第290話私人逮捕系動画投稿者に反抗してみた4
和谷はギリリと歯を食い縛った。
「動画にして沢山の人に見てもらわないと、見せしめにならないだろ!?」
「見せしめはニュース番組がやってくれるから、 お前が気にすることじゃない。ていうか」
奏介は冷たい視線で人差し指を向けた。
「サイトに上げた動画で金稼いでんだろ?」
和谷はぐっと言葉に詰まる。
「顔は写っていなかっとしても、被害者と加害者の姿を録画してそれを勝手にサイトに晒した上に、金までもらってんだろ? 金儲けに他人の不幸を利用してんじゃねぇよ。他人を見世物にして金稼いでる奴に、イキってるとか偽善者とか言われる筋合いはねぇんだよ」
和谷は奏介を睨みつけた。
「金儲け? 手に入ったその資金で、視聴者からのリクエストに答えるために、良いカメラや音質の良い録音用のレコーダーを揃えたりしてるんだよ。それも含めての活動なんだ」
「人助けに良いカメラも良い録音レコーダーもいらないだろ。そういや、編集で効果音入れたり、字幕テロップ入れたりしてるよな。その手間は一体なんのためなんだよ。被害者のためじゃねぇよな? 本当に、心の底から名前も知らない不特定多数の被害者を助けたいと思ってるなら、身一つで現行犯逮捕狙うだろ」
「偉そうに……」
奏介は目を細める。彼はまだ闘志を燃やしている。ここから反論だと言わんばかりだ。
(しぶといな)
最初から心を折りに言っているつもりだったが、あまり堪えてなさそうだ。
「てかさ、僕はあんたのこと知ってんだよね」
「……へぇ、そうだったのか。何を知ってるって?」
和谷は鼻を鳴らす。
「あんたも似たようなことしてるだろ。アカウントにいじめしてる奴らの晒し動画上げて、炎上させてたことあるじゃん。ネットに他人の顔晒してさ。それって、やって良いことなわけ?」
「良いも何もいじめしてるやつなんてクズの極みなんだから、晒して炎上でもさせないと、反省しないどころか調子にのってエスカレートしてくんだから徹底的に潰してんだよ。あ? だからなんだよ、俺は金なんかもらってないし、個人的にむかつくからやってんの。お前みたいに知らない誰かのためじゃないから」
「はぁ!? 個人的にむかつくから!? そんな理由でやってる奴になんで説教されなきゃならないんだ!」
激昂して詰め寄ってくる和谷に、奏介はため息を一つ。
「じゃあ何か、お前はいじめを受けてるのに反抗すんなって言いたいのか?」
「え」
「俺が晒してるやつらは、俺に対していじめをやってんだよ。それは確実だ。絡んできたから仕返ししてるだけ。いじめに遭ってる俺がそいつらに仕返しして何が悪いんだよ」
「じ、自分勝手な」
奏介は軽蔑の視線を向けた。
「それはお前だろ。ていうか、私人逮捕するには、集中力と観察力が足りないんだよ、お前は」
奏介の言葉と同時だった。
「ワイタニチャンネルのワイタニさん、ですか?」
背後から声をかけられ、和谷は振り返った。
そこに立っていたのは、セーラー服姿の女子高生だった。和谷を睨みつけている。
「お疲れ様です。ノノコさん」
奏介は相談者である彼女の、ハンドルネームを呼んだ。
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