6-2
魔族が攻めてきた。
敵は、魔族の重装歩兵3000人。
それに対して、味方は一万人。再び、味方の方が兵数でまさる戦いである。だが、油断はできない。敵は魔族だ。どんな強敵が混じっているのかわからない。
「イージニー」
「はい」
「籠るぞ、いいな」
「異議なしです」
クラップとイージニーは手短なやり取りで作戦を決めた。
魔法の城となったボロックは、通常では理解できない原理で作られたさまざまな仕掛けをもつ城となっていた。
今度の戦いでは、いくつもの異変が最初の頃からささやかれた。敵の重装歩兵が、殺されても生き返り、戦いつづけるのだ。敵兵が、殺されても殺されても蘇り、戦いつづける。
「敵には、ネクロマンサー・ドストエフスキーがついている。ドストエフスキーは、死んだ味方を生き返らせて、いつまでも戦いつづける。」
誰かがそれを知って、触れまわっている。
ネクロマンサーのいる重装歩兵団との戦いだ。これは苦戦するだろうと、クラップは考えた。
そんな状況でも、よくない者によるロスの暗殺計画は進められていた。司令官の親友だというロスが気に食わないのだ。
ロスは三十個の銃を持って戦い方を工夫していたが、戦闘中に近づいてきた味方の剣の切っ先が自分に向いているのに気づいて、突かれた剣をぎりぎりでかわした。
「何するんだ、おまえ。魔族の味方か」
ロスは怒った。
(おまえには、死の兆候がある)と、朝、ネクロマンサーのトルストイがいっていた。これのことだろうか。いったい、なぜ、味方がおれを斬り殺しに来るんだ。ロスにはわからない。
剣を突き刺してきた男の仲間がみんな抜刀したのを見て、ロスはその場から逃げ出した。
こいつら、おれを殺そうとしている。ロスはそのことに気づいた。
味方に殺されるのか、おれは。ロスは愕然となった。
味方に殺される。味方に殺される。
ロスは、思い切って、城外へ出て逃げた。
五人のよくない者たちは、しめたとばかりに、ロスを囲んで、城外でロスを斬り殺した。
バカな。いったいなぜこんなことに。ロスはなぜ自分が味方に殺されたのかわからなかった。
ちくしょう。ちくしょう。ロスは意識が消えそうになりながら、心の中で叫んだ。
「クラップ、気を付けろ。戦場にはどんなやつがいるのかわからねえ。」
それがロスの最後のことばとなった。
ロスが死んだことを確認すると、五人のよくない者たちは城の中へ引き上げていった。
しかし、そこに、それを待っていたかのように都合よく、ネクロマンサー・トルストイがやってきた。
「ロス! 味方に殺された不幸な兵よ。わたしは見ていた。おまえのがんばりを。弓矢が当たらないくらいで見捨てるものか。このネクロマンサー・トルストイは、戦場で倒れるおまえを予測して、それを救うために来た。おまえはこれからゾンビとして生きるのだ。さらに戦いたければ戦え。ゾンビとなったおまえはアンデッド、決して死ぬことがない。ロス、おまえこそがボロックの最強の兵となるのだ」
ネクロマンサー・トルストイは、死んだロスをゾンビとして蘇生させた。
ゾンビになったロスは、三十丁拳銃という三十個のマシンガンを身にまとった。
「うへへへへ、死んじまったぜ」
ロスが笑った。
「しかし、今はまだ戦争中だ。敵を倒さないとな」
ロスが敵陣に向かって歩き始めた。ゾンビなので、不安定な歩き方をする。
アンデッドとなったロスは、魔族の重装歩兵団の中を歩いていった。重装歩兵が何度もロスを斬り殺したが、そのたびにロスは生き返り、また歩き始めた。三十丁拳銃を撃ち、時々、重装歩兵を殺した。
ロスが探しているのは、魔族の軍の側のネクロマンサー、ドストエフスキーだ。
ロスは、トルストイとは色違いの破れ衣装を着たドストエフスキーを見つけると、にたあと笑った。
「はははははは」
ロスが敵陣の中で三十丁拳銃を撃ちっぱなし、ネクロマンサー・ドストエフスキーを殺した。
ネクロマンサー・トルストイの狙いは成功した。宿敵ドストエフスキーを倒すことに成功したのだ。
ネクロマンサーを殺して帰っていくゾンビ・ロスを、魔族たちは好ましいものを見るように眺めていた。
ロスは城門の前で、城門が開くのを待ち、待っている間に何度も殺された。やがて、魔族の重装歩兵たちが力尽きて、撤退すると、ロスはようやく城の中に入った。
「ロス、どうしたんだ」
クラップとジンジャンがやってきた。
「おれ、ゾンビの拳銃使いになったからよお」
ロスはいった。
「おれも彼女がほしいな。すげえ美人を彼女にくれ」
ロスの希望に、クラップとジンジャンは困った。
「ゾンビの彼女ならいくらでも作ってやるぞ」
トルストイがいった。
「それ頼む。歴史的な美女を彼女にくれ」
ロスのことばを聞いて、トルストイは絶世の美女リリアをゾンビとして生き返らせた。
「これで、ようやくおれも彼女持ちだ」
ロスは笑った。
ロスの今度の戦場での功績が少しずつ知れ渡っていき、ロスは秘かに人気が出てきた。
「ちっ、出遅れたか」
とゾンビマニアの女アミ―がいった。
戦いが終わって、威張ってばかりの将軍(男)が仲間になった。
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