朝、幼馴染と一緒に登校
「……んっ」
朝、起きるとやけに体が重かった。疲れが溜まりすぎて爆睡してしまったからか? うーん……一体なんで……あ、そうだ! ゆ、ユキは……。
「おはよ、ヒロくん」
「あ、ユキ……おはよ」
どうやらユキは先に起きていたようで、すでに制服に着替えて俺におはようと言ってくれた。あれ、もしかしてもう登校するような時間か?
「ゆ、ユキ。今何時?」
「まだ七時前だよ。ヒロくん、今日は朝練があるの?」
「う、うん。ああよかった……まだ間に合うな」
てっきりもうユキが制服に着替えていたから七時過ぎてるのかと思ったけど、そうじゃなくてよかった。あれ、だとしたらユキ相当早い時間に起きたってこと?
「ヒロくん、もう朝ごはんできてるから一緒に食べよ」
「ほんと? もしかしてユキが作ってくれたの?」
「……う、うん。ヒロくんの家に泊めてもらったら……それぐらいしないと思って」
な、なんてできた幼馴染なんだ。朝ごはんを作っててくれるなんて……俺は幸せ者だな。というわけで、俺は急いで支度を済ませて朝ごはんを食べる。メニューは卵焼きにお味噌汁に白米。鉄板だ。
「美味しいよユキ。さすがだね」
「……ふふっ。ヒロくんが喜んでくれて……私も嬉しいよ」
「できたらゆっくり食べたかったなぁ……。さて、そろそろ行かないと」
「ね、ねぇヒロくん。……今日、私も一緒に登校していい?」
「え? 俺はいいけど……ユキ、時間余るかもよ」
「だ、大丈夫。ヒロくんの練習……見てるから」
……まぁ、別に家が近いからたまたま一緒に登校したって言えばごまかせるか。ユキも行きたそうだし、断るのは悪いしな。
「じゃあ一緒に行こうか」
「う、うん!」
そんなわけで、俺とユキは高校で初めて一緒に登校することになった。中学一年まではたまに一緒に登校していたけど、もうそれも昔の話。なんだか少し、ドキドキしてしまう。
「……ふふっ。こうして一緒に学校行くの……久しぶりで……楽しいね」
ユキはニコッと笑いながら俺にそう言う。ユキがそう思ってくれることが俺はなんだか嬉しくて、またドキッとしてしまう。……これはきっと練習頑張れそうだ。
「昨日、ヒロくん……ほんとに気持ち良さそうだったよ」
「え? そんなに爆睡してた? はぁ……ユキに恥ずかしいところ見られたな」
「ううん、恥ずかしくなんてないよ。ヒロくんは、いつだって素敵だから」
「え……」
ユキは頰を赤らめながら俺を褒めてくれた。まさかこんなことを言ってくれるなんて思ってなかったから……。でも、寝てる姿がそんなに気に入ったのかユキ?
「そ、そんなこと言ったらユキだって料理すごく美味かったし、素敵な人だろ」
つい俺はユキのことを褒め返す。……いやでも実際ユキは素敵だと……俺は思うから。
「……ううん、そんなことないよ。私は……ヒロくんの隣に立つ資格なんて、本当はないから」
「い、いや……そんなこと」
だけど、ユキは予想以上にマイナスな返答をした。一体どうしてそんなことを言うのか俺にはわからなかったけど……ユキは、何かしら自信を持てないことがあるのかもしれない。だから、俺はろくに返せない。
「……ご、ごめんねヒロくん。変なこと言っちゃって。今のは……気にしないで」
「……わ、わかった」
ユキが気にしないでいいと言ったので、俺は気にしないことにした。……きっと、俺が考えたところで何も解決できないだろうから。
「でも……ヒロくんがすごいと思ってるのは本当だよ。だから……ヒロくんは、今のままで……いてほしいな」
「そ、そう? ……ユキがそう言うなら、そうするよ」
別に俺は変わる気は無いし、ユキがそう言うならなおさらだ。だけど……なんか今日のユキ、妙に不思議なことを言う。ただその真意を聞こうにも、俺はそれを聞く度胸がないのだけど……。
「じゃ、じゃあヒロくん……部活頑張ってね。教室から、練習見てるよ」
「ああ。じゃ、またねユキ」
そして学校に着くと、俺は部活に、ユキは教室に向かう。それから俺は朝練を始めたわけだが……なんだ? なんか後ろを向くとこそこそと俺のこと言われてる気がする。
「なぁ浩一。なんか俺の顔についてる?」
「え!? え、えっとなー……そ、そのなー……べ、別に!」
浩一に聞いてみてもなんだかはぐらかされたし。変なものがついてるのかな、あとで鏡みてみるか。
それから朝練が終わると、俺は鏡を見に外にあるトイレまで向かう。その途中。
「ひ……宏樹!」
紫に、呼び止められた。何やら動揺した様子で、何かあったのかと俺は身構えた。だけど……紫の次の言葉は、俺の想像していなかったもので……。
「ど、どうして……首のあたりに……キスマーク、ついてるの……?」
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