家でキスするしか……


 「……何なんだよまじで」


 今日は朝練がなかったので、普通に登校して下駄箱を開けると、また写真を入れられていた。場所を変えてから二日後のことで、幾ら何でも早すぎる。どうやって場所を特定したんだ? 俺たちの後を誰かがつけていたってことだよな? ……で、でも……そんな気配はなかったし……。


 「……何か手を打たないと」


 このまままた場所を変えたところで同じことが起こりかねない。何か対策を練らないとどうしようもないが……かと言って、何ができるんだろう。


 「……ヒロくん? どうしたの? 今日も焦ってるみたいだけど……」


 下駄箱から移動して、教室でうなだれている俺を見たユキは、心配そうに声をかけてくれた。


 「え!? い、いや……た、大したことじゃないよ」


 ユキに伝えた方がいいか悩んだけど、やはり余計な不安を感じさせたくないし、自分のせいだと思って約束をやめて学校に来なくなってしまうのが、一番最悪だから。俺は今日も誤魔化した。


 「そ、そうなの? ……な、何か悩みがあったら……私聞くよ? ヒロくんの……助けになりたいから」


 「あ、ありがとなユキ。でも大丈夫。……そ、そうだユキ。今日は放課後俺の家で……約束をしないか?」


 「……え? ……したい! ひ、ヒロくんがよければ……したいな」


 学校でするわけには行かなかったため、その代案で俺の家に誘う。ユキの家は前に断られてしまったから。するとユキは想像以上に食いついた反応を見せる。そんなに俺の家でしたかったのか……?


 「も、もちろん。部活終わった後になるけど」


 「いいよ……。ふふっ、久しぶりだね、ヒロくんから私をお家に誘ってくれるなんて……」


 嬉しそうにクスッとユキは笑ってそういう。ああなるほど、俺が家に誘ったのは確かに久しぶりだったし……前に俺の家でユキとキスした時は、ユキからの提案だったから。


 「私……楽しみにしてる」


 「う、うん。じゃあ待ち合わせは……」


 「……じゃ、じゃあ……図書室で待ってるね」


 「オッケー」


 話はまとまり、俺はユキと部活終わりに図書室で待ち合わせすることになった。……まぁ、別に誰かに帰るところ見られても家が近くだからって言えるしめんどくさいことにはならないだろう。


 「おはよ宏樹、浜地さん。なんか話盛り上がってたけど、なんの話してたの?」


 紫がやってきて、興味津々に俺たちの話を聞きたがる。ここはテキトーに誤魔化しておくかと思ったら……。


 「林原さんには……内緒の話……だよ」


 ユキはニコッと笑って紫にそう言った。


 それから……放課後になると、俺は写真を撮られた場所に行って痕跡を探る。だけどもうカメラは回収されていたのか、何も残ってなかった。……行動が早すぎる。……人気のないところだから聞き込みなんて無意味だし。


 となると……俺が下駄箱にカメラを設置して犯人を見つけるしかない。でもあんな狭いところに隠す場所なんてあるのか? ……ちょっと手が無いか調べて見るか。


 捜査の方向性を決めた後、俺は部活に行き練習をする。なんだか、普通。とことん普通なんだよな……こうして学校生活を送ってて、人間関係が変わった気配はないし。あんなことをする人がいれば、多少はボロが出てもおかしくないと思うんだけど。 


 ……なんだか、人間不信になるなこれ。早く解決しないと。


 そして部活が終わると、俺はユキの待つ図書室に行って、一緒に帰った。


 「……ヒロくん……お疲れ様」


 「ありがと。ユキも待っててくれてありがとう」


 「これぐらい……大したことないよ。……じゃあ、行こっか」


 一緒に帰る途中も、何事もなく帰れた。ちょっと遠回りになるけど人気のない道を歩いて行ったことで知り合いにも会わなかったし。……一応何度か振り返って誰かに付けられてないかも見たけど、誰もいなかった。


 「お、お邪魔します……」


 家に着くと、ユキは俺の両親に挨拶をしてご飯も一緒に食べることになった。俺はその前にキスをしておこうと思ったけど……ユキが料理の手伝いをすることになったので、俺は先に風呂に入った。


 「……まぁ、昔は一緒に夜ご飯も食べてたからな」


 家族ぐるみの付き合いだったから、そんなことも昔は多々あった。俺たちが年をとるごとにそれは無くなっていったけど。両親はまたユキと一緒にご飯食べたかったんだろうな。


 そして風呂から出て、しばらくするとご飯ができた。そして俺の家族とユキは一緒にご飯を食べて、両親がユキにあれこれ質問していた。全く……喋りすぎたろ。


 でもユキは楽しそうにしていたからいっか。


 「ごちそうさま」


 「ご、ごちそうさまでした」


 ご飯を食べ終わると、俺とユキは後片付けを手伝って……それから、こっそり一緒に俺の部屋に行って……。


 「んんっ……ちゅ、ちゅ、ちゅぅ、んむっ……ヒロくん……んんっ……ちゅ、ちゅ、んんっ……んむっ」


 今日の分のキスをした。いつもよりだいぶ遅くなってしまったから、ユキは待ち遠しかったのかもしれない。強く唇を重ねて、キスをしてくる。


 「ちゅぅ……ヒロくん……んんっ……ちゅ、ちゅ、んむっ……んっ、れろれろっ……気持ち……いい?」


 「……うん」


 「……じゃあ……もっと……するね……れろれろっ……んちゅっ……んむっ、ちゅ……んんっ、んっ……」


 本当に、キスが上手くなったよな……ユキ。本当に、キスをしてる時に何も考えられなくなるぐらい、気持ちいい。だけど……俺がハマるわけにはいかない。約束に過ぎないんだから、俺たちは、付き合ってないんだから……。


 「んんっ……ちゅぅぅぅぅ……ぷはっ…………はぁ……ねぇヒロくん……」


 「……はぁ……はぁ……な、なに?」


 ふと突然、ユキはキスをやめて俺に何か言おうとする。それは……


 「私……今日……家に……帰りたく……ない。ヒロくんと……一晩中一緒に……いたい」


 ユキは俺の腕を掴んで、訴えかける目をしながら俺に……そう言った。


  ――――――――――――


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