5話
受付の二人の前へ行くと、二人は緊張した様子で姿勢を正し頭を下げようとしたが龍真がそれとなくこちらに視線を向けたので二人は止まった。
(あ、これって絶対二人が蒼炎サンの正体を知ってて敬礼しようとしたけどボクがいるから蒼炎サンが二人を止めたやつだ。大丈夫かなぁ青霧。そんなあからさまな縦社会、ガバガバに見せていいわけ?)
それはともかく、今は部屋番号だ。
「一年の三奈月と霧崎です。部屋はどこっすか?」
敬語に少し拙さを醸し出しつつ部屋番号を聞く。
「三奈月君と霧崎……君ね。えっと、三奈月君が10階の1006号室、霧崎君が最上階18階の1801号室よ。これが部屋の鍵だから無くさないようにね」
そう言われ部屋の鍵を差し出される。
龍真が不機嫌そうな顔をしている所から、恐らくこの寮の振り分けは贔屓なのだろう。
受付の女性は霧崎君と呼ぶのにも微かに抵抗を見せていた。
ホント、バレたいのかな? この人たち。
「ありがとうございます。行こうぜ、龍真!」
……まあ、ハッキリ言ってそこはどうでもいい。
ボクは早く部屋に行きたいんだから。
二人でエレベーターに乗り、上階へ移動する。
少し経つと10階に着いた。
「んじゃ、ここでお別れだな! また明日!」
「おう。また明日な」
適当に挨拶を交わし、ボクと龍真は別れた。
「ふふふふ〜ん♪ ふんふふ〜ん♪」
ボクは誰もいない廊下を鼻歌を口ずさみながら軽やかに歩く。
その足取りに、先程までの足音と布摺れの音は一切無い。
「これから楽しくなりそうだなぁ!」
少年の笑みは、誰の目にも映らずに金色の塗料で1006と書かれた黒の扉の中へと消えた。
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