第2話 見つかりませんね
あんな家族と一緒に屋敷で生活するのが嫌になっていたので、ラルフは別ですけどね。
言われた通りに出てきたのだが、お金は十分あるけど、こんな時間だし、宿に空きあるかな。
「そんなことを考えていても仕方ないですわね。あるかないか考えるより、今夜寝れるところを探さなければ。」
今は冬である。
一晩だけとはいえ、野宿などすれば間違いなく凍死してしまう可能性が高いのだ。
今夜、安心して寝れる宿を見つけることは生死に関わるのだ。
「すみません。泊まりたいのですが、部屋に空きはありますでしょうか。」
「ソフィア様ではないてますか。申し訳ございませんが、当宿は、満室でして、部屋に空きはないのです。」
「しかし、ソフィア様がなぜ宿などお探しになられているのです。」
原因の王太子殿下は別としてもすべてを話して、王家にご迷惑がかかってしまっては、申し訳ないので、そこは伏せて説明することにしている。
「実は諸事情により、公爵家を追い出されてしまいまして、なので今夜泊まる宿を探しているのです。」
「何だって!! ソフィア様を追い出すなんて、何考えているんだ領主。」
「私たちが安心して暮らせているのも、領主たち家族が公爵家らしい、いい暮らしができているのもソフィア様のお力だというのに、自分の領地経営のおかげだと勘違いしているのかね。」
「ああ、申し訳ございません。一応、ソフィア様の父親である領主を悪く言ってしまって」
「いいのですよ。家族には冷遇されてきましたし、あれを父だとも思っておりませんし、それにもう私は公爵家の人間ではないですからね。」
「なので、これからは様づけせずにソフィアと呼んでくださいね。」
宿の店主も私に気を遣ったのか、領主である父だった人の事を悪く言ったこと謝ってくれましたが、一応とつけちゃってますし、まあ私も父だと思ってないので、気にしませんけどね。
領主は領民からの評判がよろしくないのです。
何か問題が起きても自分たちでなんとかしろって言うだけの人ですからね。
なのになぜ領民から暴動が起きないかというと裏で問題を解決できるように私が手助けしたり、説得したりしているからなのです。
「それはできません。ソフィア様が公爵家の人間でなくなっても、今までソフィア様に助けて頂いたことなどにはかわりわないのですから感謝の意味でもこれからもソフィア様と呼ばせていただきます。」
「わかりました。これまでに何件か宿に行ったのですが、みなさんそう言って頂けるので嬉しく思いますわ。公爵家の人間でなくなったのに様づけは困ってしまうのですが、みなさんの気持ちを優先いたしますわ。」
「それでは、失礼しますね。」
私はまた宿を探すためにその場を離れた。
どうしましょうかね。
ここもダメでしたか。
数件まわったけど、 すべて満室で見つかりませんわね。
お祭りが近いので、人が集まってきているので、仕方ないですけどね。
困ったわね……。
一台の豪華な馬車が私の前で停まった。
あの馬車にある家紋は確か……
ノイヌーヴォ侯爵家の家紋ですわね。
ということは、ドナルド叔父様かしらね。
でも何でうちの領地に来られたのかしら、父だった人と叔父様は仲が悪く、父だった人が公爵家を継ぎ、叔父様が跡取りの居なかった母方の侯爵家を継ぐことになってクライシス領を出てから一度も来られたことないのに、それに宰相で国王様の補佐をされているのでお忙しいはずなのですが……
そんなことを考えていると馬車から一人の男性が降りてきてこう言った。
「久しぶりだね。ソフィア。」
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