ダイヤモンドのマジカルジュエル

第16話 ダークネス団のスパイ

 ダークネス団アジトに併設へいせつするカフェでは、アルファとダークミラージュが何かを話している。

「ねえ、聞いて」

「何よ?」

「もうすぐ新曲が出されるの」

「本当に!?」

アルファは、ダークミラージュが新曲を出すことに驚く。それも、「Time Romance」から早いスパンでの発売に。

 しかし、

「前回はマイナーコードの曲だったから、今回はメジャーコードの曲になっているわ。新たな自分を見せたいんだもの」

「すごいですわ!」

「じゃあ、期待して」

「そのことを後輩こうはいたちにも伝えますわ!」

と驚いたアルファ。どうやら近頃のダークネス団では、メンバーたちの話題がそれに持ち切りとなっているようだ。

 ある日の放課後、晴斗はプラチナの家を訪問する。

「やあ、よく来たね」

「ああ、王子さま。今日は、ダークミラージュをはじめとするダークネス団のことを聞きにきた」

「じゃあ、こっちに座ろうか」

「お茶でもいただこう」

晴斗とプラチナは、リビングの椅子いすに座る。


 「実は、ポートフロンティア学園の教職員の中に、ダークネス団のスパイだと思われる人がまぎれていて…」

「これはもしかして」

「驚かないでほしい。ぼくが学校関係者に極秘で入手したものを聞いていただけたら」

晴斗は、その証拠しょうこであるボイスレコーダーをテーブルの上に置く。それを再生すると、

「はい、もしもし」

「もしもし、ダークネス団最高責任者のドクターだ」

「ポートフロンティア学園中等部に勤務している西野と申しますが…。おいそがしいところ恐縮きょうしゅくですが、お電話をいただきありがとうございます」

「こちらこそ。ところで、あの作戦は順調に進んでいるのか?」

「それが…」

「それがどうした?」

「まだ何も行っていません」

「何だと!?」

「今からやるつもりです」

「今からではもうおそい。その事業については、地下ちか倉庫課そうこかが代行する」

「分かりました。では、失礼します」

「次はしっかりしてくれ。私も失礼する」

と、夜の一年一組の教室で西野先生がドクターと電話しているところを聞こえてきた。

「ダークネス団のスパイは、西野先生であることにちがいない」

「そうだ。さらなる証拠がある」

晴斗はプラチナに、正面玄関の防犯カメラの映像を見せる。これは、晴斗がダークネス団のスパイが誰なのかをき止めるために利用したいと申し出て、校長先生と理事長の許可きょかを得て入手したという。

 それは、ある朝のこと。

「朝礼が終わった後の正面玄関だ」

「次々と先生の姿が映っている」

職員室での朝礼が終わると、先生たちは正面玄関を通りかかる。

「ここに注目して」

「あ!」

すると、西野先生は一年一組とは別の方向に向かっていたのだ。

「校長先生と理事長はともに出張のため外出中、教頭先生と教諭きょうゆ、学年主任、学年担任は職員室に残り、クラス担任は教室へと向かっていった」

晴斗が当時の状況を説明すると、

「西野先生は一階の多目的トイレに向かっていました」

と明かした。さらに、

「西野先生は、休み時間に中庭で禁止されているはずのたばこを吸っていた。それを受けて学校関係者全員に持ち物検査を行ったが、不審物ふしんぶつは見つからなかった」

と、晴斗はこんなことまで暴露ばくろした。

「ポートフロンティア学園における学校運営のガイドラインを守っていない先生がいる。それは、一年一組の西野先生だ」

「ガイドライン違反いはんは、受け入れがたいことだ」

ポートフロンティア学園では、創立当時から多くの生徒たちにより良い教育環境を与え続けていくためのガイドラインを制定している。このおかげで、教育関係者からみたポートフロンティア学園の評価が高いことを維持しているという。西野先生がガイドラインを守っていなかったことを告発した晴斗の言葉に、プラチナも告発した。

 それから数分後、晴斗とプラチナは風呂に入る。

「僕と二人きりは初めてなのか?」

「ああ、もちろんだ。つぼみたちと一緒の機会が多かったからね」

「そういえば、つぼみのことは好きか?」

「大好きだ。世界中の誰よりも」

と答え、晴斗はシャワーを浴びる。

 「本当に大好きだ、子供のころから…」

青みがかった黒髪くろかみに、しっかりときたえ抜かれた細身の体型の持ち主である晴斗。そんなかれの美しい姿に、

「なんて素晴らしい体なんだ、晴斗は…」

とプラチナはそう感じた。


 風呂から上がると、晴斗はパソコンを起動して、インターネットの動画サイトを開く。

「また新たな動画がアップロードされている!」

「ティザー映像からのミュージックビデオか…」

またしても、ダークネス団の公式チャンネルに新たな投稿が。それは、ダークミラージュの新曲のミュージックビデオだった。

「きっと誰かが救いの手を」

「差し伸べてくれるのなら」

わたしは構わないわ」

「街に灯るネオンの光」

「もう見飽みあきちゃったの」

「そう 私はもう」

「見慣れた私ではない」

「生まれ変わるのだから」

「今」

「探しているの ほしいもの」

「時をえて 空を超えて」

「まだ見たことない宝石ほうせき

「それが黒いダイヤモンド」

「出口のないトンネル」

「答えのない質問」

「今の世界はわからないものばかり」

「そう 私はもう」

「誰にもたよらない」

「何も怖くないのだから」

「見つけたい つかみたい」

「大地をかけ 大空をかけ」

「私が勝ち取るから」

「それが黒いダイヤモンド」

「見つけたい つかみたい」

「時を超えて 空を超えて」

「夢がかなう宝石」

「それが黒いダイヤモンド」

腹部を露出ろしゅつした黒いセクシー衣装いしょうを身にまとい、それと同じ色のピンヒールをいているダークミラージュが新曲を歌っている。

「晴斗、この少女に何か心当たりはあるのか?」

「ああ、それと似た少女を見たことがある」

紫色むらさきいろの髪に黒いリボンをつけているらんと、藤色ふじいろの髪に青いバラを付けているダークミラージュ。しかも、ひとみの色まで髪の色と同一である。彼女は同一人物であること、つまり二重人格を持っていることを晴斗が明らかにした。

「ダークミラージュやダイヤモンドのマジカルジュエルのことについて、ダークネス団のスパイである西野先生が関与していることに違いはない!」

「もうすぐダークミラージュとの決戦が待ち受けている。今回の戦いは、プリンセスドールズにとって大事な出来事になるかもしれない。しかし、彼女たちはそれを乗りえられると信じている。これまでに、いくつもの『かがやき』を守ってきたのだから…」

晴斗とプラチナは、プリンセスドールズにダークミラージュとの戦いに勝利することを求めている。


 その後、

「空に青い生き物がいる」

「あれが気になっているのかな?」

「うん」

しおりが入院している横中総合病院の空に、チララが飛んでいた。

「プラチナの家に急がなきゃ!」

チララは、プラチナの家に急行する。

 それから、チララとプラチナは、プラチナの家で何かを話していた。

「いいか、よく聞いて」

「ちゅっぴー?」

「もうすぐ新たなプリンセスジュエルの妖精ようせいが未来からやってくる。それが、星と月のドールプリンセスに関係している可能性が高いこともわすれてはならない」

「何だと!?」

 どうやら、未来にいるプリンセスジュエルの妖精がいることをプラチナは語った。

「そのことを、プリンセスドールズに伝えなくちゃ!」

チララは、危機感をつのらせた。

 「聞こえますか、ドールプリンセス…。私の声が届いていますか…」

その日の夜、つぼみたちの夢の中に光の女神が現れた。

「ダークミラージュというドールプリンセスを知っていますか…。それは、ダークネス団というやみの力を持っている組織が生み出したドールプリンセスです。ダイヤモンドのマジカルジュエルを取りもどすためには、ダークミラージュに勝利しなければなりません…」

それは、プリンセスドールズへのメッセージだった。

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