何故か次期公爵様に溺愛されています

パッチ

第1話

悪役令嬢になりたい。

まともに生まれた人がそう思うのは私でもおかしいと思う。

でも、私ことリーシア・カーファンはまともじゃない。地球からの転生者だ。記憶を戻したのはついさっき、17歳の誕生日を迎えた瞬間だった。眠っていたらいきなり激しい頭痛に襲われ、膨大な前世での情報が一気に頭に入ってきた。

最初は何がなんだかよく分からなかった。でも次第にはっきりしてきた。私は前世で死んだ。

夢があった。それは自分の意思を強く持っていて周りに流されることのない強い女性、つまりは悪役令嬢みたいになること。

前世の私は人の言いなりにしかなれないような人だった。友達と思ってた人にはいつの間にかパシリにされ、恋人だと思ってた人には信じて疑わずに多額のお金を貸してしまい姿を眩まされた。

そして今世の私も同じような感じだ。お父様の言いなりになり、会ったことのない人と婚約させられてしまった。彼の名はルーク・サターシャ、このシャニア王国の公爵家の嫡男だ。私は伯爵家なので彼より身分が低い。当然、求婚を断れるはずもなく、そのまま話が進んだ。

なんで公爵家の嫡男ともあろう方がこんななんの取り柄もない私なんかに婚約を申し込んできたのかは置いといて、これ以上、誰かの言いなりになるのは嫌だ。

今世こそ私が思い描く悪役令嬢になってやる!!

そうと決まればまずは婚約破棄よね!


○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○


「今、なんと言った?」

「だから、私はルーク様と結婚は致しません。この婚約なかったことにしてください!」

お父様の顔がみるみる怖くなってきた。でもここで怖気付いたらダメだ。私は悪役令嬢になるって決めたんだから。

「何を言っておる!!そんなことできるわけないだろ!せっかくのチャンスを棒に振る気か!」

ビクッ、さすがお父様、迫力だけはあるんだから。でも知らない人と結婚なんて絶対しないんだから。

「いいえ、私はこんな愛のない結婚は嫌です。結婚とは愛し合っている者たちがするものでしょう。」

「愛だと?リーシア、今、愛がないと言ったか?なんで愛がないと決め付けてるんだ?お前はルーク殿とまともに話した事もないであろう。」

そんなものないに決まってる。会ったことも話したことも無いし!でもここでお父様と言い合うより直接ルーク様のところに行って話をつけた方が良さそうね。

「分かりました。それなら今から公爵邸に行って話をして参ります。ではこれで、失礼します。」

お辞儀をし、お父様の書斎を出て行った。


後ろからお父様がニヤニヤしてこちらを見ていたのも知らずに…。


○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○


ここが公爵邸…。想像してた倍以上の広さだった。

案内してもらった応接間で待っているけど、どうして公爵様はそんなに裕福でもない伯爵家の娘になんかと大事な跡取りの息子を結婚させようとしたのだろうという疑問ばかり浮かんでくる。公爵家のルーク様と言ったら令嬢達のお茶会に言ったら度々その名が出てくる有名人だ。金髪碧眼の王国一の美男子とか。剣の腕が凄くて何度も大会で優勝してるとか。あげ出したらキリが無いほどだ。

余計、疑問が溢れてくる。

とにかく私は婚約破棄するためにここに来た。何があっても自分を見失わないようにしなきゃ!

しばらソファーに座って待っているとコツコツコツコツと慌てた足音がし、乱雑に扉が開かれた。そこに姿を表したのはルーク様と思わしき人物だった。確かにものすごい美貌の持ち主だ。背も180はあるだろう。

ハァハァハァ

「お待たせしてすまない。ルーク・サターシャだ。なかなか挨拶に伺えなくてすまなかった。今日はどういった御用でこられた?」

相当急いで来てくれたようだ。頬が少し赤くなっている。

「初めまして、リーシア・カーファンです。貴方との婚約破棄を解消したく、こちらに伺いました。御無礼なのは承知の上でs「だめだ!!それは絶対にだめだ!」

私の言葉を遮るようにルーク様が言葉を被せてくる。

「何故です!ルーク様は公爵家の跡取りですよ?私なんかと結婚するのは相応しくないです!!」

「相応しいとか相応しくないとかはどうでもいいのだ!私はそなたとの結婚を望んでいる!!そなたじゃなければいけないのだ!」

ん?どういうこと?これは親同士が勝手に決めた婚約じゃないの⁇

「言ってることの意味が分かりません。私はこんな愛のない政略結婚は嫌と言いたいのです!ですからこの婚約、解消してください!」

 

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