トレーニングその十五 掌、短編小説の執筆

 ある意味、極めつけの練習方法がこの掌、短編小説の執筆です。短編小説とは原稿用紙にして十枚から八十枚程度、文字数にして四千文字から三万二千文字くらいの長さの小説のことです。掌編小説とは短編よりもっと短い三百~八百字くらいの小説で、一部の怪談なんかがこの分類に入るほか四コマ漫画の様な簡潔なスタイルの小説の事です。


 何をネタに書くのか、どう書くのかによってそのスタイルは千差万別、具体的にどのような小説を書くのかは書き手に委ねられています。こういった短編小説のお題を作ってくれるソフトウェアなんかもあるようで、それをネタにする場合いかにも練習と言った感じになるでしょうが、まあネタがマンネリ化してきたときなんかにやってみるのも良いかもしれませんね。


 実践的なトレーニングになってくると、自分が書こうとしている小説の登場人物を使って短編を書く、なんてのもあります。*9の『ハリウッド脚本術』の中に、自分の主人公が住んでいる部屋や居住区について語らせるというトレーニングを紹介しています。主人公が脚本家に語っている様に書くのが良いそうです。これによって主人公の人物像が見えてきたりすることもあるし、新しいアイデアの下地になったりもします。


 似たようなトレーニングとして*2の『ベストセラー小説の書き方』では二人の登場人物を作って対話させる、というトレーニングを紹介しています。これは実践的な小説のアイデア出しの手法でもあるそうです。死、信仰、戦争、貞節、名誉、愛などの話題で語らせることを勧めていますね。自分の主観ではなく登場人物になりきって書くことが大事なポイントです。


 *15の『冲方式ストーリー創作術』の中では動物やモノや肉体の一部なんかを擬人化して、小説を書くことを勧めています。自分の家のペットを擬人化して小説を書くとか結構面白そうですよね。特に猫を飼っている人なんかこの面白そうだと言う気持ち分かってもらえるのでは? 文豪の猫小説ほど立派なものを書く必要はないですが、自宅の猫の一人称で小説を書いてみるとか素敵ですよね。


 その他には、僕の個人的な体験では一話千字弱の怪談の短編集を書いたのが、良い経験になったと思います。短い文章で簡潔に物事を伝える練習になりました。執筆の際は五百話以上の怪談をYouTubeで聞いたり、数百話の怪談小説を読んだりしました。怪談は歴史ある話芸で、「怖い」と言う想いを想起させる文芸でもありまして、心霊主義などのオカルトとは本来関係のないものです。幽霊なんか信じないよと言う人も、一度色々な怪談に触れてみると新しい発見があるかもしれませんよ。


 他には身近な出来事を時系列を入れ替えて、ミステリーやサスペンス小説風の文章を書くなんてトレーニングもあるようです。自分の身近な出来事でも良いですし、新聞や雑誌に載っていた事件を題材に短編を書いても面白いかもしれませんね。


 長編のそれも他人に読ませることを目的とした小説は、確かに書くのにかなりの労力を要します。時には気軽にスケッチでもするような感じで、他人に見せるでもない短編を書いてみるのも面白いものですよ。もちろん練習で作ったその小説をブログやツイッターに載せたりするのも面白いですね。

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