第22話 魔法少女爆誕!

 倉庫にて魔導書を本棚にしまいながら目通していく。

 先程見た6つの魔法を習得して思ったのが...もしかしたら魔法には覚えられる限度があるという事.....

 どうやら私の現状では習得できる魔法は10種類しか覚えられないらしい...

 扱えもしない魔法を既に3つも覚えてしまった訳だが...どうしようか...。


 数時間程が経過し100を超える魔導書整理もようやく終わる。

 かなり高位の魔法もちらほらあったが、実用的ではない、そもそも扱えないのばかりだ...。

 その中でも扱えそうだと思ったのが、【毒霧】【麻痺霧】【睡眠霧】この3つは状態異常を掛けることが出来るので、なにかと便利なはずだ。


 そして現状で覚えられる最後の一つ...いや...ここで選ぶのは悪手だろう。

 今もシリュウ達は魔導書集めに勤しんでくれているのだから、帰って来てからの方が良い、2日で100冊以上集めてきたのだから、今日も2,30冊くらいは持ってきてくれるはずだ。


 現状での整理は終わったので、家に戻ると、みんなも帰ってきた所だった。


「おかえり~」

「ミーシャ!もう大丈夫なの?!・・・だそうです」

「きゅう...」


 顔を真っ赤にするイチゴに笑って返す、みんあのお陰で、私でも扱えそうな魔法を習得する事が出来たのだから、感謝してもしきれない。


「きゅう!」

「どんなの覚えたの!だそうです」

「私も気になります!」

「えっとね...【月灯りの聖剣】【黒炎球】【剛体】に【火炎球】【水弾】【破滅の火】でしょ...それから【毒霧】【麻痺霧】【睡眠霧】だね」


 苦笑いを浮かべるみんなを不思議に思う。


「どうかした?」

「なんか使えない魔法も入ってませんか?」


 ホープの鋭い指摘に肩が跳ね上がる。


「どうだろうね~」


 ごまかす様に吹き慣れない口笛を吹き視線を逸らす。


「きゅう~...」

「無駄が多い...だそうです。私もそれには同意です」

「だって...無限に覚えれると思ったんだもん...」


 みんなが呆れているのが手に取るように分かった...。

 呆れる理由も理解できるし、私だって反対の立場だったら今のみんなよりも文句を言うかもしれない、だって...一番弱い奴が、考えずに魔法を習得するなんてありえない、弱いからこそ、工夫が必要であり、強者と戦うにはそれらを巧みに扱う必要がある。

 それを?使えもしない?魔法で?3スロットも?そんなのあるわけが無い!


「ごめんなさい...次からしっかり考えて覚えていきます...」

「きゅう」

「反省してるならいいよ。だそうです、まずは使ってみたらどうです?」

「初級魔法の【火炎球ファイアーボール】を使ってみましょう」


 ホープの意見を肯定し手頃な相手を見つける。

 いつも試し斬りに使うのはやはり草原に群生する兎のモンスター達だ。

 小動物をいじめているようで罪悪感があるが、当にその感覚は薄れた。

 もしこれが特殊スキル【無慈悲】と【鬼畜】のレベルが上昇したからだとするなら、意外に便利なのかもしれない、戦いで一々罪悪感なんて感じるのは面倒だからだ。


「よし!行くよ!」

「いいですよ~」

「【火炎球ファイアーボール】!!!」


 手の平から放たれた炎は球体になり相手に飛んでいく。

 そして命中。

 しっかりと命中した火炎球は対象を燃やし尽くし一瞬にして消し炭にした。


「おぉ!すごい!」

「んー...相手があれでは....」


 いちゃもんを付けるイチゴを睨みつけて黙らせる。

 それは私だってしっかりと理解している、今更一発で倒せた程度で満足できる程馬鹿じゃない。


「きゅう~」

「私に撃っていいよ~。だそうです」

「さすがにそれは無理だよ...仲間に撃つなんて...怪我でもしたら...」

「へっ...」

「っふこの私がその程度の魔法でけがをするとでも?だそうです」

「きゅぴーーー!!!!」(そんなに言ってない!!!


 本当にシリュウが言ったのか定かではないが、最初のあの表情はそういう事なのだろう。


「よし!!!うってやる!!行くよシリュウ!!」

「きゅぴ!」

「【火炎球ファイアーボール】!!」


 見事にシリュウの身体に命中した火炎球だったが...先程とは違い、対象を炎で包むことは無い、シリュウの強靭な肉体に弾かれダメージすら与えることは無い...。


「きゅぴ...」

「しょっぼ...だそうです」

「きゅぴ!!」(そんなに言ってない!)

「まだ威力がなぁ...」


 ホープも文句あり気なので涙目で見つめる。

 初めての魔法...相手が悪いんだと割り切るしかない。

 だけど、シリュウに効かないのだから、今の目標であるドラゴンにダメージが入るわけが無い。

 そもそ魔法攻撃力が現状300しかないので、1万を超えるステータスの奴にダメージが入る訳がないのだ。


「他の魔法はどうですか~?」


 ホープが言うのでなんとなく使用してみる。

 私が今ちょうど使えるのは【剛体】だ。効果は攻撃力と防御力の上昇...。

 どれくらい上がるかは定かではないが、武器での攻撃となればそれなりに火力は乗るのではないだろうか。


「じゃあ、私が受けます。万が一の時、シリュウでは少しあれなので」

「ほんとにいいの?」

「えぇ私のHPは既に13万、ミーシャの攻撃程度ならばなんの問題もありません」

「うぐ...私なんてまだ900なのに...」

「さぁどうぞ」


 イチゴに許可も貰ったのでスキルを発動させる。

 確かに力が湧く感じがするがそれ以外はそこまで変わった様子はない、そしてその勢いのまま斬撃を飛ばす。

 放たれた斬撃は外れることなくイチゴに命中する。

 だが....案の定イチゴは無傷だった。


 もうやだ...この子達...。


「よし!次のエリアに行ってみよう!」

「次のエリア?」

「うん。こっちに来た時にゼルセラ様に聞いたんだけど、次のエリアに行くには、ボスを倒すか地道に移動するかの二択なんだって」

「つまり...地道に行くってコト?」

「そう!私にドラゴンはまだ早い!なら次のエリアでレベルを上げればいいんだよ」

「きゅう~」「なるほど....いいんじゃない~。だそうです」


 さて、次のエリアに向かう。

 準備と言えない準備をしさっそく出発だ。

 そもそも次のエリアがなんのエリアかもわからないので、準備もくそもない。

 厚着をした結果、火山だった、とかだと目も当てられない、なので、深く考えないことにした。


「行ってくるね~」

「きゅう!」

「いってら~」「いってらっしゃい~」


 大きく手を振る二人に見送られながら拠点を後にする。

 シリュウに巨大化してもらい、その背に乗る。ホープは早すぎるので前回と同じことになりかねない...。

 シリュウの背中は居心地も良く快適なので、困ったことは無い、


 それにしても...広いなぁ大草原...。

 遥か上空から下を見下ろせど見えてくるのは緑豊かな草原、だが...半日ほど進んだ先でようやく見えてきた。

 草原の先にある緑の濃いエリアだ。

 その近くに降り立ち地点を登録しておく。

 これをすると、座標が登録され、拠点ごとに転移をすることが可能になるのだ。

 そんな便利機能使わないはずがないのでしっかりと使う。なにせこれを使わないと、移動だけに半日も取られてしまうからだ。


「まずは入り口周辺の探索からしようか、どんな系統のモンスターかもわからないし」

「きゅう~」「わかった~。だそうです」

「きゅう...」「・・・・・」

「今のはなんて言ったの?」


 私の問いをイチゴははぐらかす。その状況を見てシリュウは溜息をつきながら首を横に振りホープは苦笑いを浮かべた。

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