まだ見ぬ幸せ

第26話 私が王太子妃に(男爵令嬢side)

　私は、ラン・フォン・イヤシキーヤ。イヤシキーヤ男爵家の令嬢だ。

　私と弟のキーンは、屋敷で軟禁状態で、屋敷から出ることを許されていないし、両親から殴られたり、蹴られたり、暴力を振るわれている。

　数ヵ月前から両親からの暴力が激しくなった。

　私たちに殴ったりしながら文句を言っていたが、属していた派閥のトップは沢山の不正や罪が判明して､処刑され、同じ派閥に属する貴族も皆、処罰され、派閥は解体し、父も何が悪いことをしいて、処罰され罰金を払う羽目になり、男爵家で余裕がそこまであるわけではないので、罰金を払ったことで、貴族としての暮らしに大きく影響し､そのストレスを発散するために私たちに暴力を振るう頻度が増えたみたいだ。

　今日もいつものように私たちは、両親に暴力を振るわれ、弟が痛い痛いと泣いていたので、痛みが引くわけではないが、弟が痛いと訴えているところにいつも通り、おまじないをかけた。

「痛いの痛いの飛んで行け～」

　痛みが引いたわけではないが、いつもこれで泣き止むのだ。

　だが､今日は違った。

　私の手が光り、弟が痛みを訴えた場所が光に包まれ、アザが消えたのだ。

「お姉ちゃん、痛くなくったよ。スゴいね。」

「「！！」」

　弟は、いつもと違い痛みがなくなったことで、私を凄いといい、両親は驚いている。

「ラン､一緒に来い。神殿に行くぞ。」

　我に返った父に言われ、神殿に連れていかれた。

「神殿長猊下、娘が癒しの力に目覚めたかもしれません。見ていただけませんでしょうか。」

「わかりました。アルト男爵。」

「名前は、何と言うのかね。」

「はい。ラン・フォン・イヤシキーヤと申します。神殿長猊下。」

「では、ラン嬢。この水晶に触れてみてくれるかな。」

「はい。」

　私が、神殿長猊下に言われ、水晶に触れると水晶が、目をあけていられない眩しく光った。

「間違いないようですね。ラン嬢は聖女です。」

「私は、国王陛下に報告のために城に向かいます。近いうちにアルト男爵とラン嬢には登城の命があると思います。」

「わかりました。神殿長猊下。」

　私たちは、神殿を後にし、屋敷に戻った。

「ラン､良くやったぞ。これで男爵家は巻き返せるぞ。」

「ラン､お前は王太子妃になれるぞ。」

「私が王太子妃に……」

　私は、王子と聖女が結ばれる物語が好きだった。

　だが男爵家の令嬢の私が王太子妃なれるのかとも思った。

「そうだ。お前は王子と聖女が結ばれる物語が好きだろう。隣国の帝国もそうだが、多くの国では、聖女は、王家に嫁ぐ。お前が好きな物語も実際にミュゼルバ王国であった事がもとになっているしな。」

　それからは、両親の私に対する態度が変わった。

　私が言ったこともあり、キーンにも暴力を振るわなくなった。

　そして、王城から使者が来て､父と私に、一週間後に登城するようにと言われた。