くらいの時のことだろ?あと流石に200歳の年の差は気にするだろ」




「そうですよ。子供の約束を20歳前にして持ち出すんじゃありません」




「なによ!お兄ちゃん達の分からず屋!」




 そうして、兄弟達の議論はまた決着がつかないまま、わがままを言う妹となだめる兄達と言う構図に変化していく。




「ぶえっくしょん。風邪でも引いたかの」




「ジジ、いやカインさん。なんでそんなにジジくさいんだよ」




「いや、じゃからわしは200越えのジジイじゃって」




「いや、流石にもうその冗談はいいって」




「冗談じゃないんじゃがの」




当のカインは蛇の死体を馬車に詰め込み、現場で居合わせた若者達と王都への帰路に立っていた。彼が息子達と出会い、さらなる騒動に巻き込まれるのは数日後の話だった。


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