第17話万屋部の忙しい日②

「おーいシロー、琢磨ー」

テント運びをしていると後ろから聞き慣れた声がする。

僕のことをシロって呼ぶのはあの人しかいない。杏果さんだ。

振り向くと手にいっぱいの荷物を持った杏果さんがぽてぽてとこっちに走ってきていた。

「なんですかその荷物」

「これか?買い物系の依頼全部まとめてやってやったんだよ」

へへっと無邪気に笑いながら体格に似合わない量の荷物を持っている杏果さん。

「早く終わらせないとな!焼肉が待ってるし!琢磨!今日はいっぱい食べるから覚悟しとけ!そっちも早く終わらせろよな〜」

そう言い残し杏果さんはまたぽてぽてと走り去っていった。

「やはり食べ物はあいつに有効だな」

「すごいですね…なんな量待っていけるって…どこにそんな力あるんですかね」

「あーいうところが無けりゃ華奢で綺麗で女の子って感じになるんだがな」

「……部長って杏果さんのこと好きなんですか?」

「まさか…ただの親心だよ」

フッと笑われてはぐらかされた気がした。

「よし、これで最後だ。次は体育館だが…冬馬くん先行っててくれ。俺は松岡を呼んでくるから」

「わかりましたー」

冬馬は1人体育館に向かった。

体育館に着くと中から声がする。どうやら演劇部が予行練習してたみたいだ。

手前に座ってるのって美月ちゃんかな?

「美月ちゃん?」

近寄って声をかけてみる。やっぱり美月ちゃんだ。

「あ、シロくん!お疲れ様です。そっちはおわったの?」

「これからここの設備チェックで一応おしまいだよ。美月ちゃんは?」

「こっちもだいたい終わらせれたんです。それで予行練習で問題ないかの確認をしてるところなんですよ」

「そうなんだ。じゃあ問題なければ終わりって感じ?」

「そうですね。終わりだと思います。あ、終わったみたいなので見に行ってきますね!」

椅子から立ち上がり美月ちゃんは舞台の方に行ってしまった。

「お待たせー」

いいタイミングで部長の声が聞こえてきた。

「待たせたな!んじゃあさっさと見て終わらせるか」

「そんなに時間はかからないから安心してくれ。じゃあまず舞台ライトから行こうか」

「はーい」

そうしてチェックに入った。

舞台の裏側なんて今まで見たことなかったし凄い気になってた。

中はごちゃごちゃした機械とかいっぱいあってなんかすごかった。チェックも簡単でわりとすぐに終わることができた。

「よし、時間もいい頃合いだし部室に戻って飯に行くかー」

時間はすでに7時半を超えていた。

もうそんな時間か…

「あの…本当に焼肉奢りでいいんですか?」

「ん〜?あぁ気にするな気にするな!賄賂みたいなもんだから。当日はしっかり働いてもらうからな。かなり忙しくなる予定だから気合入れとけよ!」

「一体何するつもりですか…」

また部長が不穏な笑みを浮かべていた。この人がこの顔をする時大抵よからなことを考えてる時なんだよなぁ…

不安と期待を胸に冬馬たちは部室へと足を運んだ。

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