山に愛された姫 ~都市での生活はうまくいかないけど~

水咲 ちひろ 様作


【あらすじ引用】

芹菜(せりな)は大学卒業後、就職するも1年で退職し、実家に戻って来ていた。

将来が見えずに引きこもっていると、ふとテレビで流れた田舎の風景に強く心を惹かれ、その地を訪れることにする。

社会にうまく馴染めない23歳の女性が、その地でどのような出来事に遭遇するのか……?!


サバンナの王者「ライオン」も海では、海の覇者「サメ」もサバンナでは、何もなすすべはない。人間の世界に上手く馴染めなかった芹菜が、木の国ではどのように生きて行くのか……


【物語は】

主人公が実家で、植物の世話をするところから始まる。人と深くかかわるのが苦手で、就職先を退職してしまった彼女。人と接するのは苦手な人も多いが、彼女はそれだけではなく少し変わった子供だったようだ。回想にて、その不思議な思い出の一部が語られていく。


【主人公の想い】

主人公の性質をどう捉えるかで、彼女への感じ方や考え方が変わって来ると思われる。仕事がしたくても、人間関係が元で続けることが出来ない。働かなければ、と思いながらも先のことを考えてしまい、それに向かってポジティブに考え行動することが出来ないとしたら?

そして理解者がいなかったならばどうだろうか。


親であっても話すことが出来ないのだろうと感じた。いや、親だからこそ言えない可能性もある。主人公の心境は複雑だと思う。


彼女は自分が他の人と違っていても、”普通”を生きようとしていた。そして”普通”の人生を歩めると信じていたのではないだろうか?


【主人公に訪れた転機】

主人公はテレビで放映されている、ある旅番組で映し出された田舎の風景に心惹かれる。思い立ったが吉日と言わんばかりに、主人公は2泊3日の宿泊の準備をすると現地へ旅立ったのだ。

なかなか、先の人生を決められなかった主人公のこの行動は、この地にどれだけ惹かれたのか分かりやすい部分である。


【予感・非日常へ】

主人公には、1年に1、2度見る夢があった。それを目的地への移動の最中に見ている。この夢がどう繋がっているのかは、この場面ではわからないが、このタイミングで見るというのには、何か意味がありそうだ。


主人公は心惹かれるまま、目的地を目指す。そこで彼女が目にしたのは、いままで見たことのないものだった。

(ネタバレになるので詳しくは書けないが)


【世界観・物語】

目的地に着くと、その土地について語られていく。歴史や山に愛された姫とはどんな存在なのかを。


この物語は、単に人間の世界に順応できなかった主人公が、他の土地で生きるというような話しではない。自然に触れ合うことにこそ意味を持つ。何が出来るようになるのか、詳しく話すことは出来ないが、それが出来るようになることで、彼女にある役割というものが出来ていく。

これがこの後、どう彼女の人生に作用していくのかは、先まで読まないと分からない。しかし、心惹かれた場所に行ったことによって、彼女は少しづつ変わり始めているように感じた。


この物語は、詳しく話すとネタバレにあたる部分が多い為、抽象的に書くことしかできないことが難点である。


【物語のみどころ】

主人公は、人間の世界(社会)に馴染むことが出来ず、就職からたった1年で会社を辞めてしまう。しかし、そうなるまで”普通”の幸せが自分にも訪れると信じていた。子供の時から、変わっていると言われていても。


そんな彼女が心惹かれたのは”たまたまテレビで観た田舎の風景”。しかし、予感はあったのだ。夢というものの中に。

それでも、この土地自体に繋がりを持たない彼女が現地で、ある者たちと出逢う。この出会いが、彼女を少しづつ変えていくことになる。彼女にとって生き辛かったコンクリートの世界から、自然界へ。


そして、この土地で役割を見いだしていくのではないかと感じた。


あなたもお手に取られてみませんか?

人によっては、彼女の悩みに共感を持てるかたもおられると思います。彼女が、一体この先どんな人生を選択していくのか?

ぜひ、その目で確かめてみてくださいね。お奨めです。

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