第280話未婚のシングルマザーを馬鹿にする主婦達に反抗してみた2

 あからさまにムッとする主婦2人組。

「ぺらぺらぺらぺら偉そうに、なんの話してんの?」

「虐待がどうのって、今そんな話関係ないでしょ」

「あなた達も、金出さんとなんの関係もないでしょ。性質の悪いチンピラみたいに絡んで来た上に、下品で不快なことを言われたから、言い返してるんですよ。悪口だって理解してます? 人に悪口言ったら、自分達も言われるって分かってます? どうせ金出さんは強く言い返さないから、悪口言いまくって追い詰めてやろうってのが見え見えなんですよ」

 奏介の怒涛の攻めにたじろぐ2人。ここまで言葉責めされると思っていなかったのだろう。

「最終的に、息子と一緒に自殺に追い込んでこの世から消えてもらおうとか、犯罪者じみたこと考えてますよね? 最っ低ですね。人の命を何だと思ってるんですか」

 さすがの2人の表情も強張る。

「はぁ? 自殺に追い込むって、人聞きの悪い!! 変な妄想しないでよねっ」

「なんなの、こいつ。頭おかしいんじゃない?」

 奏介は表情変えない。

「ならあなた達は、金出さんと息子さんにどうなってほしいんですか?」

「どうもなってほしくないわよ、別に。未婚で子供産むような女がどうなろうと」

「そうそう。仕事で疲れたーとか頑張ってるアピールしてるけど、所詮その程度」

 奏介は困ったような顔をした。

「どうもなってほしくないって……俺の質問聞いてました? 「未婚で産んだから子供はまともに育たない」とその意見を金出さんに言って、それを聞いた金出さんにどう対応してほしいのかって聞いてるんですよ」

「はぁ? どういう」

「何も考えずに喋ってるんですか? 金出さんのことがどうでも良いなら、なにも言わないでしょ。当たり障りのない付き合いしますよ。そこをわざわざ嫌味と意見を言ってるんだから、何か意図があるんですよね? 精神的に追い詰めることが目的じゃないなら、一体なんの為なんですか?」

「またゴチャゴチャと」

「ちょっと金出さん、こいつなんなの? あんた、こんな奴を」

 口で敵わないと分かると、弱い者に矛先を向けるのはこういう輩の特徴だ。

 奏介はため息を1つ。

「話題そらすってことは、つまり、自分達が気分が良いから金出さんをいじめてるってことですよね。笑ってたし」

 その言葉に2人は固まる。十中八九、これだが、認められないのだろう。黙った。

「いじめしてる奴ってどこの学校にもいますけど、クソガキですよね。相手を傷つけて喜んでニヤニヤニヤ笑ってるいじめっ子見ると、本当に腹立つ。まぁ、あなた達みたいに、良い年齢の女性もやってるんだから、仕方ないかな? ちなみにやってることは道徳の授業を受け始める前の小学生と同じですね」

 何も言えずにぷるぷると震えだす主婦達。

 軽い嫌味を言ってチサキを困らせてストレス解消したかった所、こういった面倒臭い絡みをされたら堪ったものじゃないだろう。

(中途半端な反撃は復讐心を産むからな)

 奏介はギュッと拳を握った。徹底抗戦の構えだったが、

「行きましょ。本当に頭おかしいわ」

「異常者よ、異常者!」

 どうやら尻尾を巻いて逃げることにしたらしい。

「お帰りになるんですか? また何かあったら金出さんに言って下さい。俺が、いくらでも対応しますので。それと、あなた達の悪口録音してるんで、名誉毀損の罪になるとか考えた方が良いですよー」

 足を早めて、去って行った。奏介は、ふっと息をついた。

「す、菅谷君っ」

 今度はチサキが青い顔をしていた。

「なんてこと言うの! あの人達、ゴミ捨て場とか共通だから今後も関わらなきゃならないのに! あんなこと言ったらさらに嫌味を……」

 チサキは肩を落とした。

「言われるかもしれないけど、なんだか、面白かったわ」

 チサキは涙を溜めながら、笑った。

「散々バカにしてきた癖に、高校生の男の子に反論されて何も言えないで逃げてくって、笑っちゃった。あははっ」

 ぽろぽろと涙が頬を伝う。

「えと、大丈夫ですか?」

「ええ」

 涙を拭い、

「ありがと。味方してくれて」

「金出さん、凄く頑張ってるなって俺でも感じましたし、幸がママといるのが楽しいって言ってましたから」

 奏介は幸の頭を撫でる。子供にそう言わせるだけ、愛情を注いでいると思うのだ。

「奏介、すげー。あのおばさん達、凄い意地悪でさぁ」

「次また言ってきたら、悪口言って楽しそうですね、暇なんですか? って言ってみな。ちゃんと敬語で」

「うん!」

「あ、あはは。確かにダメージ入りそう……」

「そこまで送ります。あの、俺なんかが言うのはちょっとおかしいんですけど、頑張ってくださいね」

「うん」

 チサキは、満面の笑みを浮かべた。

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