4-2

 魔族が攻めてきた。

 魔族の数は、1000人ほど。

 味方は、王都からの援軍が到着したので、重装歩兵を中心に2000人ほどいる。

 今度は、味方の方が数でまさる戦いだ。負けるわけにはいかない。

「こちらのが人数が多いといっても、慎重に戦おう。何が起こるかわからない。」

 クラップはそういう。

「イージニー」

「はい。くり返しますが、大事なのは情報収集です。戦争の原因を解明して、戦争を終結させなければなりません。」

「そういえば、翻訳家を探すのを忘れていたな。忙しすぎて」

「仕方ないです。ことばのわかる敵兵を生け捕りにして、聞き込みができるとよいのですが。」

「いちおう、そういう指示は出しておこう」

 クラップは、敵兵にことばのわかるものがいたら、生け捕りにして情報収集をするようにみんなに要望を出した。

 戦争の原因か。魔族は『約束の置時計』のことを知っていて、ボロックに襲ってくるのだろうか。それとも、そんなことは戦争の原因とは関係ないのだろうか。

 そういえば、魔族の王が孫子の兵法で戦っているから、いちばん弱いボロックに攻めてくるのだったな。ボロックの兵力が整い、人類最弱ではなくなれば、攻めて来なくなるのだろうか。そのことを敵兵を生け捕りにして情報収集しなければならない。

 確かに、翻訳家は大事だな。そんなことをクラップは考えた。

 今度の魔族の軍は、魔導士が主体だった。魔術で遠距離攻撃で襲ってくる。遠距離攻撃には遠距離攻撃で反撃するしかない。接近戦を行う剣士たちが敵魔導士を倒すには、城に閉じこもっていては難しい。

「敵は遠距離攻撃の部隊が主力だ。こちらは重装歩兵が中心で、近接戦に向いている。ここは、城から打って出るべきだろうか」

 クラップは近くの者に相談した。城門を開けるとなると、万が一にも、城への侵入を許してはならない。せっかくの特級城建築なのだから。だが、こちらに遠距離攻撃できる部隊は少ない。

 敵魔術士相手に、どうやって戦うか。

「敵軍に長期戦の備えがあるか調べよう。」

 クラップはいった。だが、イージニーが反論する。

「城というものは、とても戦うのに都合よくできています。打って出るより、城の防衛力を信じてみてはどうでしょうか」

 クラップは迷った。こちらの方が兵数は多い。打って出てはいけないことはない。だが、万が一にも負けるわけにはいかないのだ。ここが、人類の最終防衛拠点だぞ。

「城に籠ろう」

 クラップが迷いを払ってそういった。

 それから、十日間以上かけて、籠城した。時々、敵兵のいない隙を見て、物資の移動をした。戦場の動きを手探りを探りながら、判断の確かさをすりあわせていく。

 そして、敵軍に疲れが出たのを見て、ようやく打って出た。十五日目のことだった。それまで、ずっと城に籠っていた。

 疲れ果てていた敵軍は総崩れとなり、防衛拠点ボロックは再び戦いに勝利した。

 戦いの後、ぜんぜん働かない帝国騎士(女)が仲間になった。

「この城、戦いに勝ってるみたいだから、安全かなと思って」

 と帝国騎士(女)はいった。

 サボりぐせのある女騎士のようなので、指導と称して、男の兵士たちがこの帝国騎士(女)と遊ぶようになった。

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