トンネルの向こうの白い巨人

鈴木 桜 様作


【あらすじ引用】

2020年7月27日、通学途中のトンネルをくぐった先は、47年後の未来だった。

未来の世界では次々と襲いかかってくる白い巨人に街を蹂躙され、人間は地下に追いやられて暮らしていた。

そして、対白色巨大生命体特殊攻撃隊──通称『対白』──が陸上自衛隊内に組織され、『特殊隊員』と呼ばれる強靭な肉体を持つ人々が『対白兵器』を駆使して白い巨人から人々を守っていた。

タイムスリップを経た少女は『何故か』驚異的な身体能力と回復能力を手に入れてしまい、この果てなき戦いに巻き込まれていく。

幼馴染みで初恋の彼の息子、同じ境遇の仲間たち、守るべき人々……様々な出会いと別れが指し示す過酷な道の先に、17歳の少女が見出すものとは──。


【物語は】

主人公が学校に向かう途中、あるトンネルをくぐることで状況は一変する。あったはずのトンネルの先。しかしそこは主人公にとって、見慣れない場所だった。日常から非日常へ。望んでなどいなかったのに、彼女はとんでもないことに巻き込まれていくのだ。


【物語の魅力】

知らず知らずのうちに、未来へタイムスリップしてしまった主人公。そこで、見たこともないものに遭遇。逃げようとすも、逃げることが出来なかった。それならばと、自分が友人にかけた言葉を思い出し立ち向かう。

一方その頃、彼女の辿り着いた先では通称『対白』が動いていた。白い巨人と戦うために。未来では、主人公のことは何かを通して知られているようである。その事については作中で詳しく語られていく。


ここで面白いと思ったのは”神隠し”という、モチーフの扱い方である。未来へいくという設定にする時、人はタイムマシーンを思い浮かべるのではないだろうか。その中でいなくなった人(タイムスリップした人)について触れる、というのはあまり見たことが無いように思う。

何故ならそれらは大抵、主人公の視点で物語が作られているからだ。そして戻ることが前提なこともある。その為、主人公がいない間に周りが何を思い、どんな行動するかを描くことが前提であること。もしくは、それこそが目的でなければ、周りの状況には触れないという事になる。

だからこそこの作品には独創性を感じ、面白い舞台設定、世界観だなと感じた。


【登場人物の魅力】

主人公は一瞬で未来へ。しかし、その間も世界は時を刻み続ける。

主人公である少女は、雨に憂鬱を感じたり、休み明けに気分が落ち込むなど、ごく普通の女子高生である。自分の暮らしている街に愛着を持ち、不気味なトンネルに恐怖を感じる様な。

そんな少女が、突然未来にタイムスリップしてしまったなら?

現実を受け入れられないのは当たり前であるし、もちろん不安を感じるだろう。


47年後の未来では、人々が淡々としているように感じる。それは、いつ命を失うか分からない”現実”と、向き合い続けているせいではないかと思った。日々、命に危機を感じ緊張し続ければ、笑っている場合ではないし、感情的になっている場合でもない。生きること、身を守ることが最優先事項となるはずである。状況が変われば、人の生き方考え方、感情の表し方も変わるという点で、この物語はリアリティを持たせていると感じる。


【物語のみどころ】

もしあなたがある日当然、神隠しに合い未来に飛ばされてしまったなら?

そして、有無を言わさず人類の為に戦わなければならなかったら。

その現実を、あなたは受け入れることが出来るだろうか?


この物語の主人公は、まだ17歳。

人生経験豊富な大人ではない。それなのにも関わらず、望まずして戦いに身を置くこととなるのだ。仮に戦って、世が平和になったとしても、元の時代に戻れる保証もない。たった一人で未来に来てしまった少女は、大人の勝手で使命を背負わされることとなる。


果たして彼女は、この世界に希望を見いだす光となるのだろうか?

しかし、彼女自身は幸せを掴むことは出来るのか?

全く先が想像のつかない物語である。

行きつく先は、光なのか闇なのか?


この物語の顛末を、その目で確かめてみませんか?

是非お手に取られてみてくださいね。

お奨めです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る