バー・エンドルフィン
@Sikihiko
第1話 バー・エンドルフィン
海沿いの街の路地裏地下にある酒場。どんな話も聞いてくれて、どんな悩みも願いも解決してくれる魔法みたいな場所。それが此処「バー・エンドルフィン」
おっと、そういやアンタ初めて見る顔だな。じゃあ自己紹介といこうか。
俺は大神白、エンドルフィンの店主だ。そんであの隅の方で掃除してるのがアレン。エンドルフィン唯一の店員だ。この席からじゃ暗くてよく見えないが、中々の美男子なんだぜ。アイツは俺がイギリスに行ったときたまたま拾ったんだ。そこから俺が手塩にかけて育ててやったって訳だ。ん?アレンが掃除してるものは何だって?
あぁ、そりゃお前死体だよ。此処はバーだぜ?死体の一つや二つ転がってて当然だろって話が逸れたな。まぁいいや。ところでアンタ、何か用があるから此処まで来たんだろう。それも、この荒廃しきった裏の街とは無縁の一般人と見た。おっ、その顔は当たりだな。いやぁ、他人が驚く顔はいくつになっても愉快なもんだ。
しかし、裏の奴ならまだしも、表の人間がよく此処を見つけたな。え?どうしても殺したい奴がいるから、風の噂で聞いた情報だけを頼りに一人で何年も探し続けた?
はははっ、執念深さなら裏の奴らにに引けをとらねぇな。まぁ、それもそうか。それくらいの気概がなきゃわざわざ探さねえよな。しかし、そんだけ嫌いな相手なら、とっくに自分の手を汚してても可笑しくないんだがな、実際に手を汚すよりこの場所を探した方がアンタにとっちゃ楽だったって訳か。よし、アンタの根気と執念深さに免じて、今回の代金はサービスしといてやるよ。何、別に俺が直接手を下すわけじゃねぇが、確実にアンタの希望通りの結果を用意出来る事は約束できる。なんせ此処には腕利きの殺し屋がゴロゴロいるからな。もしアンタが『折角ここまで来たのに、失敗したらどうしよう』なんて思いがあるなら、それは杞憂ってモンだ。安心して俺たちに任せておけば全て上手くいく。依頼も説明も全部俺が代わりにやってやるのがこの店のシステムだ。アンタは金だけ用意して大人しく普段通り生活してれば良いんだ。
で、その殺したい相手っていうのは誰だ?詳しい事はこちらで調べる事が出来るが、その為に軽く相手の名前やら、された事やら聞いておく必要があるからな。
・・・・へぇ、成程。兄弟を殺した犯人ってワケね。だけど事故死として処理されて今でもソイツは逮捕されずにのうのうと生きているって事か。そしてアンタは兄弟が死んだのに相変わらず生きてるソイツを殺したいほど憎んでんだな。
ふーん、それは災難だったな。それじゃあ兄弟の無念を晴らしてやる為にも、兄弟と同じ殺し方して事故死に偽装してやろうぜ。そうすりゃソイツもちったぁ、アンタの兄弟の気持ちも分かんだろ。おっ、その目良いなぁ!今までで一番輝いてるぜ。まぁアンタと会ったのは今日が初めてだけど。
しかしそうと決まれば丁度アンタと似た境遇の、所謂何でも屋の奴がいるからソイツに頼んでおいてやるよ。俺が知ってる中でも安く仕事してくれる奴だ。しかし腕は確かだから期待して良いぞ。しかも後払い制。いやぁ、良心的だよなぁ。
ま、きっと一週間以内には結果が出てるだろうから、金の準備だけはしておいてくれ。
あれ、もう帰んのか?その様子じゃ本当に人殺し頼みに来ただけみたいだな。そんじゃ引き留めるのも野暮だな。
しっかし、やっぱりこんな場所に来ちまったんだ。アンタ、前みたいな普通の生活にはもう戻れないと思うぜ。しかも人殺しの依頼までしちまった。いくら憎い相手だからって多少なりとも罪悪感は一生抱えて生きていくんじゃねぇかな。
まぁ、此処はアンタみたいな奴らがごまんと来る。もし罪悪感に潰されて死にそうになったらいつでも来いよ。あ、勿論それ以外の用で来ても歓迎するぜ。
それじゃあ、またの来店待ってるぜ、同志。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます