第14話 牢屋

ここは…頭が痛く…ものすごく頭がクラクラする。


 俺は意識を覚醒させようと頭を振り起き上がろうとした。




 「起きた!」


 「起きたね…どうしよう」


 「僕達食べられちゃうのかな…」




 なんだ…?子供の声が聞こえる。


 うつ伏せで眠っていた俺は手を前に出し体を起こした。


 腕が青色に変色している…。


 そしてこの部屋の床は石で出来ていた。


 人工物に…子供の声?……。


 俺は確か…黒い霧の中に……。


 そう思い付いた瞬間ぱっと頭の靄が晴れた。




 「そうだ! ここは!!」




 飛び起き、辺りを見渡す。


 怯え部屋の端っこによっている子供達。


 そして木で出来た牢屋の格子。




 暗くロウソクの火で明かりを得ているが太陽の光が差し込んでいるのが分かる。


 黒い霧は見当たらない。


 抜け出したのだ。


 あのずっと続く黒い霧の中から。


 そう思うと嬉しさがこみ上げてくる。


 と…ここまでは良いがこの状況、どうやら俺は檻の中にいるらしい。


 それにこの鬼の腕…青? 


 赤だった筈だが…。


 シュラは約束を果たした為消えたのだろうか…。




 「あの…」




 その事について思考を巡らせていると牢屋の端から声がかけられた。


 子供…それも女の子の声。


 見やると、少女は怯え他の子供達と一緒に固まっていた。




 「ここはどこかな?」




 できるだけ優しく聞いたつもりだ。


 だが、反応から見るに怖がらせてしまったらしい。




 「ひぃっ…ごめんなさい、ごめんなさい」


 「きみ…獣人か?


 だが、見たことの無い特徴だな…」




 少女は、こがね色の髪をなびかせ、頭の上に尖った耳、そして背後からは大きくふわふわとしている尻尾が揺れている。




 犬族や猫族の様な特徴を持つがどっちかと言われると判断しかねるな。


 新しい別の種族かもしれないそう思い近づくと少女は更に怯え目に見えるほど震え出した。




 「そう、怖がるな。


 何がそんなに怖いんだ?」




 角だろうか? いや…それとも爪か?




 青い手を見るが確かに怖いかと聞かれれば怖いだろう。


 人ならざる手だ。




 しかし…よく見ると妖狐の他に自分と同じ鬼の子供もいた。


 赤色の鬼、その姿は人に近く人肌がありそこに角と赤色の腕といった姿をしている。


 その子も同じく怯えている。




 「ごめんなさいごめんなさい」




 しばらく話続けたがずっとこの調子だ。


 仕方が無いので他の事をする事にする。


 自分を解析…。




 ルーク (シュラ) 青鬼(小鬼) 


 【火】【餓鬼】【土】【修羅道】


 【怪力】【妖糸】【麻痺毒】【威圧】




 見た所変わったのは青鬼という事だけで後は問題無さそうだ。


 シュラがまだ居る事、意外は。




 「シュラ、寝てるのか?」


 『うるさい…黙っておれ…』




 力弱く返事が帰ってきた。


 どうやら本当にまだいたらしい。




 その様子を恐る恐る見る妖狐。


 慣れてきたのか少しづつ近づきこちらの様子を伺っている。


 それにしても、ここにいる子供は変わった種族ばかりだ。


 きつね耳にもふもふ尻尾…妖狐族


 頭に角、そして赤い手足…鬼人族


 背中に羽の生えた種族…天狗族


 そして見覚えのある猫人族と犬人族どうやら彼らは名が違ってもこちらの世界と同じのようだ。


 猫人は猫又族 犬人は犬神と呼ばれる一族らしい。




 現在なぜか元気のないシュラに聞いたら嫌々答えてくれた。


 疲れているとかなんとか。




 『全く、デイダラボッチなどと言った自らの力も制御出来ん下等な存在に一時的とはいえ、なってしまうとはな…』


 「まあ、あの場所から出られたから良いだろ?」




 シュラはようやく元気を取り戻したのかいつも通りに話し始める。


 黒い霧の中では二人。


 他に話し相手もいなかったのでずっと話していた仲だ。


 こうやって話してくれるのは嬉しい。




 「あの…何を話しておられるんですか…?」




 シュラと話していると妖狐の子供が話しかけてきた。


 俺は今度こそ失敗しない様に笑顔で応えようと頑張ってみる。


 しかし…その笑顔は固く…。


 怖かった。




 「ああ、少しね。


 それより…ここはどこか知らない?」


 「やっ……やっぱり怖い!!」




 そんな会話をしていると後ろから男の声が聞こえた。




 「おい、お前ら飯だ食え」




 人間の男…それも汚い服装の男だ。


 今の自分が来ている汚れてボロボロの白衣よりはましだが。


 腰には見たことの無い剣をつけている。




 「おっ、そっちの珍しい青色の鬼も起きたか。


 逃げようなんて考えるなよ。


 もし逃げれば、殺す。


 できればこっちも売り物に傷はつけたくねぇんでな。


 妖魔の亜人種それもこんな珍しいガキとなりゃあ金貨何両になるのか楽しみだ」




 男は下卑た笑いを見せ俺達を眺めている。


 ふと後ろを見ると妖狐の少女や他の子供達が、なぜか俺の背に隠れようと皆で寄せ合っていた。




 「ほう、奴隷制度があるのか?


 見た所、貴方は柄の悪い人間と見るが、地図など持っていないか?」




 そう、訪ねた。




 どこの世界でも同じだな。


 こんな輩がいるのは。




 「あ? なんだ?


 ガキ、こっちが手を出せないからといって調子乗ってんのか?


 はっ、見たところ…お前が他のガキ共を守ってんだな?


 ちょうどいい、逆らうとどうなるか教えてやる」




 そう言うと男は鍵を開け中に入ってきた。




 まさか…こんな展開になるとは…。


 少しからかっただけなのに…まあでもいいか。




 「おい、こっちに来い!」




 男が拳を作り殴りかかってきた時体が勝手に動く。




 「ふっ、体を少し借りる」




 シュラは鼻を鳴らしそういうと拳を男の拳に当て合わせた。




 「弱い…」




 次の瞬間、男の腕は後ろへと弾かれ腕を抑えうずくまった。


 よく見ると、拳が砕かれ血を流し指はおかしな方へと曲がっている。




 「下等な人間が貴様らはいつの時もそうなのだな…愚かで醜い…汚らわしく獣以下だ。


 死ね…」




 俺の体は足を上げ男に振り下ろされようと勢いよく落ちる。




 「鬼瓦割……っとあぶねー」




 とっさに体の意識を自分に入れ替え攻撃をずらし外れさせた。


 その攻撃の一撃は地面の石を砕きヒビを四方八方に行き渡らせる。




 人間の男はその凄まじい攻撃の前に気を失い倒れた。

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