第5話 納得できん(王太子side)


時間は遡り、真実の愛を知ったと一方的にソフィアと婚約破棄をしたマッカート王太子は、ソフィアが退室したあとすぐに、父である国王と母である王妃のもとへ報告に向かった。


「宰相、お前もいたのか。お前にも無関係ではないからな、まあいい。父上、母上、ご報告がございます。」


「何じゃ、もうしてみよ。宰相のドナルドにも関わりがあることとな。」


「はい。私は真実の愛を知ったため、クライシス公爵家の令嬢ソフィアとの婚約を破棄し、それを了承させました。」


「ななんじゃと!!」


「まあ、何てことを」


「……」


父上は驚き、母上は困った感じで、ドナルドは何も言わないが何か考えているようだ、三人とも共通していることは、怒りの表情をしている。


「何てことをしたんだ。この馬鹿者が」


「まったくです。あんないい娘を」


「……」


なぜ、ソフィアと婚約破棄した程度でこんなに怒っているのだ。

そういえば王家と公爵家の間で交わされた婚約だとかソフィアが言っていたな。

それなら問題はない。

なぜなら私に真実の愛を教えてくれたのはレベッカなのだから、公爵家との関係が悪くなることはない。

姉から妹にかわっただけなのだからな。


「それで、ソフィア嬢はどうしたのだ。」


「はい。婚約破棄すると言ったら、王家と公爵家とのなど色々とごちゃごちゃ言うので、お前は婚約破棄を了承すればいいんだと言ってやったら、諦めたのか了承したので、王城から出ていかせました。」


「「……」」


「国王陛下、よろしいでしょうか」


「何じゃ。宰相」


「私、至急やらねばなることがございますので、ご退室を許可して頂けますでしょうか。」


「よかろう」


「ありがとうございます。では国王陛下、王妃殿下、王太子殿下、私はこれで失礼します。」


父上から許可をもらい宰相が出ていった。

まあ、宰相に報告はする必要はないし、関係はあるが、たまたま居ただけだから居ても居なくても関係ないがな。


「それで、マッカートよ。話を続けろ。相手は誰だ。」


「はい。クライシス公爵家の令嬢で、ソフィアの妹のレベッカです。ですので公爵家との関係が悪くなることはないので問題ないかと。」


「確かに王家と公爵家との間で交わされた婚約であったが、ソフィア嬢と婚約破棄し、次女のレベッカ嬢と婚約するなら公爵家との関係は悪くはならないな……」


おお、やっぱり父上もわかってくれている。

ソフィアは色々言っていたが、問題ないではないか。


「だが、問題は大ありだ。馬鹿者が」


「そうですよ。ソフィアちゃんみたいに有能であなたを支えてくれていた娘と婚約破棄するなんて、更に見損ないました。」


父上はわかってくれたと思ったのだが、違ったようだ。なぜわかってくれないのだ。

母上も見損なったってなんだ。

それにソフィアが俺を支えてくれていただとかいつも口うるさく言ってきた だけで婚約者なのに触れさせることも許さないではないか。

それに比べレベッカは誉めてくれるし、俺が欲しいときにすぐに体を許してくれるし、レベッカの方が断然支えてくれている。

少し物をねだってくる癖はあるがそこも愛おしいではないか何でも与えたくなる。


「レベッカ嬢とのことは許さぬ。そしてお前は反省し、私たちがなぜ怒っているのか、レベッカ嬢とのことを許さないのか理解するまで自室で謹慎だ。謹慎が開けたらソフィア嬢に再度婚約を申し込んでこいいな。

もし反省がみられなかったり、ソフィア嬢から婚約を断られたり、また問題を起こしたら、廃嫡もあると思えよ。」


「なぜ、レベッカとのことを許してくれず、更に謹慎なのですか。ソフィアに婚約を申し込むなんて嫌です。あんな口うるさいうえに気がつくと私の仕事を終わらせていて自分の方が有能だと思っている女。」


「今すぐ廃嫡してもいいのだぞ。」


「私は王太子です。父上のあとを継ぐ次の国王ですよ。その私を廃嫡するのですか。」


「私たちの子供はお前だけではないからな。」


「マッカートよりレノンの方が執務もしっかり出来ますし、公務もやってくれてますから廃嫡して、レノンを王太子にした方がいいのではないかしら。」


「そうだな。しかし最後のチャンスくらい与えてやらんとな。」

「マッカート、自室で謹慎しておれ、わかったらさっさと行くがよい。」


何が最後のチャンスだ。

俺を廃嫡して、レノンを王太子にだと、次の国王は俺だ。

嫡子で今や王太子なのだから俺が国王になるに決まっているではないか。

すべて納得できん。これもすべてソフィアのせいだ。


国王からの言葉に返事をせず、全てソフィアのせいだと逆恨みしながら国王の命令なので、これ以上反論するわけにもいかず、仕方なく謹慎するために自室に向かうマッカートであった。

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