第247話クラスメートの暴力系幼馴染みに反抗してみた2
「…………なっ!?」
数秒して、何を言われたのか気づいたらしい。
「なんなの、お前! 超失礼!! 振られてねぇよっ」
「じゃあ、そのうち振られるんじゃないですか? その辺歩いてる他人に怪我させる女性を好きになる人なんかいませんよ」
「う、うるせぇんだよ! こいつが悪いんだ! 他人じゃねぇし!」
「な、なんで僕が……」
理不尽である。
奏介は腕組みをする。
「こいつが、ですか。比津は俺にとってクラスメートで友人ですが、あなたと比津はどういう関係なんですか?」
「ただの、近所に住んでるヤツだよ」
「いや、それ他人でしょ。百歩譲って仲の良い幼馴染みとか普通の男友達ならともかく、ただ近所に住んでるヤツを蹴り飛ばしちゃまずいでしょ。何様なんですが? 偉そうに」
「ぐ……!」
言葉に詰まったので、追い打ち。
「しかも、暴力の動機が好きな先輩に比津との仲を疑われたから? そんなの比津とは関係ないし、なんなら自分で誤解を解けば良いでしょ」
「うるさいっ! 否定したって、あたしが照れてるとしか思われないんだよっ」
「じゃあ、蹴り飛ばして分からせれば良いでしょ。比津とは関係ないっていってんだろ、ふざけんな! って」
「んなこと出来るわけないだろ! そっちこそふざけんな!」
「なんで先輩に出来ないことを比津に出来るんですか? そんなことをしてるから疑われるんですよ。比津にだけ暴言暴力を吐くとか、特別な人だと思われても文句言えないでしょ。喧嘩するほど仲が良いとでも思われてるってことでしょ」
「……!」
大人しくなった。
「比津への特別扱いを止めてくださいよ。じゃないと暴力振るった犯罪者の通り魔として通報しますよ。……ていうか、もしかして、あなたは比津が好きなんですか?」
「!? そんなことあるわけないだろ!!」
顔が真っ赤になったが、絶対に照れではない。逆上ブチギレだ。
「なら比津は? なんか特別扱いされてるっぽいけど、何か言った方が良いんじゃないか」
比津は少し驚いた顔をしたものの、ゆっくりと頷いた。
「特別扱いされても嬉しくないから、止めてほしい。僕は君のことなんとも思ってないから」
「は、はぁ? それはあたしのセリフ」
「なんとも思ってない人に暴力振るわないでしょ。比津につき纏うの止めてくださいね。迷惑なので。てか、こんなことしてる暇があるなら、先輩に見てもらえるように努力してくださいよ」
奏介は吐き捨てるように言って、
「さ、行こう」
比津を促して、彼の家まで送って行ったのだった。
○
後日。
放課後の教室にて。授業終わりの解放感の中、比津が歩み寄ってきた。
「菅谷」
「おお」
机の前に立った彼は朗らかな顔をしていた。あれから絡まれることはなくなり、彼も登校時間をずらすなどしてから暴力を振るわれることはなくなったらしい。
「どうした?」
「いや、実は。他人の不幸を笑うのは良くないって思ってるんだけどさ。……あいつ、栗田先輩に振られたらしいんだ
「……あー」
お互い複雑な笑顔を浮かべる。
「まぁ、やっぱりというか」
「うん。……でも、いい薬だと思う。いや、ありがとね。菅谷のおかげだよ」
「俺は当たり前のことを言っただけだよ。いじめっ子って抵抗しない相手には調子に乗るからね」
「うん、確かに。菅谷が言い返すチャンスをくれたからさ。今度、飯でも奢るから。それじゃ」
「ああ」
相談解決、ということで良さそうだ。
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