防衛拠点ボロック
木島別弥(旧:へげぞぞ)
序章
地上に人間が住んでいて、地下に魔族が住んでいた。
人間の王のところに、強力な魔王が即位し、魔族を率いて地上を征服に来るようだと報告が入った。
人間の王は、会議を開き、魔族の侵略から国を守れる防衛軍を展開することに決めた。
人間の王は、王国の地図を広げて、魔族がどこから攻めてくるのかを検討した。
「魔族の軍を指揮するのは誰だ。魔王自身なのか、それとも代わりに軍司令官がいるのか」
人間の王が諸侯に聞くと、行動力のある家臣が進み出て、いった。
「我々の調査によって、魔王は<孫子の兵法>を得意とすることがわかりました。孫子の兵法は、敵の弱いところから攻めるのが特徴です。すなわち、我が国のいちばん弱い城から攻め落としてくるでしょう」
家臣の賢明な能力に安心した王は、
「敵がいちばん弱い城から順に攻めてくるというが、だったら、我々人間の軍はその作戦に対してどうやって戦ったらよいのだ」
と聞いた。すると、
「もちろん、いちばん弱い城を守ることです」
と家臣が答えた。
「いちばん弱い城を守るというが、どう守ればよいのだ。守れないからいちばん弱いのではないのか」
「おっしゃるとおりです。これ以上はまだ考えがまとまりませんのでして」
「しっかりしておくれ。お前の意見は期待しているぞ」
「はい」
(使えそうな家臣が見つかったな。これから魔族と戦争が始まるのだ。)と思った王も、戦争になると不安で、まったく安心できないのだった。
「それでは、我が国でいちばん弱い城とはどこなのだ。誰か知っているか」
すると家臣が答えた。
「我が国でいちばん弱い城は、辺境のボロックです。若き領主クラップが友人知人だけで城の防衛をしています。」
(辺境のボロック? どこかで聞いた名前だなあ。ボロックかあ。)
王は、思い出しそうで思い出せないもどかしさに苦しんだ。
(ああ、そうだ。思い出した。防衛拠点ボロックだ。あのいちばん弱い城には絶対に奪われるわけにはいかないものが隠してあるのだ。果たして、いちばん弱い城で、いちばん大事なものを守れるだろうか)
防衛拠点ボロックには「百年後には必ず人類を幸せにする」と約束した女神シアジアの、約束の証である「約束の置時計」が置いてあるのだ。
うっかりまちがえて、いちばん弱い城に配置してしまった人間の王国の戦いがこれから始まるのだ。
「誰か、防衛拠点ボロックに手紙を届けてくれ。魔族が攻めてくることを伝えたい」
王がいうと、書記官が筆記用具を取り出して、手紙を書く準備をした。人類は防衛拠点ボロックを守れるか。王は深く悩みながら防衛拠点ボロックへ手紙を書いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます