いつか荒野のガオケレナ ~されど薬師はカルテをつづる~

ヨドミバチ 様作


【あらすじ引用】

旅する薬師(くすし)の少女・ハナが出会ったのは、亜人・オルク(オーク)の血を引く大男。


大男が求めたのは、この世でただ一人の姉を救える秘薬だった。


その巨躯と剛腕により、どんな障害も打ち砕き。

いかなる犠牲もいとわず。あらゆる対価も惜しまず。


たとえ誰かの大切なものを壊しても。かけがえのないものを奪っても。

二度と戻らないものを屠(ほふ)っても――


ただ喰らい摘み取るだけのその怪物を、“診極める”者などいなかった。

だからこれは〝彼女〟にしか書けない診療録(カルテ)。


【物語は】

終りの部分から始まる。とてもドラマチックに。主人公のハナは、去り行く人物の姿を見送りながら、自分の無力さに言葉を漏らす。しかし、それでも想いは変わらない。もしかしたら、タイトルの”されど”はここにもかかっているのかも知れないのではないだろうかと感じた。

自分の無力さを改めて知ったとしても、”されど”カルテを綴り続けるのだと。本編に入ると、ある人物との出会いについて描かれている。ある物を渡されて”精製”依頼され、彼女は思案に耽ることとなる。何故ならば、その依頼は聞き間違いではないかと疑うほど、変わっていたからだ。真意を確かめようと相手を観察したり、思考に耽るさまが実に丁寧に描かれており、視線の動きが分かりやすく、まるで自分が主人公(ハナ)の視線で見ているような気持ちになる。ここでは、主人公がどんなところで薬師をしているのか、なども描かれており、それを対照として相手の風貌などが描かれているので、実に想像しやすい。主人公は聞き間違いではないかと思う事柄について、どう対応したらよいのか迷い焦るところを、読者は固唾を呑んで見守る状況となる。


【登場人物の魅力】

主人公の心情が丁寧に描かれているので、焦る様、困る様子が手に取るようにわかる。また、緊迫感の中にコミカルさもある。それは彼女の想像力によるものだ。

読者も『確かにこんな時は、悪いことばかりが浮かんでしまう』と思ったり、クスッと笑ってしまったり。また、一緒に焦ったりしてしまうこともあるだろうと想像する。

少し話が進むと彼女の師匠が登場するが、この物語は”対照”を上手く取り入れることにより、人物を際立たせている。とても巧い書き方であり、表現方法だと感じた。例えば、主人公が大きいものが苦手であれば、大きいものが好きな人が出てくる。その反応の違いなどにより、性格などが見えてくるのである。


【作品独自の拘り】

*ノベプラ版、なろう版をザッと確認。

この物語には前回のあらすじや、図解などもついており、より読者が楽しめるような工夫がなされている。文体での表現や描写も丁寧で想像しやすいが、読者との想像の違いを修正や補足という意味でも、とても拘りや気遣いを感じ、読者への愛や作品愛を感じる。


【物語の魅力】

全体的に丁寧な描写で分かりやすく描かれており、それに加えてイラストなども添えてあるので、じっくりと読む作品という印象。なろう版とノベプラ版では若干違う部分があるので、軽く見比べて自分の好みの方をチョイスするという楽しみもある。

「第一章・第三節(なろう版では第一章・第二節)」では、薬師たちの里について描かれている。世界観について詳しく分かるのもこのあたりから。読み進める中で、主人公の志、次いで主人公の人となり、そして彼女をよく知る師匠、次いで里について。このように、一気に分かるのではなく、読者がついて行きやすいように段々と分かっていくというスタイルも魅力の一つではないだろうか。世界観の中で分かって行くのは、里の薬師について。この物語では、どんな小さなことも読者に分かりやすく伝えようという配慮がなされているように感じた。例えば、あらすじのページにしても、どんな物語であるのか。また、作品紹介なども書かれており、より読者が理解しやすく、見どころなどが分かりやすいのではないだろうかと感じた。


【作品の見どころ】

これについては、作品紹介に詳しく書かれています。ここから一部解説させていただくと”真面目だけが取り柄の薬師である少女が、誇りと使命感を持ち理不尽さなども感じながら、それでも立ち向かい成長していく物語”である。彼女の成長や立ち向かっていく姿が一番の見どころ。それをより魅力的な物語とするために、作者は細部まで拘り読者に伝えたい、届けたいという想いで描かれた物語であると感じました。


あなたは、この物語を読んで何を思いますか?

どんな想いを抱きますか?

主人公や患者を通し、作者の熱い想いを感じて欲しい作品です。

是非お手に取られてみませんか?おススメです。

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