第20話 対価
『対価、とは?』
彼女の提案を聞いた私は途端に焦った。
なにせ自分はしがない使いっ走りだ。
大邸宅に住む高級娼婦を買う金など一晩分も持っていない。
『安心してちょうだい。お金を取ろうなんて思ってないわ。普段なら請求がいくところだけれど、私はあなたが気に入ったから。』
茶目っ気たっぷりに片目を閉じる彼女は、
娼婦というより街娘のように瑞々しかった。
『それで我々がするべきことは?』
焦れた柄本が口を挟む。
余裕ある態を装っているが、
彼もまた彼女を急かしたいと思っていることは明白だった。
『豊田さんに届け物をお願いできるかしら?』
『それが、対価?』
彼女の示した代償はあまりにも安っぽく簡単で手軽なものだった。
『ええ。そうよ。もしかしたら彼は受け取りたがらないかもしれない。でも受け取らせてちょうだい。』
『それだけで、王博文との縁を繋いでくださると?』
喉がカラカラに乾いているのに、驚きの声をあげずにいられない。
『縁を結べるかどうかはあなた方次第よ。私はあくまでも紹介役。彼に私の友人として紹介して差し上げましょう。』
そう言って微笑む彼女はやはり綺麗だった。
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