第21話 こんなはずでは(クライシス公爵side)

 私は、ソフィアに会うために王城に何度も行ったのだが、ソフィアは来ていないと言われるばかりで、追い返されてしまった。

 絶対にソフィアがラルフに会わせないためにソフィア自身が関わっていることを知られないようにと私たちに会わないに違いない。

 まあ、私たちは、ラルフがいなくなったのにソフィアが関わっていることには、気づいているのだかな。


「小賢しいやつめ」


「まったくだわ。」

「あなた、あの薬は、あるかしら、そろそろ少し欲しいのですけど」


「元気にはなるが、新薬で中毒性が高いらしい可能性があるかもしれないし、わかっていない部分も多いらしいから使いすぎには、気をつけろよ。それにこれは金儲けの為に知り合った帝国の貴族から買い付けているのだからな。」


「わかっているわよ。自分では、あまり使わないようにしているわ。仲のいい貴族家のご夫人方に少量分けてあげて、次からは、貴方から内密に買うように伝えているのですよ。私も儲けるために協力しているのです。」


「そうだったのか。最近、ご夫人の客が多くなってきたのは、そういう理由だったか。」


 公爵夫婦は、門番がいる前で、そんな話をしていた。

 そして、門番の一人がもう一人に門の見張りを任せて、王城内に駆け出していった。


「おい。あいつは、どうして急に城内に行ったんだ。」


「サイ公爵様、何やら報告があるからみたいであります。」


「そうか。」


 公爵は、ソフィアに報告に行ったのだと思ったが、実際は違う。

 公爵と夫人が自分達の目の前で、帝国からの新薬の話をしていたので、国王陛下に報告に向かったのである。


 城内に行った門番が戻ってきたが、ソフィアに報告に行ったわけではなくてなかったようなので、私は、王都の公爵家の屋敷に戻った。

 王都の屋敷の使用人どももいなくなっていたので、新しく募集もかけているが、まったくやってこない。

 なので、すべて自分達でやらなければならない。


「絶対に尻尾を掴んでやるからな。」


「そうですわね。」

「では、私は、儲けるために配っていない夫人たちにこの薬を配ってきますわ。」


「頼むぞ」


 それから数時間後、公爵家の屋敷に騎士と兵士がたくさんやってきた。


「何事だ。」


「サイ公爵、帝国と内通し、麻薬を王国の貴族たちにばらまき、王国を失墜させようとした罪により捕縛する。抵抗しないせず、素直に従え。」


「帝国と内通し、麻薬とはなんだ。私は、帝国の貴族から新薬を買って、売買しているが、麻薬など知らんぞ。」


「公爵、あなたが新薬だと思っているものが麻薬だ。」

「夫人の方も既に捕縛され、持っていた薬を調べ、麻薬に間違いないことも確認された。証拠があるのだ。大人しく、捕縛されよ。」


 こうして、剣を持ってないなかったし、持っていたとしても剣の腕がからっきしな私は、抵抗することなく、捕縛された。


「なぜ、こうなった。こんなはずでは、なかったのに」

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