第一章 田舎のボロ城ボロック

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 クラップは田舎のボロ城ボロックの領主だ。まだ若い。これからこの城に魔族の軍が攻めてくるとの知らせを受け取り、自分の味方を数えた。

 幼い頃からの仲間ロスとジンジャンがいる。二人とも大切な友だ。二人ともボロックの生まれで、領主であるクラップに協力してくれる。ロスは、忠実な配下の役を演じる面白い男で、有能で頼りになる。ジンジャンは、クラップとお互いの気持ちを確かめたことこそないものの、きれいな女で、領主クラップには気になる幼なじみという関係だった。

 クラップは大剣を武器に取り、ロスは弓矢を使い、ジンジャンは魔術を使う。しかし、たった三人で城を守り通すのは無理だ。

「どうする、クラップ。命令するのはクラップなんでしょ」

 ジンジャンがいう。

「どうするっていってもなあ。おれだって戦争なんてしたことないよ」

 クラップがぼやく。

「味方を増やさないといけないけど、どうすれば味方って増えるのかなあ」

「そうだなあ。こういう時、他の領主ならどうするんだろう」

 ジンジャンとクラップが相談していると、ロスはうろたえている。

「何か策はあるか、ロス?」

「ええ、おれに聞くなよ。何にも浮かばないぞ」

「どうしようかなあ。とりあえず、ジンジャンとロスは一緒に戦ってくれるんだろ。他のやつに頼んでも手伝ってくれるかなあ」

「一緒に戦うっていっても、まだ死ぬ覚悟はできていないけどね」

 ジンジャンがいう。

「おれも」

 ロスもうなずく。

「なんだよ。死ぬ気でボロックを守るつもりなのはおれだけかよ」

 クラップの発言に、ジンジャンとロスは驚いた。

「へえ、クラップ、自分の城で死ぬ覚悟できたんだ。偉いじゃん」

「ああ、もっといい加減なやつかと思ってた」

「おまえらなあ。おれはやる時はやるやつだぞ」

「自分でいうな」

 ジンジャンがツッコむ。

 しかし、クラップは、ロスもジンジャンも、ボロックに隠された「約束の置時計」のことは知らないので、仕方ないかもしれないと思った。(おれだって、自分の城が人類の最終防衛拠点だなんて信じられるかよ。冷静に考えると、おれは人類でいちばん重要な城の領主ってことになるんだぞ。)。クラップは、論理的に考えればそうだとわかることに、なかなか確信が持てないでいた。

 論理的に考えれば、ボロックが人類の最終防衛拠点で、クラップはその防衛司令官なのだ。

「とりあえず、領民から志願兵を募ろう」

 クラップは仲間を増やす意見をひとつ思いついた。

「志願兵なんて、やってくれるやついるのかよ」

 ロスはぼやいた。

「それと、王都へ援軍の要請の手紙を出す。忘れちゃダメだよ、クラップ」

 ジンジャンが二つ目の策を提案した。

「あと、王さまがいうには、ボロックがこの国の城で最弱の城なんだそうだ」

「えええ、わたしの生まれ故郷なのに。運命は残酷だ。ひどい運命だよ」

「クラップはこの国最弱の領主ってわけか」

「いやいやいや、おれの生まれたボロックは、そう簡単に落城させない」

 三人で悩んでいると、どんどん時間がたっていってしまう。

 他にしておくことがないかといろいろとない知恵を出し合った。

「改築だ! 最弱の城なら、城を改築すればいいんだ」

 クラップは天啓を受けたように叫んだ。

「改築ってそんなお金あるの、クラップ」

「ない。けど、王さまからこの城を守れっていわれてるんだから、改築費用を出してもらえるかもしれない。最弱の城ボロックを最強の城に改築するんだ」

 ボロックにも、築城技師がいる。その長官にクラップは改築を頼んだ。

 すると、築城技師の長官はいった。

「おれたちは弱いやつらに城を作ってやるつもりはない。おまえたちが戦いに勝ったら改築してやる。おれたちは強いものたちの城しか作らない」

 クラップは崩れ落ちた。

「改築するには、戦いに勝つしかないのか」

 三人でうなだれている。

「志願兵は集まりそう?」

「少しは」

「王都からの援軍は?」

「見込みなし」

「だよねえ」

 ジンジャンは机に伏した。

「いつ、魔族の軍が攻めてくるの?」

「ジンジャン、偵察してくれ」

「いやだ、怖いじゃない。ロスに行ってもらってよ」

「それじゃ、ロス。偵察に行って」

「クラップも来いよ」

「おれは城でやることがある」

「仕方ないな」

 ロスは命令を聞いて偵察に行ってくれた。

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