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吉野コウ

母親の泣き叫ぶ声が聞こえる。

ママ、どこにいるの！

叫んでも叫んでもそこは暗闇のままだ。

手探りで前へ進む。一歩ずつ、一歩ずつ。両手を伸ばして、ゆっくりと。

ママ！ママ！

母はまだ啜り泣く。

泣かないでよ！

ママ！

ずっと探しているのに見つからない。

もう何百年も歩いているような気がする。

不意に家が恋しくなった。

でも、帰り方も今自分がどこにいるのかもわからない。

心細くなった。

母は見つからない。

今度は父親を呼んだ。

パパ！

助けて！

お願い！

その途端、聞いたことのないような恐ろしい声が聞こえた。

パパは死んだの！

私たちは捨てられた！

地獄の鬼のような低い声。

おどろおどろしく迫ってくる。

もつれる足を叱って逃げた。悲鳴を上げながら。

そうしてあたしは底知れない闇に放り出された。

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