トレーニングその十一 小説のコツの学習

 小説の源泉とは知識である。なんていわれることがあります。だから色んな本を読んで知識を身に付け見識を高める。そこで小説の書き方の本なんかを読んでみる。すると現れてくるのが所謂執筆のTipsつまり小説のコツです。

 語尾を整えてリズムを作りなさいだとか、起承転結を心掛けて書けとか、主人公を窮地に陥れるのに手加減はするな、とかのアドバイスから、段落が変わった時は字下げをしようとか、! ? 等の記号を使ったらスペースを入れろとか、「」で文章が終わるときには、や。は不要、等の基本的な文章作法も小説のコツです。


 実際に小説を上手く書くためには、心構えが大事だと説く作家もおり、心構えとは多くの場合こういった執筆のTipsを指すことが多いようです。ただこう言ったアドバイスが創作の幅を狭めてしまうこともあり、そして大抵のTipsには例外があり、絶対的な小説のコツなんてものは無いようにも思います。あったら教えて欲しいです。


 小説とは本来最も自由な表現であり、絶対的なルールと言ったものは無いと言われてはいます。そうは言っても他人に読ませたときに、ちゃんと意味が理解できる、その上でその作品が他人の心に届く。となるためにはやっぱり文章の基本的なルールは守った方が良いと思われます。また様々なTipsを提示され、その中から自分にとって納得できるTipsを取捨選択することで、それが自分の個性になることも往々にしてあります。

 作家の保坂和志氏はデビュー作『プレーンソング』を書くときに、悲しいことは起こらない、もっというなら、悲しいことが起きそうな気配さえ感じさせない様に小説を書いたと*3の『書きあぐねている人のための小説入門』で語っています。自らにルールを課すことで個性を出した例と言えそうです。


 こう言ったTipsもただ頭で暗記するだけでは意味は薄く、執筆に反映させてこそ、その真価を発揮すると言えます。そのためにはTipsを手続型記憶として身体に覚え込ませる過程が必要になるかと思います。特に基本的な文章ルールを守った文章を書くためには、ルールを覚えた上でそれに照らし合わせ書くことが要求されます。主に推敲の時に、文章のルールを頭の片隅に入れておくことは結構大事な執筆のコツだと思います。


 僕は個人的にはコツを学習しただけで上手く小説が書けるようになるとは思いません、小説を書く技術、そのスキーマは複雑に絡み合った脳内のネットワークが可能にするものであり、小説はその人の人生経験全てが動員された唯一無二のアプリケーションが吐き出すテクストです。しかし上手くTips的な心構えを一つ一つ自分のものにしていけば、将来的には必ず小説を上手く書く力になると思います。


 巷の小説教則本を開けばそこには様々な助言と共に小説のコツが伝授されています。またネットで小説のコツとかを検索してみればそこにも様々なTipsに満ち溢れています。ぜひそういった中から自分にピッタリの小説のコツを見つけてみて下さい。

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