第5話 ~弟子視点~ お師匠様とアブナイ満月の夜
~レイシー視点~
満月の夜。それは月に一度だけ、私がお師匠様の寝室に入ることを許されない日だ。理由は何故だかわからないが、絶対にそれだけは守るようにと言われているので、私はその通りにしている。
いくらお師匠様とは気心の知れた仲とはいえ、本人が『イヤ』と言っている領域に無理に踏み込むつもりはない。だって、お師匠様は私にそう接してくれるから。
でも、できるなら。私はお師匠様のことを、なんでも知りたいと思っている……
夕食の片づけを終えた私は湯浴みを済ませ、自室のベッドに横になっていた。
「はぁ……なんだか落ち着かないなぁ……」
当たり前だ。
だって私は就寝時、月の大半をお師匠様の隣で過ごしているのだから。
十歳で買われてきた頃、お師匠様に与えられた役目は添い寝だった。
当時はただ、役に立たなくちゃ!とそればかり考えていた気がするが、そう思っていたのは最初の数日だけだった。
娼館にいた人たちと違い、お師匠様は私を人として見てくれた。
気遣ってくれた、尊重してくれた。そのことに、数日経って気が付いたのだ。
それが、幼心にとても嬉しかったのを覚えている。
それからはただ、お師匠様の役に立ちたくて。
魔法の勉強もがんばった。ちょっとでもいいから、褒めて欲しくて。
お料理だって、色んな種類のものを美味しく作れるようになった。お師匠様の喜ぶ顔が、見たいから。
今思えば、添い寝なんて簡単な役目、お師匠様にとってはあってもなくても構わなかったんだろう。でも、私には存在理由が必要だった。
だからあの日、お師匠様は、半ば強引に存在理由をくれたのだ。
(優しいなぁ……変わってないなぁ……)
今日だって、いざ戦おうというときに私が怖がっているのに気が付いて、前に出てくれた。
助けてくれた。守ってくれた。それでもって、褒めてくれた。
――『さすがは、俺の弟子だ』って……
私は、お師匠様に撫でられた頭をもう一度自分で撫でる。
「ふふ。うふふ……」
思わずにやける。
それくらい、私はお師匠様が好きだった。
だが――
(いい加減、気付いてくれないかなぁ……?)
私のこの、燃え滾るような好意に。
昔、といっても十二歳のときだけど。私はお師匠様に告白した。
『お師匠様、大好きですっ!』って。
そうしたら、なんて言ったと思う?
『そうか、ありがとうな』
頭ぽんぽん、って。
もう、完全に子ども扱い!!
でも仕方がない、当時の私はブラジャーを着け始めくらいで女としての魅力はゼロ。『俺はロリコンじゃねぇ』が口癖のお師匠様は、どう足掻いたって靡かない。
けど、私は諦めなかった。
お師匠様の教え、『自分でやりきったと誇れるまで、諦めるな』を胸に、(女らしさの指標と思われる)バストサイズが目標のⅮを超えたとき、再びアプローチした。
今度はちょっと控えめに。
『お師匠様。私、お師匠様の隣にいると、ドキドキして……♡』って。
そうしたら、なんて言ったと思う?
『ああ、レイシーもそんな時期か。それはきっと、思春期というやつだ。
屋敷に男が俺しかいないんだ、無理もない。今のお前はそういう対象が限られ過ぎている。村に足繫く通うようになれば、きっと気になる男のひとりもできるだろうから、そのときはまた言いなさい。男によく効く妙薬を作ってやろう。ククッ……』
あのときの悪巧みしてる笑みってば……自分が薬を盛られる側だなんて全く思ってない顔だった。
玉砕だ。
次はEを超えないと告白しないって自分で自分を追い込んでるから、その機会は半年後か、来年か……
(私、スタイル良い方だと思うんだけどぁ……? おかしいなぁ?)
そもそも、お師匠様は女が苦手だと言っていた。
お付き合いしている方とかいないんですか、って聞いたら、『女は、嫌なことを思い出すから苦手だ』って。
でも、村を歩いていて綺麗な花売りのお姉さんに声をかけられたりすると、まんざらでもない顔で『数年前ならよかったんだがなぁ』とか残念がってるから、全く興味がないわけでもないと思うんだけど……
(はぁ……なんで?)
じゃあ、どうしてお師匠様は私を買ったんだろう?
この家に来たときはまだ幼くてイマイチ状況がわかっていなかったけど、大きくなった今はわかる。娼館で女の子を買うって、そういうことでしょう? しかも持ち帰り。私のことを教育して自分好みの女に育てようとか、ゆくゆくは嫁にしようとか、そういうんじゃないの?
なのに、お師匠様は手を出すどころか、思春期を迎えた私をしばしば寝室から追い出すようになった。『年頃なんだから、少しは気にしたらどうだ? 仮にも俺は男だぞ?』って。
思い切って『ご奉仕しましょうか?』とか誘っても、『その台詞は忘れろ』の一点張り。
と、年頃だからこそ、わざわざいい香りの溶液を身体につけてお師匠様のところに行ってるの、わからないのかなぁ?
お師匠様に添い寝するのは私の一番好きな時間なのに、昔と比べるとそれすら減って……
「はぁ……」
ため息が止まらない。
だいたいお師匠様は、事あるごとに『俺はロリコンじゃねぇ』って。
じゃあなんで買ったの!?!?
てゆーか、お師匠様は見た目が変わらないから、私もそろそろ釣り合いの取れる歳になってきたと思うんだけど……あと二年で成人するから、そうなればいよいよベストカップルな歳の差に……♡
「ふふ♡」
(…………)
ああ、虚しい。
ひとりでこんな妄想にばかり浸って、夜な夜な……
(…………)
お師匠様、何者なんだろう?
歳も取らないし、身体が異常に冷たい。
それに――
満月の夜だけは、絶対に寝室に入れてくれないの。
魔法の訓練を積んだ今なら、わかる。
お師匠様の部屋には、満月の夜だけ結界が張られている。
「…………」
そろそろ、月が一番高くなる。
たまに聞こえるの。月が一番高くなる頃……
『うっ…………ぐぅッ……』
「……!!!!」
(やっぱり、お師匠様だ!!)
『うぅッ……はぁ……はぁ……』
すごく、苦しそうな声。
(イヤだ、イヤだ、イヤだ! お師匠様のこんな声、聞きたくないよ……!)
布団をかぶってやり過ごそうとしても、気になってしまって眠れない。
『ぬ……うがぁッ……! げほっ、ごほっ……!!』
(なになに!? 発作? 病気なの?)
パタパタって……これ、床に血の垂れる音?
「お、お師匠様……?」
『はぁ、はぁ……』
今日は、いつもより酷いみたい。
(だ、大丈夫かなぁ? お水とか、持っていった方がいいかなぁ? でも、『絶対入るな』って……)
次の瞬間――
バタッ……! ガタンッ!! ガシャァンッ……!!
「……!?!?」
何かが、落ちる音がした。ついでに、花瓶の割れる音。
「お師匠様!?!?」
私は堪らず、部屋の扉を開けてしまった。
入った瞬間、プツリ、と何かが切れる音がする。
「あ――」
今、絶対、結界が壊れた。
「お、お師匠様……?」
月明りだけに照らされる部屋で、床に四つん這いになっているお師匠様に目を凝らす。
素手で花瓶を割ったのか、右手からはひたひたと血が垂れている。
呼吸が乱れて、苦しそうに背中が上下して、そして……
ゆらりと垂れる黒い髪。その隙間から、赤い瞳が私を覗いていた。
(うそ……)
赤い瞳は、魔族の証だ。
(うそ、うそ、うそ……! だってお師匠様は、いつもは紺で……!!)
背筋をかけるイヤな感覚。
ぞくぞくと身体を震わせた、次の瞬間。
ガタンッ……!
(……ッ!?!?)
お師匠様が馬乗りになり、私を床に組み伏せたのだ。
「あ、あの……お師匠様、ごめんなさい……私、勝手に部屋に……」
「…………」
聞こえているのかいないのか、虚ろな表情からは何も読み取れない。
「だ、大丈夫ですか……? 手の傷、早く治さないと……」
虚ろなままの赤い瞳が、怪我をした右手に注がれる。
流れていく血を止めることもせず、ぼんやりとそれを眺めていたかと思うと――
「……!!」
瞳孔が一気に開いた!! 私を組伏す腕に尋常じゃない力がかかる!
「いたっ……!!」
「ふふ……」
「お師匠様、痛いです……!!」
「ククッ……」
私を見下ろすお師匠様は僅かに口角を歪ませ、薄い唇を開いた。
「ふっ。生娘か……美味ソうだ……」
(……!?!?)
「あ、あの……それ、どういう意味ですか……?」
ま、まさか性的な意味……?
いやいや、まさか、そんな。
でも、生娘って言いました?
え? うそ。日々妄想し、夢にまで見たような展開が、今、ここで……?
「お、お師匠様なら……いいですよ……♡」
(私の初めて、もらってください♡)
なんちゃって……
「フッ。」
(
「ちょっと、今のはひどいんじゃないですか!?」
「クク……」
「お師匠様!? 聞いてます!?」
「威勢がいいな。上々だ」
「え?」
私のことを鼻で嗤ったお師匠様は、見たことのない妖艶な笑みを浮かべた。
血の付いたままの右手で、私の頬をするりと撫でる。
「ひゃっ、冷た……!?」
そうしてそのまま、首筋に舌を這わせた。
(ふ、ふぇぇええ……!?!?)
舌先がぬるりと動いて、そのあたたかさが生々しぃ!
(お、お師匠様ってば、身体は冷たいのに、舌はあたたかいの?)
え、えっちじゃないですか? それ……?
「んんっ……♡」
(ど、どうしよう、どうしよう! こんな展開を毎日のように妄想はしていたけれど……!)
現実と妄想では、レベルが桁違いだ!!
なんかもう、感触がヤバい! 息がくすぐったいぃぃ……♡
(というか、お師匠様どうしちゃったんですか? 満月の夜だけ発情する系男子? きゃぁ~♡)
って……
「そんなわけないでしょう!?!?」
「黙れ」
「痛っ!!」
今度は、首に噛みつかれた!
私が痛がっているのに、こんな無遠慮に……!
美味しそうって、やっぱりそっちの意味なんですね!?
間違いない、こいつは、お師匠様じゃない!!
「あなたは誰!?」
ガブッ!
「いたぁい!!」
肩を掴んで必死に抵抗するけど、力で敵うはずもない!
「さては、邪なるモノね!?」
第六の元素、邪なるモノ。
死や呪い、病や絶望を司る、天より見放されし孤独の元素。
それらは、自然の中で発生した天の恵みではなく、この地に住まう生き物を源に、天地創造の以後に生じたモノであるとか。
故に、どれだけ使おうと第六元素が自然に還ることはなく、ただこの地を彷徨っては、気まぐれに人にヤミを齎す。
ヤミ。それは時に病、死、心の崩壊……人との別れは、大抵この元素が連れてくるらしい。そうしてヤミが濃くなると、集まって、固まって……
悪魔になるのだとか。
「お師匠様の中から出て行きなさい! この、悪魔!!」
がぶっ!
「あああああッ……!」
「五月蠅いぞ」
がぶがぶ。
「……ッ!!」
(悪魔を追い払う魔法なんて、まだ習ってない……! どうしよう!!)
「離っしてっ……!!」
為す術もなくジタバタと抵抗していると、私の上に乗っていた悪魔が身を起こす。
「はぁ……もう少し静かにできんのか?」
呆れたような、うんざりした目。
口元についた私の血を指で拭って、苛立たしげに私を見下ろす。
(でも、こいつッ……!)
顔が、声が。お師匠様なんだよね……♡
普段のお師匠様なら絶対にしない、そんな鋭くて冷たい視線すらなんだか新鮮に感じてしまう。
「は、はわ……♡」
思わず興奮していると、悪魔は嗤った。
「なんだ、
「そ、そんなんじゃないです……! それは、あなたがお師匠様の姿をしているからで――!」
「ほう。お前、こいつが好きなのか? クク……」
悪魔は楽しそうににやりと笑うと、おもむろにシャツのボタンを上から外す。
そして、自らの鎖骨を大きく露出させると、私の耳元で囁いた。
「シてやろうか?」
「えっ……♡」
って、ばかばか! なに靡いてるんですか、私は!?
「ははは、いい反応をするなぁ! 欲にまみれた目をしおってからに……愉快、愉快!」
「ば、ばかにしてっ……! 早くお師匠様から出て行って! 満月の夜が過ぎればあなたが出てこられなくなることくらい、わかってるんですから!」
「ほう。杖なんぞ構えて、抵抗するのか? やれるものならやってみろ。この身体が傷ついてもいいのならな? ほれ、ほれ」
そう言うと、悪魔は私の身体を起こして抱き締めた。
まるで人形でも愛でるかのように、雑に頬ずりをして、耳たぶを食む。
「んん……っ!?」
「ほぁら、ここがイイのか?」
「ひゃ♡ こいつッ……!」
お、お師匠様の、匂いがするっ……♡
この近さでぎゅうぎゅう抱き締められたことなんてないから、その感触に、匂いに。頭がくらくらしそうになる!
「や、やめ……♡」
「ははは! この程度で感じているのか? なんとも初心な反応だ! これはいい!」
悪魔はしばらく私を弄って遊び倒したかと思うと、私をべしゃりと床に投げ捨てる。
そうして、窓際の月を一瞥すると、上から覗き込んできた。
にやり、と赤い目が細められる。
「……気に入った。お前の願い、叶えてやろうか?」
「え……?」
「この男が、『欲しい』んだろう?」
「それは――」
「ついぞ望みなんて無かった
「……!? あなた、どうしてそれを……!?」
「お前の記憶を、読んだ」
「サイテー……」
「だが、これで私の実力がわかっただろう? かつて勇者と共に魔王に挑む程の男……この魔術師ですら、私を完全に制することはできんのだ。そんな私がその気になれば、お前の望みなんて、いくらでも叶えることができよう」
「それは、そうかもしれないけど……」
いくらなんでも、悪魔の誘いに乗るなんて自殺行為が過ぎる。
それに――
「そんな手段でお師匠様を手に入れても、私は嬉しくない。なにより、お師匠様に失礼よ」
「つまらん」
「あなたの感想なんて、どうだっていい」
「わからんのか? これは取引ではない、一方的な契約だ。主導権は完全に私にある。だが、私はお前が気に入った。故に最大限の譲歩をしているのだ」
「は?」
「私は悠久のときを生きるが故に、娯楽に飢えている。私は、お前の望みを叶えることに興味が沸いたのだ。だから、叶えてやると言っている」
「あ、悪魔の誘いにおいそれと乗るわけがないでしょう!?」
「条件は、お前が『今が最も幸福だ』と感じた瞬間にその魂を我がモノとすること。それまでに、その濁った玉虫色の魂を、ぴかぴかに磨き上げてやる」
「魂の、色……?」
「お前の魂は、絶望に満たされた幼少期を過ごしたが故にどぶ色にくすんでいるが、後から得た希望と幸福が新たな色を差し、玉虫色の輝きを放ちつつある。今後の人生で心を満たしていけば、きっと何よりも美しい輝きを放つだろう。私はそれを、コレクションに加えたい」
「そんな、馬鹿な話……」
「何を言っている? 人生最高の瞬間を切り取り、朽ちることのない魂という名の牢獄で、その夢を永遠に見られるのだぞ? これ以上に幸せな最期は無いではないか!
それに、さっきから何か勘違いをしていないか? 私がこの身体に仮住まいしている以上、お前に拒否権は無い……お前は、ただのおもちゃだ」
「お、
どき、どき……♡
「ノリノリではないか」
「くっ……!」
甘い誘いに視線を逸らしていると、悪魔は窓の縁に腰かけて再び嗤った。
月を背にしたお師匠様の姿は少し長めな黒い髪が艶やかで、筋肉の少ない身体がしなやかで。いかにも魔法使いっぽい暗い雰囲気をしているのだけれど、こんな夜にはとっても似合う、私の大好きなお師匠様だった。
(中身が……! 中身が悪魔でさえいなければ……!)
罠だとはわかっている。
でも、お師匠様の身体が人質に取られている以上、私は逆らえない。
満月の夜なら、悪魔はお師匠様を殺せるのだ。
それに、もしこの悪魔をお師匠様の身体から追い出せる手段があるのだとしたら。
私は、こいつのことをもっと知る必要がある――
「わかった……大人しくあなたの言うことを聞く。だから、お願いだから、その身体には傷をつけないで」
「クク、契約成立だな?」
「脅しの間違いでしょう?」
「ははは、良いではないか! この私が、お前を! 幸せにしてやると言っているのだぞ! まぁ、お前は本当の意味で、この身体に幸せにしてもらうことを望んでいるようだがな?」
にやりと笑うと悪魔は音もなく私に近づいて、冷たい指先を顎に添えた。
「少し、サービスしてやるか」
「え――」
いつもはこっそり見つめている唇が、徐々に近づいてくる。
(待って、待って、待って……! 私、キスなんて初めて……!)
「ふ、ふやぁ……!」
あまりの恥ずかしさと抑えきれない興奮で、思わず目を瞑る。
すると、私の顎を持っていた手が急に緩くなった。
「ふ、ふぇ?」
どうしたのかと瞼を開けると、見慣れた紺の瞳と目が合う。
「……レイシー?」
「あ――」
「俺は、何を――」
こんなにきょとんとした顔、初めて見た。
「お、お師匠様ぁあああ……! よかったぁ! 元に戻ってよかったですぅ……!!」
我を忘れて抱き着くと、お師匠様は驚いた拍子に仰向けに倒れ込む。
「わっ。ちょっと、レイシー? そんなに抱き着くなって……」
「わぁぁああん……!」
「重い、重い! 覆いかぶさるな! というか、どうして俺の部屋に……おい、まさか! 怪我してないだろうな!?」
がばっと飛び起きて、私の首筋についた血と噛み痕に目が釘付けになる。
「レイシー……これは――」
私は、できるだけ気丈に笑ってみせた。
「覚えていないんですか? お師匠様ってば、今日はお酒の飲みすぎです。酔った拍子に、こんな……♡」
「は!? うそだろ!?」
「本当ですよ? 嘘だと思うなら、歯型を当ててみますか? きっとピッタリ……」
「お、おお、俺はロリコンじゃねぇ!!」
「でも、この痕が事実ですよ?」
「いやいや、待て待て――」
「ふふ。結構、強引なんですね♡」
「……っ!?」
にっこり笑うと、お師匠様はみるみるうちに青ざめた。
頭を抱えて俯いて、『俺は、俺は……』なんてブツブツと懺悔の言葉を呟いている。
(お師匠様。嘘をついて、ごめんなさい……)
悪魔と契約したことは、内緒にしなければならない。
そうしないと契約は無効となり、秘密をバラして約束を破った私は、無条件で魂を奪われてしまうからだ。
(ああ、お師匠様。お師匠様……)
歳を取らないお師匠様。
身体がとっても冷たくて、満月の夜は悪魔に身体を奪われてしまう。
どうしてそんな身体に?
心にヤミを溜め込んで、そうなってしまったのでしょうか?
それとも、勇者様と一緒に魔王を倒した際に、呪われてしまったのでしょうか?
その理由を、いつかきっと私に教えてくれるのでしょうか?
たまにふと、寂しい目をするお師匠様。
たくさん、助けてくれました。両手にいっぱいの嬉しいをくれました。
だから今度は。私がこの手で――
あなたを、救いたい……
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