第九章 神の居る城ボロック・ヒヒイロ城

9-1

「おう、おまえら、また戦いに勝ったんだってな。おまえたちの強さに見合った城に改築するのは、おれたちも大変だぜ。今度は、神の居る城ヒヒイロ城にしておいたぞ。」

 築城技師がいった。

「ちょっと待て。ボロックに神が居るのか? おれはそんなことは知らないぞ。それに、ボロックの名前を勝手にヒヒイロ城にするなよ。勝手に決めて押し付けられては困るぞ。戦いがそれが原因で負けることだってありえる。」

 クラップが文句をいうと、

「クラップ、おまえさんは忙しすぎて確認できないだろう。おれたちがうまくやっておいてやった。おまえさんは知らないかもしれないが、人類の最強の城の名前はヒヒイロ城という名前にすることが決まっているんだ」

 ボロックが人類最強の城になったのか。クラップはそのことに確信が持てずに、戸惑った。これまでの築城技師の腕は確かだった。ここまで戦いに勝利してきたことがそれを証明している。かつては、最弱の城、田舎のボロ城ボロックだったが、今では人類最強の城になったらしい。

「ヒヒイロ城という名前は、人類の戦士たちが作戦を立てる時の目印になる。ここは受けてくれ」

 クラップは、ロスやジンジャンと相談した。防衛拠点ボロックはボロックだ。だが、百万の大軍に勝利したことで立場が変わったのかもしれない。

「百万の大軍に勝った後だ。ここで人類が連携を取れれば、魔族との戦争に勝利できるかもしれない。人類の戦士たちの目印になるというのは、重要だぞ」

 ロスがいう。

 クラップが迷っていると、王国の精鋭がボロックに集まりだしているという知らせが届いた。手応えがある。この不確かな手応えで判断してよいのだろうか。クラップは迷う。今までうまくいっていたクラップの作戦判断が狂う可能性がある。それはそれで不安要素だ。

「神の居る城って、本当に神が居るのか。神界から来たというメイビーに聞いてみてくれ」

 クラップがごねる。

「神が居るなら会ってみたいけどな。どんなやつだろうか気にはなる」

 ロスがいう。

 三人はメイビーを探して相談してみたが、

「ヒヒイロ城には神が居ると聞いている。ここがヒヒイロ城になったなら、おそらく神が居るんだろう」

 とメイビーは答えた。

 仕方ない。受け入れるしかないな。とクラップは考えた。

「ヒヒイロ城か。神の居る城ボロック・ヒヒイロ城。長い名前だが、こういう名前にしてくれ」

 クラップは自信がつかないまま、引き受けることにした。

 こういうことをひとつひとつ、少しでも賢く積み上げた集団が、数年後にはそれだけ有利になる。一枚でも賢く選択していく。それが大切だ。もちろん、まちがえることはある。それでも、一枚でも賢く洗濯していくんだ。

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