12話
次は異能強度を調べるらしい。
攻撃系の異能はさっきの
そこら辺の説明は面倒なので、割愛。
とりあえず、今からボク達が攻撃を撃ち込むのはあの案山子だ。
詳しい説明をすると、ダメージコントラストはクリーム色で、ダメージゲージは主に15段階に分かれている。
強い方から赤、黒、灰、白、藍、紫、青、緑、オレンジ、黄、薄緑、ピンク、水、茶、クリームとなっている。
そしてありえない事とされているが、ダメージコントラストは赤よりも強い攻撃を受けると壊れてしまうらしい。
おっと、これはもしかしたらフラグってやつかもしれないね。
さて、もう測定も始まっている事だし、気を取り直そう。
……うーん。これがこの学園の“普通”なのかな。
みんな白色や藍色が出れば歓声がでるし、エリート校と言っても所詮は学生レベルなんだね。
さて、次はお待ちかね、蒼炎サンの番だ。
蒼炎サンの名前が呼ばれた。
彼はダメージコントラストの5メートルほど前にある線のところに立ち、手を前に出す。
ところで思ったんだけど、オモテの人ってみんな異能を使う時、手を掲げなきゃ発動できないのかな?
そんなんじゃ敵に異能使うのバレちゃうじゃん? どうするんだろ?
ウラだと手は掲げないのが当たり前だから、調子狂うなぁ。
っと、蒼炎サンが測定を始めるようだ。
ちゃんと見とかないとね。
ああ、そう言えば、持っている異能の中にチカラの動きが見えるようなやつがあった気がする。
確か……[力量可視]、だったっけ? あんまり覚えてないや。
異能を使うのは死ぬほど嫌だけど、ボクが楽しむための手段の一つだ。仕方ないから使ってみよう。
蒼炎サンが片手を掲げ、目を瞑る。
その周りを青いオーラの様なものが大量に渦巻いていた。
そのオーラはとても濃く激しいのに、なぜだか術者のことはハッキリと見える。
んー。あのチカラの練り方だと、多分[赫炎]辺りかな。感覚的になんとなく分かる。
異能発動直前なのだろう。
「にしても、そのチカラの大きさだと、まずい気しかしないね〜」
んふふ、と無意識に口角が上がる。
「盛大にやらかすヨ、カ、ン♪」
─────どぉぉぉおおおんっ!!
辺り一帯に激しい破壊音が響く。
煙が晴れたその先には……
「あの案山子が……壊れて、る……?!?!」
誰かの驚愕の声がする。それと同時に騒ぎが大きくなっていく。
「うそだろ?! あれが壊れるってあるのか?!」
「基本的に壊れないって聞いたよ?!」
「あいつ……何者なんだ?」
そのうち違うクラスや上級生までに動揺が広がる。
「ボクの思った通りのあっちゃーだね、龍真クンっ!」
ボクは誰にも聞こえないような声で呟いた。
興奮する生徒たちは教師の言うことを全無視し、こちらへと見物に来る。
それに紛れてアキちゃんがこちらへ来るのが見えた。
「よっ、弥生。なんか大変なことになってるらしいな?」
「自分のクラスの所に戻ったら?」
「えっなんか冷たいなお前?」
「いや? 別にさっき龍真クン紹介した時の塩対応のこと根に持ってる訳じゃないよ?」
「思っきし根に持ってんじゃねぇか」
ボクはそれっきりぷいとそっぽを向いた。
「ごめんごめん。今度なんか奢るから」
「…………高級焼肉」
「分かった分かった」
仕方ない。許すとしよう。
「にしても、龍真クンやっちゃったねぇ〜。やらかしちゃったねぇ〜」
「(さすが弥生、安定のチョロさ)
そういえば、あの龍真ってのが蒼炎なのか?」
なんかアキちゃんに馬鹿にされたような気がするけど、まあいいか。気にしないことにしよう。
「そうだよ。まさかのまさか、隣の席だったからね。早めに知り合えてラッキーだよ」
でもこの試験の後はどうせクラス替えがあるから、これから先も隣とは限らないんだけどね。
まあでも、ここで重要なのは蒼炎サンと知り合えたかどうかだし。
一応トモダチ? だから問題ナシじゃないかな?
「ふぅん。あれが蒼炎ねぇ。確かにちょっと背格好とか似てるかも」
そこでボクは人差し指を横に振る。
「ふっふーん。アキちゃんノンノン! よく見ないと気づけないなんて、まだまだですねぇ?」
「チッ。弥生って何気にアゲハと似てるよな。そういうところ」
えっ。
「そういうところって?」
「……なんでもない」
ふぅん??
まあいいや。焼肉いっぱい食べて困らせてやろ。
「そろそろ時間切れみたいだな。段々元に戻りつつある。てことでまたな、弥生」
「おう! そっちも試験頑張れよな!」
「急な切り替えに追いつけない」
ともかく、龍真クンがこちらに戻ってきた。
「あ。あれって時雨さんか?」
「そうそう。騒ぎに紛れて暇つぶしに来たんだってさー」
「へぇー」
「そういえば、すげぇな龍真! あれって実は意外と簡単に壊れるのか?」
ボクがそう言うと、龍真クンはバツが悪そうに目を逸らした。
「あー、うん、いや、そこまで脆くはないんじゃない、か? ……多分?」
うわぁーーー
あからさますぎて笑いが堪えられるか分からないよ!
顔に出さずに笑うのって中々にキツイねぇ。
お、お腹いたい……
と、そこでボクの名前が呼ばれた。
「お、んじゃ行ってくるわ!」
「おう、頑張れよ」
壊れた案山子は既に替えと交換されていた。
なんとも仕事がお早いことで。
さて、一年の中で今のところ出ている最高の記録は蒼炎サンを除けば二つ隣のクラスの灰色だったっけな。
しっかりそこんとこは見てないとね!
別に超さなくてもいいとは思うけど、蒼炎サンと同じクラスになる手っ取り早い方法は、やっぱり学年二番目になることだよね。
どうしようかな、なんの異能を放とうか。
正直言って数えられないくらいの異能を持ってるから、どれをあることにしようか迷ってるんだよね。
んー、じゃあ、無難に[焔]辺りにしとこうかな。
さて、そうと決まれば今度こそ出力を調整してっと……
────[焔]
ビュッ!
どぉぉぉんっ!
「ん、よし。上手くいったな」
結果は……黒か。いい感じだね。
赤だと行き過ぎ。かと言って灰だとビミョー。なら黒がイイよね!
でも、それでも
とりあえずここは喜んだフリでもしておこうか。
「え? なんか分かんないけど、すげぇのか?! っしゃあ! やったぜ!」
うん。ボクが見てる側だったから確実に殴ってそうな馬鹿キャラが演じられたね。
ボクすげぇ! やったぜ!
「凄いな、弥生。黒は中々出ないぞ」
「ふはははっ! オレにかかればこんなもんよ!」
全く。その案山子を壊したヒトに言われてもねぇ?
ま、ボク馬鹿キャラだし? 素直にノってあげるよ。
「さ、弥生。次は異能持続力測定らしいぞ? 行くか」
「おうっ!」────────
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