第17話 素顔のダークミラージュ

 近頃の横中では、学生たちの深夜しんや徘徊はいかいが相次いでいる。特に、中学生が多いという。

「おい、待ちなさい!」

これには、警察や学校への報告も後を絶たない。そんな中、らんは閉園時間を過ぎた横中スカイワールドにいた。

「プリンセスジュエル、セット!プリンセス・ドレスアップ!」

黒い光が蘭を包み込む。

やみのプリンセス・ダークミラージュ、見参!プリンセスステージ、レッツスタート!」

ダークミラージュが現れると、

「スイッチ・スタート」

と言い出して、じゅうの生成に取りかる。

「もし時間を干渉かんしょうできるのなら」

「過去と未来 どっちがいい?」

「もし時間を止められるのなら」

「どんな瞬間しゅんかんにしたい?」

わたしは未来からやってきたの」

「現在には存在しない」

「Time Machine に乗って」

「二人でどこかに行こう」

「誰にも秘密にするから」

「Time Limit なんてないから」

「私の辞書には」

「自由にすればいい」

「Endless Time」

すると、その歌声で、黒いうさぎをイメージした月の魔獣が海の見える丘に現れた。

「大変だ!あやしい予感がする!」

チララの声をたよりに、つぼみたちは海の見える丘へと急行した。

「さあ、変身よ」

「うん」

つぼみ、沙奈さな、アリスはプリンセスミラーでドールプリンセスに変身する。

「プリンセスジュエル、セット!プリンセス・ドレスアップ!」

あいのプリンセス・ラブリーピンク、見参!」

「水と氷のプリンセス・アクアブルー、見参!」

「花のプリンセス・シトラスイエロー、見参!」

「私たち、プリンセスドールズ!プリンセスステージ、レッツスタート!」


 プリンセスドールズが現れると、

「空を見てくれ!」

「月が、ない!」

「これは、新月ですね。地球から見た月と太陽が同じ方向となり、月から反射はんしゃした太陽光が地球にほとんど届かないことに加えて、強い太陽光の影響とで地上からは月が見えにくくなっています。黄道と白道が極めて近いか重なる地点でさくとなった場合に食である日食が起こる。皆既かいき日食にっしょくや金環日食時に新月の輪郭りんかくを見ることができるほか、地球照によっても新月を観察ができますよ」

その影響で、魔獣はダンスをおどり続けているという。

 「さあ、行くよ」

「うん」

ラブリーピンク・アクアブルー・シトラスイエローは、ルビー・サファイア・シトリンのマジカルジュエルをそれぞれのプリンセスミラーにセット。その力をプリンセスバトンロッドにさずけると、

「プリンセスステージ、ライブスタート!」

プリンセスドールズによる魔獣の浄化が始まった。

「Shining! かがやきを」

「いっぱい集めて」

「そのボルテージを」

「高めていこう」

「ここからまた始まる」

「私たちの物語」

「夢をかなえてみせる」

「絶対」

「Star Light Stage」

「ときめいて」

「アイドルになっちゃおう」

ずかしがらずに」

「Star Light Stage」

「一緒に」

「盛り上げていこう」

「一体感を高めて」

「Stardom!」

「ここからまた始まる」

「私たちの物語」

「夢を叶えてみせる」

「絶対」

「Star Light Stage」

「ときめいて」

「アイドルになっちゃおう」

「恥ずかしがらずに」

「Star Light Stage」

「一緒に」

「盛り上げていこう」

「一体感を高めて」

「Stardom!」

「今こそ、みんなの心を一つに!乙女おとめ結束けっそく!プリンセス・トリニティ・ストリーム!」

プリンセスドールズがプリンセスバトンロッドでそれぞれのシンボルマークをえがき、魔獣に向かって放つ。すると、魔獣は跡形あとかたもなく消えていった。

 「ちゅ、ちゅ、ちゅっぴー!」

と、チララが魔獣のコアから出てきたマジカルジュエルのありかを察知。そこにたどり着くと、

「キャッチ!」

とマジカルジュエルを回収することに成功した。それをラブリーピンクのプリンセスミラーに認識すると、

「クリスタル。透明とうめいなマジカルジュエルだ。特に無色透明なものを水晶すいしょうと呼び、古くは玻璃はりと呼ばれて珍重ちんちょうされた。クリスタルの別名である石英を成分とするすなけいと呼ばれ、石英を主体とした珪化物からなる鉱石こうせきは珪石と呼ぶ。珪石のうち、チャートや珪質砂岩が熱による変成を受けた変成岩を珪岩と呼ぶが、この珪岩の中にフクサイトの微細びさい粒子りゅうしふくんだあざやかな緑色を呈色ていしょくし、砂金のようなキラキラしている輝きを持っているものは特に砂金石と呼ばれている。酸化さんかケイ素が、低温で水分を含んでゆっくり固まったため原子配列が規則正しくない非晶質のものがオパールである。二酸化ケイ素に富んだりゅう紋岩質もんがんしつの溶岩が急激に冷やされることで生じるものが、非晶質の天然ガラスである黒曜石である。石英は二酸化ケイ素結晶の多形の一つで、三方晶系の低温型石英から六方晶系の高温型石英に転移する。高温型石英は六角柱面を持たない。高温では、鱗珪りんけいせきやクリストバライトに、超高圧下でコーサイトやスティショバイトに相転移する。常温下における高温型石英の外観は仮晶による。水晶は、代表的な圧電体であり、圧力が加わると電気が発生する。このため、初期のレコードプレーヤーのピックアップに使われた。水晶の圧電性は、水晶すいしょう発振器はっしんきとして最も活用されており、時計が単にクォーツとしばしば呼ばれているのは、水晶発振器を利用したクォーツ時計が最も多いからである。この原理を利用して、水晶振動子マイクロバランスと呼ばれている微量質量を正確に測定するための装置そうちの研究が行われている」

 「それではみなさん、また次回輝く世界でお会いしましょう!プリンセスステージ、ハッピーフィナーレ!」

プリンセスドールズが勝利宣言すると、

「覚えておくわ…」

シンボルタワーにいたダークミラージュはこう言い残して、その場に倒れてしまった。


 「戦闘せんとうプログラム及びパフォーマンスプログラム、ともに異常いじょうなし。現在、心身ともに問題はありませんみられない」

そのダークミラージュは、怪盗かいとうトリオのベータとガンマによってダークネス団のアジトにもどされた。

任務にんむ遂行すいこうプログラム、ダウンロード開始。ただちにインストールを始める」

すると、昏睡こんすい状態じょうたいだったダークミラージュは目を覚ました。

「体調に異常はないのか?」

「ええ。もうすっかり元気だわ」

「それは何よりだ」

ダークネス団の広報担当者によると、ダークミラージュはプリンセスドールズに魔獣が浄化された後にめまいが出て突然とつぜんたおれてしまったという。病原性ウイルス感染かんせんの有無を調べる検査では陰性いんせいだったものの、事態を重く見たドクターはダークミラージュの緊急メンテナンスを実行した。

「しばらくは安静にしてほしい」

「そうね。失礼するわ」

ダークミラージュは、研究室から自分の部屋へと戻っていった。

数時間後、インターネットの動画サイトにあるダークネス団の公式チャンネルでドクターによる生配信が始まった。

「こんばんは。私はダークネス団の最高責任者であるドクターだ。今日は、この動画を見ている人たちに向けて伝えなければならない大事なことがある。近いうちに、ダークネス団が主催しゅさいする発表会が横中で開かれることになった。そこでは、我々われわれ手塩てしおに掛けて生み出したダークミラージュを発表する。その日を楽しみにしてほしい」

その後、発表会に向けて準備に取り掛かっていた。

「いいか?我々の発表会の日は刻一刻と近づいている。そこでお前たちにやっていかなければならないことがある。それは、発表会の会場である横中の電波をお前たちの手でジャックすることだ!」

ドクターからの命令を受けた怪盗トリオは、

「もう!私たちにそんなことを命じられるなんて!」

ひどい仕事だ!」

おれたちの存在が世間に知らされちゃうんじゃないか!」

と戸惑いつつも、

「さあ、やりますわよ!」

「ガッテンだ!」

と切り替えるしかなかった。

 「今度は君の番だ」

「分かったわ」

レコーディングスタジオに移動したドクターはダークミラージュに指示を出すと、

「スイッチ・スタート」

とダークミラージュは歌いだす。

「きっと誰かが救いの手を」

「差し伸べてくれるのなら」

「私は構わないわ」

「街に灯るネオンの光」

「もう見飽みあきちゃったの」

「そう 私はもう」

「見慣れた私ではない」

「生まれ変わるのだから」

「今」

「探しているの ほしいもの」

「時をえて 空を超えて」

「まだ見たことない宝石ほうせき

「それが黒いダイヤモンド」

「出口のないトンネル」

「答えのない質問」

「今の世界はわからないものばかり」

「そう 私はもう」

「誰にも頼らない」

「何もこわくないのだから」

「見つけたい つかみたい」

「大地をかけ 大空をかけ」

「私が勝ち取るから」

「それが黒いダイヤモンド」

「見つけたい つかみたい」

「時を超えて 空を超えて」

「夢がかなう宝石」

「それが黒いダイヤモンド」

その歌声を、未来の世界で聞いた新たなプリンセスジュエルの妖精ようせいは、

「ダイヤモンドのマジカルジュエルが彼女の手に持っているなんて…。絶対に私たちが取り返さなくちゃ!」

と言い残して、現代の横中へと旅立っていくのであった。

忠告ちゅうこくしておく、もうすぐ、我々ダークネス団によるダイヤモンド保護作戦が始まることを…」

そのとき、ダークネス団アジトの会議室にいたドクターはこうつぶやいたのであった。

 「聞こえますか、ドールプリンセス…。私の声が届いていますか…」

その日の夜、つぼみたちの夢の中に光の女神が現れた。

時空とき宇宙そらをかけるプリンセスジュエルの妖精がもうそろそろあなたたちのいる場所にやってきます。星がきれいに見える夜、必ず空を見てください」

それは、プリンセスドールズへのメッセージだった。

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